表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白い彼岸花  作者: ばるる
29/42



「夢をみたよ…」


静は、目を瞑ったまま俺に語る。


「ユイに叱られちゃった…」


「なんて?」


俺は、静の手をしっかり握ったまま…問う。


「…いつまで泣いてるのって…」


「…。」


「…いつまでも泣くなって、叱られた。」


「そうか…」


「…てつの言う通りだった。…ユイは……怒ってなんかなかった…」


「ああ。」


俺は、手を伸ばし、静の柔らかな髪をなぜた。


「大好きだから…笑えって…言ってくれた。」


静の目じりが濡れはじめ、

それを隠そうと、静はバッと、布団を顔までかぶった。


「…もう泣かない…」


くぐもった声が布団から漏れる。顔を隠しても、手が震えてる…


「正直…まだ、怖い…僕のせいで…てつに何かあったら…ユイみたいに……って……でも、もう泣かない…」



俺は、その言葉を聞いて…ユイに感謝した。



(…ああ…静は…夢の中でやっと許された…自分を許す事ができたんだ…!!)


俺の目から、耐えきれなくなった涙がぽとりと落ちた。


…静が顔を隠していてくれて助かった。


声を殺して…気付かれないように…


でも、そのわずかな気配を静は感じた。




布団から少し顔を出すと…大きな手で顔を隠し…哲也が泣いている。


「…てつ…泣いているの?」


「…っ、ないてねぇ…」


意地っ張りな声で否定する…哲也。




「泣かないで…」


静が俺の手を握りかえす。


「泣いてねぇって…」


静はゆっくり起きて……哲也を抱き寄せた。


哲也はその行為に驚いたが…


でもこんなに、気持ちが落ち着く事は他にない…


体の力を抜いて静のぬくもりを感じた。



お互いを思い合う…慈しみに満ちた空気…


(…やっと静が帰ってきた…)


(…やっと俺を見つけた…)



俺はうれしくて…ただ嬉しくて…

母の胸に抱かれるように、静にじっと抱かれていた。




(…そういや…俺、静に接触禁止令でてたっけ…)


頭の中で理性が動いた…


(でも…俺が抱き寄せた訳じゃないし…)と目を反らす…





しかし、だんだん気まずくなってくる。



それに…なんていうか…


惚れてる立場からすると…あんまり密着してると…


男の事情が…色々ある訳で…


たぶん…顔も…尋常じゃないくらい…赤い…



俺はなけなしの理性を振り絞って…仕方なく…




「ほら、泣いてないっぜ」


と顔をあげて離れ、ニカッと笑った。



そんな俺につられて静もにっこり笑った。久々に見た笑顔だった。




































評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ