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空白のページ
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それは腹を空かせていた。
それは人を喰った。野犬を喰った。息絶えた同族を喰った。
喰って、喰って、喰って、喰って――それなのに、それの根底にある欲望は満たされなかった。
何を喰おうとも満たされないそれを置いて、摂取した食べ物は栄養だけを満ちさせる。
行き場のない栄養はそれの体を肥大化させた。
肥大化したそれは更なる食べ物を求め彷徨った。
しかしそんな行いを繰り返せば繰り返すほどに、それは飢餓を覚えていった。
満たされない、満たされない、満たされない――。
そしてそれは、己の体を喰った。
その欠片たりとも逃すことの無いよう、自ら分解した己の体から滲み出る汁を、それは舐めとった。
満たされるはずもなかった。
それに知能があるのかは分からず、その体を引きずるのは只の本能なのかもしれない。
ただ、それの中にあるのは――紛れもない空虚だった。