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最後の日

玉木はそれ以来、私に普通にいつも通り接してくれた。

そんな玉木の優しさに救われながら、今日も幸せな給食時間。

他愛ない会話をしていたのもつかの間。

「梨花、お前本当馬鹿だよなぁ。」

拓海がふいに言った。

「え?私なんかした?」

「玉木フるとかさぁ。お前本当馬鹿だよ」

「!!!!馬鹿!拓海の方が馬鹿!」

私は小声で拓海を怒鳴った。空気読め!

拓海の横で、玉木が困ったように苦笑いをしている。

でも上手く笑えていない。

少し傷ついたように、でも拓海だから仕方が無い、というように、玉木は笑っている。

「ふぇ?」

拓海は私の言った言葉の意味が分からなかったようで、訳の分からないカワイイ声を出す。

「‥‥‥拓海って本当鈍感。」

そんな私の言葉に納得したのか、玉木もうんうんとうなずく。

「拓海は鈍感だよな。」

「へ?何が?!」

「いや、良いんだけどさぁ‥‥‥‥」

玉木はまた黙ってしまった。

もう!拓海のせいで変な空気になっちゃったじゃないの。

本当、KY。あ、死語か。

でもそんなKYな拓海も好きだったり。

「あ、あのさ、もう忘れよっか。最後の日だし。別の話しようぜ。」

玉木が明るい声を出してくれたおかげで空気は救われた。

そう。今日は最後の日だ。

1年生最後の日。

このクラスも、この班も、最後だ。

拓海と玉木とは結構仲が良かったから、違うクラスになる確率が高い。

「最後だな‥‥‥」

拓海が名残惜しそうに教室を見渡した。

そんな姿を格好いいと思ってしまう。

でもこんなことも最後なんだな。

なんだか実感がない。

「最後、か‥‥‥‥」

私たちはしんみりとお互いの顔を見合わせた。

「2人とも好きだよ。」

私は2人に言った。

違う感情が含まれるとしても、私は玉木も拓海も大好きだった。

「俺も。梨花も拓海も大好きだ」

玉木も言う。

「玉木お前俺のことも好きだったのかよーホモじゃん。」

拓海がそんなくだらないことを言い、またコイツKYだわなんて思いながら、でもやっぱ好きなんだなと改めて思ってると、拓海も言った。

「俺も玉木のこと、好きだから安心しろ。あ、梨花も。」

「ちょっと。私付けたし?!」

「ごめんごめん。梨花、好きだよ。」

もちろん特別な感情なんて入っているはずがない。

そんなこと分かっているけど。

でも嬉しかった。

「ありがと。」

私はそう言って拓海を見た。

拓海は顔を赤らめることもなく、ただ「おぅ」と言いながら私を見た。

玉木は誰にも聞こえないように、「頑張れよ。」とつぶやく。


そしてグリーンピースを3個箸でつまんだ。

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