げげっ!!
「違う!!断じて違う」と言わねばならない。ならないがフガフガと口が動いただけで俺は言葉を発することができなかった。
「メガネかけてるから最初気付かなかったけどさ~俺、あん時、君の後ろにいたんだよ」
俺はどう答えていいか解らず目を教授からそらさずに、無心を装った。
「だって、君の髪型って特徴あるよね~くせ毛ってやつ?目立つよ」
(うっ、言いやがったな、俺のコンプレックスをっ!!)
我慢できずブンッと顔を横に向け睨みつけた。ちゃ~ら~って音楽が流れてきそうな、お洒落な茶髪のチャラ男がニヤニヤしてた。
(こ、この手の奴は苦手だ。いや、静みたいなのも苦手だが)
無言で眉を寄せた俺を、さも可笑しそうに見て笑いを噛みしめたような口調で
「びっくりしたよ~君、超かっこよかったじゃん、名前なんての?」
と俺の机の上にある学生証をピッ取り、勝手に読む。
「横田 哲也君ね、ふ~ん、俺は中西昌しょうちゃん^^」
とニッコリ笑顔。
(勘弁してくれ、俺はただでさえ疲れてるんだ、なんだってこんな奴と仲良くせねばならん)
(無視だ、そうだ、この手のやつは無視!!そのうちすぐ忘れる、大丈夫)
俺は頭の中でうんうんと自説にうなずいた。
「ところで、哲ちゃん、あの後どうなったの?」
(無視)
「なんだよぉ~教えてよ~」
(無視)
「ちぇ~じゃ、静ちゃんに聞くか……」
「まてっ!!」俺はうっかり喋っちゃった。にんまりほほ笑む昌。
「じゃぁ、後でじっくり」と意味深な発言をして黙った。
俺は、長沼先生の年老いた顔がクチャクチャと動くのを呆然とみていた。
(願わくはこのまま先生の説明がずっと続けばいいのに)
しかし、あっけなく、先生の話は終わってしまった。
中西昌は「じゃ、ちょっと学食でも行こうぜ~」と席を立った。
(ま、そうだなとりあえず、静だけでも視界に入らない所へは行きたい)
俺達は連れだって、第一食堂と呼ばれる学校食堂へ向かった。
無難に、280円のカレーを注文。
奴はお洒落に、サンドイッチとカフェモカなんかをたのんでる。
(どこまでも気が合う気がしない)
「で、哲っちゃん」と俺の真向かいに座ってにっこり中西が喋りだした。
「あの後、どうしたの?」
(どうするって、寒かったからホテルに入ったまでは不自然じゃないよな?でもあいつにあれが無かったって話すのは微妙だよな……黙っとくか)
俺は、ごくりと唾を飲み込み、スプーンでカレーをこねながら話した。
「どうもこうもねえよ、別にあの後、寒かったから、ホテルへ行って風呂入ってあいつは起きなかったから、俺は先に帰った、だから、あいつは俺の事覚えてねぇんじゃねぇか」
やや後半を強調してみた。
「ふ~ん……」面白さが失せたみたいに中西は俺のカレーをみた。
(もう、大丈夫だ、これで解放される)
俺は満足してスプーンの中のカレーを一口口に含んだ。その時
「でも、静ちゃんって、男じゃなかったでしょ?」とぼそっと中西が言った。
ぶっ!!(な……なん……なんで知ってんだ!?)ぎょっとした顔で中西を俺は凝視した。