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どちらをとるか

 壱与は兵(つわもの;兵士のこと)のひとり、イサハヤと恋仲になってしまい、こっそりと逢瀬をするため、神殿の裏手側で隠れるようにして駆け落ちの相談もしていた。


「壱与ちゃん、俺と逃げよう。女王になったらきっと、卑弥呼様のように非難責めされちまう」


「でもイサハヤさん! 私は運命から、いえ、卑弥呼様から、逃げられない・・・・・・」


 幼なじみのイサハヤは、充分壱与の気持ちをわかっていて、それでも逃亡することを勧めていた。

 なぜなら、イサハヤは知っていたからだ。

 卑弥呼の暗殺計画を!


「だから逃げなきゃ。きみは死んでは、ならない人だから・・・・・・」


 ――だめなんだ!


 壱与はぎゅっと瞼を閉じて、イサハヤをかたくなに拒む。

 

「だめなの、どうしてもできない」


「そんな・・・・・・」


「だって今逃げたら、誰が卑弥呼様を守ってあげられるの!?」


 イサハヤはそれ以上何も言えずに躊躇し、壱与は胸の前で両手をくんで――そして祈った。


「どうか、どうか、わかってください・・・・・・」


 神殿にとぼとぼと、おぼつかぬ足取りで戻ろうとする壱与を、止める人物があった。


「卑弥呼様・・・・・・」 


「壱与。悩むことなどないではないか」


 壱与もイサハヤも、え、と驚いた顔をする。


「私はお前に期待しているが、それはお前にならこの国をゆずれると、確信しただけにすぎない。国をとるか、男をとるか。たしかにお前がどちらをとるかで、道は決まる。だが、ほんとうに望む道でなければ、今の私と同じことになろう・・・・・・」


 ――どちらを望むかで・・・・・・?


 壱与はイサハヤを見つめた。


「卑弥呼様の期待を一身に受けている壱与ちゃんだからこそ、オレは好きでいられたんだ」


 抜歯(※)した口元を隠しながら、イサハヤは上品に微笑んだ。

 壱与は唇を噛みしめ、今度は卑弥呼のほうを見る。


「国など、ひとつの『形』でしかない。お前たちが夫婦になるというなら・・・・・・私は祝う。子供を産む方が子孫を残せる。私にとっては後継者がいなくなることになるが・・・・・・それは仕方ないことだ・・・・・・」


  

抜歯・・


十五歳を過ぎると大人として認められ、その証として前歯を抜くのが古代の習慣だったらしい。

親知らず抜くのって痛いから(違; 

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