友
今は10月、紅葉真っ盛り、間もなく冬がやってくる。
窓の外の落葉樹も、まるで雪をふらすみたいに落ち葉を撒き散らしていた。衝撃的な静と出会ったあの冬の日から、季節は流れていた。
真っ赤な紅葉の舞い散る様を見ながら、静は
「ヒカラクヨウ」と小さく言った。
「え?」
俺は馬鹿みたいに聞き返した
「なんだ?ヒカラクヨウって」
静は窓に目を向けたまま
「飛び散る花…落葉…の事だよ。春なら桜、秋なら落ち葉…僕ね、あのセンター試験の日…舞い散る雪が桜みたいで…飛花落葉だと…思ったんだ、飛び舞う花の中って、どこかへ紛れ込めるって言うでしょ……河の向こうに…ユイとふーちゃんが見えたんだ…迎えに来てくれたんだと思ったんだ…」
静が物語でも話すように穏やかな口調でしゃべるので
俺は静かに聞いていた。
「川へ入っても全然寒くなんかなくって…ユイに逢えた嬉しさで…僕、我を忘れてた。君が来なきゃ………きっと…あのままユイの所へ行ってた…」
「俺は……余計な事をしたか?」
静は頭を振った。
「いや、ホテルで気が付いた時は、少し怨んだけどね、正気に戻ったら怖くなったよ」
振り向いた静は、もう泣いてなんかいなかった。
黒目がちの大きな目は真っ直ぐ俺をみていた。
「僕まだ何にもしてない、まだ死ねない、ユイに恥じない生き方を探すよ、だから…横田哲也君…」
少し目を伏せたりするもんだから、俺は一気に赤面した。
な…な…何を…
「……僕の友達になって……欲しい」
「え”…っ」
「あ、ああ、も、もちろん、おう、俺はお前のダチだぜ!!まかせとけ」
とどんっと大げさに胸を叩いてみると
静は今までで一番の笑顔を俺にみせてくれた。
(か…かわいいじゃねぇか…)
俺はこの友達宣言を受け入れたことで、ボタンをかけ違えたとはこの時気付きもしなかった。