告白
私は、隣の席である凛のことを見た。
凛は私の視線に気づき、「えっ?」と驚いた声をあげた。
「ど、どうしたの?」
小声で言う凛。
国語の授業中で、みんなは古文の問題を解いている。
中学2年生も終盤にさしかかり、全員受験生への意識が高まっている。
かりかりと言うシャーペンの音だけが響く教室。
ちなみに私はもう終ったので、ノートの端にらくがきをしていた。
「なんだよ‥‥‥あ、ちょっと待って。あと一問。」
そういって凛はすばやくレ点を打った。
私はその様子をじーっとみつめる。
そして、小声で言った。
「凛、お願いがあるんだけど‥‥‥」
放課後。
私は教室で緊張で震える足を押さえていた。
これから、拓海が来る。
凛に、『理由は聞かずに拓海を放課後教室に連れてきて。』と頼んでおいた。
凛は基本優しい。全て分かったようにうなずいて微笑んだ。
理由は分かっているはずだ。
多分、迷惑だろうけど。
多分、困るだろうけど。
絶対、ダメだろうけど。
私は拓海に告白するのだ。
告白して、全てをぶつける。
ここまで決心するのに、私はどれだけ考えただろう。
どれだけ悩んだだろう。
でも、もう後悔はしたくない。
ハッキリとさせたい。
伝えたい。
拓海と恋人になりたい。
恋人になって何をするか、とか、全然分からないけど。
でもこのままだとダメな気がする。
どうせ千秋のことが好きなんだろうけど。
でもダメで、もともと。
今なんとなく、玉木の気持ちが少し分かった気がした。
あの時もう少し優しい言葉をかけてあげられればよかったな。
少し、後悔する。
でももう戻れない。
と、たったった‥‥という軽やかな足音が聞こえた。
バスケのユニフォームを着て、拓海は驚いた様子で立っている。
「梨花?」
私は震える声で言った。
「ねぇ、拓海、知ってると思うけど、私拓海のこと好きだよ。」
単刀直入に言った。
拓海が消えちゃいそうな気がしたから。
消えないうちに、言った。
すると拓海は冷たい声で‥‥ぞくっとするほど冷たい声で言った。
「知ってる。」
私は怖くなって、胸が痛くなって、鳥肌が立った。
「ごめん‥‥」
私はなんとなく謝った。
うつむく私。
終った。
私はたくさんの男子にモテることより、一人の大好きな人に好きになってもらうことのほうがずっと難しいと思った。
拓海は言う。
「なんで謝るんだよ。」
そう言って黙ってしまった。
私は次に何て言うかなんて決めていなかったから、私は拓海から目をそらして、沈黙していた。
すると拓海が口を開く。
「ってかさ、だからなに?」
不機嫌な訳でもなく、ただ不思議で仕方が無いという感じで拓海は言った。
「え?」
「俺に、そんなこと言って、で、どうしたいの?」
「‥‥‥だよね。ごめん。なんでもないよ。ただ言いたかっただけ。」
私は付き合いたいという願いをぐちゃぐちゃに潰して言った。
すると拓海は「そう」と言って黙る。
スーパー気まずい。
どれくらい沈黙していたのだろう。
急に拓海が振り切ったように口を開いた。
「おい梨花!テメーマジふざけんじゃねぇよ。」