プロローグ
冬も終わりを迎えた頃。
肌を刺すような冷たい空気も、温かくなってきた。
しかし、まだまだ夜は寒い。
屋上で、強い風を身に受けながら一人の少年が立っていた。
月の光に照らされて、神秘的に輝く白い髪。それをあやすように風が遊ぶ。
少年が呟いた。
「この空も来週からは見れませんね」
少年は金色の目を細めた。
視線の先には、悠々と輝く満月を見上げて佇む青年。
少年の目に映る、誰もが溜息を吐くというこの夜景でさえ、青年の美しさに叶わない。
闇夜とはまた違う暗さを称えた黒い髪、そして背で隠されているためわからないが、切なく光っているであろう紅い瞳。
少年よりも広いはずの背中さえ、見るたび儚さを増しているようだった。
青年は少年に背を向けたまま言った。
「そうだ。しかし、空は繋がっている」
「クリス様――」
クリスと呼ばれた青年は優しく続けた。
「新しい名前はお前が考えてくれたんだろう。明日からはその名前で呼びなさい」
「はい、――――様」
少年は跪く。
恭しい動作はない。ただ、ただ、自然な動きで。身体が認める主だけに。
続くか分からない~のネタ集から。
ほそぼそと続きを書いておりましたので、ノロノロの見切り発車な更新で参ります。