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魔王の死は戦争の引き金になるかもしれない

これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。


マコトは、その日も机に向かっていた。


紙の上に並ぶのは、手書きの文字だけだった。

この世界には、コンピュータも、端末も存在しない。

すべての報告書、すべての申請書、すべての命令は、人の手によって書かれねばならなかった。


彼の背後から、怒号が飛んだ。


白田しろだ部長」の声だった。


白田は、地球にいた頃から、マコトの上司だった。

異世界に来てからも、その関係は一切変わらなかった。


「何度言わせるんだ、マコト!」

「その字は何だ。子供か?」

「パーキンソン病の子供のほうが、まだ読みやすい字を書くぞ!」


机を叩く音。

紙を奪い取る音。

嘲笑。


マコトは何も言わなかった。

ただ、視線を落とし、背を丸め、沈黙を守った。


沈黙こそが、会社員に許された唯一の防御だった。


やがて、定時が来た。

そして、いつものように――飲み会の時間が始まった。


マコト、白田、そして他の社員たちは、建物を出て、最寄りの酒場へ向かった。

酒場は、市街地の中央部にあり、そこへ行くには長い階段を上らなければならなかった。


白田は、階段でも止まらなかった。


「お前は本当に使えない」

「異世界に来ても、無能は無能だな」


その時だった。


白田は、意図的にマコトを突き飛ばした。


ほんの軽い動作だった。

だが、それは積み重なった年月の重みを孕んでいた。


マコトの中で、何かが切れた。


彼は振り返り、白田を突き返した。


白田の体は、階段を転がり落ちた。

鈍い音が響き、頭部が石に打ち付けられた。


沈黙。


次の瞬間、白田は動かなかった。


即死だった。


叫び声が上がった。

人々は後ずさり、誰かがマコトの名前を呼んだ。


その時、空が歪んだ。


光が走り、流星のような形をした存在が、いくつも現れた。

それらは言葉を発した。


自らを――

**「ゲームマスター」**と名乗った。


彼らは告げた。


日本人たちがこの世界で見てきたすべては、

共有されたシナプスの中の体験であると。


ある一夜、

彼らは日本人全員の脳にナノボットを送り込んだ。


この異世界での数年は、

現実世界では、わずか数秒に過ぎない。


そして、最も重要な事実が明かされた。


この共有された夢の中で死んだ者は、

現実世界において脳動脈瘤を起こし、確実に死ぬ。


その言葉を聞いた瞬間、

マコトの顔から血の気が引いた。


彼は、怒っていた。

老いた者たちが作り上げた過労死の文化に、憎しみを抱いていた。


だが――

殺すつもりはなかった。


夢だと思っていた。

白田は、目を覚まして、また部長に戻るのだと。


だが、それは誤りだった。


白田は、現実でも死んだ。


若い日本人たちは、震える声で問いかけた。


「なぜ、こんなことをした?」

「なぜ、俺たちをここへ?」


ゲームマスターたちは、淡々と答えた。


「望まれたからだ。」


若者の日本人は自由を望んだ。

解放を望んだ。

過労から、序列から、年功から。


それは、若者だけではない。

すべてのサラリーマンの内側にあった。


だが、問いは残った。


若いサラリーマンの自由という権利は、

老いた者たち――

社長、部長、そして高齢者たちの命を犠牲にする価値があるのか。


その瞬間から、

この世界は「ゲーム」ではなくなった。


これは、夢ではない。

これは、選択であり、殺しであり、戦争だった。


こうして、

若きサラリーマンたちと、

老いた日本の支配層との間に、

死を伴う戦争が勃発した。


歴史は、この一人の死を、

すべての始まりとして記録することになる。

このエピソードを楽しんでいただければ幸いです。次のエピソードもすぐにアップロードします。

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