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幸せな時間

給食時間。

食事をとるという動作が好きじゃない私は、箸をかちゃかちゃ遊びながらスープをかき混ぜていた。

すると向かいに座る玉木が言う。

「おい梨花。ちゃんと食えよ。部活持たないぞ。」

玉木はサッカー部、拓海はバスケ部。それぞれハードな部活に入っている。

「えぇ〜だってお腹減ってないし‥‥‥」

それに茶道部に入っている私はどうせ放課後お菓子を食べることができる。

「そのスープ、美味いよ。食べなよ。」

拓海が言った。

でも気が進まない。

「だって‥‥‥グリーンピースが‥‥‥‥‥」

私は器用にグリーンピースを3個箸でつまんだ。

「おぉ。すげぇ。」

男子2人が感嘆の声を漏らす。

すこし優越感を感じて、次は4個つまんでみた。

「梨花。やるな‥‥‥‥」

2人ともスイッチが入ったらしく、それからしばらくはグリーンピースで遊んでいた。

「えっ。お前スゴくねっ?俺全然できないんだけど。」

「さすが茶道部。」

「いや、関係ないし。」

キーンコーン‥‥‥♪チャイムの音だ。

「ごちそうさまっ!」

「え、もう給食終わり?!」

それを良いことに、私はトレーを持ってほとんど残した給食を片付け始めた。

「おい。梨花!せめてりんごだけでも食えよ!」

拓海が叫ぶ。

それがことの始まりだった。

「えぇ〜オナカいっぱい・・・・それにほら!一口食べたよ!」

私はニッと笑ってほんの少し齧った部分を見せる。

「テメー!りんごを粗末にするなぁ!」

そういって拓海は後ろから私の首をぎゅーっと締め付けた。

「ぐぎゃぁあぁ」

私は変な声をあげ、目を大きく見開いて拓海をみる。

ドキドキと心臓が音を立てている。

すると拓海は動揺してるわけでもなく、謝る気配もなく、「思い知ったか」と笑って去って行った。

私はあんなこと男子にされるのは初めてだったからなのか、しばらく高鳴る胸の鼓動。

動揺して私は思わずりんごを床に落としてしまった。

ドキドキする。手が震える。

そしてその日は放課後まで拓海のことを見れなかった。


惚れちゃったか。

私は布団の中で思う。

真っ暗の中での考え事は意外と楽しい。

毎晩いろんなことを考える。

今日はもちろん拓海のことだた。

思えば潤のことを忘れようと決めてから1ヶ月間、

私はずっと拓海のことを考えていたような、いなかったような。

‥‥‥‥‥拓海好きだー。

って何考えてるのよ、私。

ありえない。ありえない。

好きじゃないから!

でも好きだなぁ。

あの白い肌。細いけどビックリすると大きい目。

透き通るような声。

白くて細くて程よい筋肉がついた足。

細いけど男っぽい指。

そう思った瞬間、私は今日拓海に締められた自分の首をさすった。

いきなりだったから変な声を出しちゃったけど、痛くはなかった。

首を締めるというよりは首を触るような。

優しさを少し、感じる。

少し顔が赤くなる。

どうしたんだろ、私。

何考えてるんだろ、私。

だから好きじゃないんだって!

でも拓海は今日のこと、なんとも思っていないんだろうな。

男子にキックするくらいにしか思っていないんだろうな。

もう忘れているんだろうな。

でも女子の心はそうはいかない。

忘れられない。男子に故意に首を締められて、忘れるはずがない。

拓海って妹いるんだっけ?

シスコンって噂だけど。

多分、妹にも家で同じようなことをしていて、たまたま学校でやってしまっただけなんだろうな。

私のこと好き‥‥‥とか‥‥‥ありえない‥‥‥よなぁ‥‥‥。

今までの言動を見ていても、拓海の私に対する態度は別の女子と全く同じだ。

そうだな。なんとも思っていないんだな。

って、だから拓海のことは好きじゃない‥‥‥


でも1ヶ月前だったら絶対に考えないようなお願い事をして眠ってしまう自分がいる。


拓海に好きになってもらえますように‥‥‥‥


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