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新しい恋

雨に濡れた校庭を眺めながら、私は想った。


小学校時代の初恋ははかない。

簡単に散ってしまう。

卒業という運命に潰されて、

簡単に折れる。でもまた元に戻る力など、まだない。

まだ子供が故に、なにもできない。

自分の無力さを感じる。

私には、小学校5年生の時から、ずっと好きだった男の子がいた。

その男の子には、6年生の修学旅行の時に淡いラブレターを渡した。

今思えばすごいことをしたと感心する。

その時は勢いだった。それほどまでに好きだった。大好きだった。

返事は、「僕も好きです」と書かれたノートの切れ端。

嬉しかった。

胸がきゅぅんと締め付けられて、私はその時涙がでてきた。

ずっと一緒だよ。

約束した。

彼の名は、潤。

少し背が高くて、いつも身長が一番前だった私はいつも少し見上げて話していた。

成績は、いつも私と競い合っていた。

運動神経抜群で、走る姿がすごく芸術的。

すごく話しやすくて、楽しい人。

それが、潤だ。


しかしある日、当たり前のように潤と同じ中学校に行く予定だった私に、おかあさんは軽々と言った。

「梨花。第一中学校の制服買いに行こう。」

第一中学校?潤と私が行くのは第二中学校のはずだ。

「おかあさん、間違ってるよ‥‥‥」

おかあさんはきょとんとした顔で私を見つめた。

そして、私は最悪なことを聞いてしまった。

私が住んでいる家の地域は、ぎりぎり第一中学校の学区だと言うこと。

私は学年でただ一人第二小学校から第一中学校へ行く人間だということ。

当然潤とも違う学校だということ。

私は頭が真っ白になった。


卒業式。

携帯を持っていない潤とは、もう永遠に会えなくなるかもしれない。

連絡手段は手紙と電話しかない。

でも私たちはお互いに電話番号も住所も知らなかった。

聞けなかった。

「梨花、俺、お前のことずっと好きだから。」

いつの間にか、潤の一人称は「俺」になっていた。

「私も‥‥‥好きだよ。」

潤は私の髪を優しくなで、笑った。

「俺のこと忘れたらぶっ殺すぞ。」

「へへっ。大丈夫。絶対‥‥絶対ずっと好きだから」

「約束、な。」

私たちはそっと小指を絡ませて、卒業した。


大好きだった潤とは、それ以降1年以上会っていない。


私は視線を黒板に戻す。

すると思わずため息が出る。

この一年間、私はこの学校に慣れるのに必死だった。

第一中学校は、第一小学校の卒業生がほどんどで、第二小学校の卒業生である私は浮いていた。

友達なんか、いない。

みんなグループを作って話していて、全くなじめなかった。

でも今はたくさん友達はできた。

何一つ生活に不自由はない。

ただ、潤がいない。

私は1年経った今でもまだ潤のことが忘れられなかった。

やっぱり思い出してしまう。

好きだと思う。

まだ、潤のことが好きだとおもう。

でも潤はもう私のことなどなんとも思っていないようだ。

昨日の友達からのメール。

『梨花〜お久!

 潤っていたじゃん?

 あの梨花と付き合ってた。

 覚えてる?

 その潤が、テニスの大会で会った他校の子と付き合うことになったらしいよ〜

 めちゃくちゃ可愛い子だって★』

私はその日初めて潤を想って泣いた。

今まで耐えてきた全ての苦しみが襲いかかってきた。

ずっと泣いていた。

昨日の友達からのメールは、もう覚えるほど読んだ。

付き合ってた。そうか。私と潤はもう別れていたのか。

そんなことも知らずに私は、また会えるかもしれないなんて思いながら、潤が行きそうな高校を目指して頑張っちゃったりして。

我ながら、馬鹿だよな。と思う。

ヤバい。また涙がでてきた。

私は授業中なのにも関わらず、声を殺して静かに涙を流していた。

休み時間、同じ班の男子に話しかけられた。

「梨花、大丈夫?」

「‥‥‥平気。」

「そ。」

冷たいやつだな。

私はそう思った。

潤なら‥‥‥潤ならもっと優しい言葉をかけてくれたのかな。

でももう潤はいない。

私の中の世界には、もういない。

そう思うと、潤なんて人は最初からいなかったような気がしてきて。

そして1年という気が遠くなるような長い時間に圧倒された。

そうか。あれからもうすぐ1年だな。

2009年1月はもう終わろうとしていた。


給食は、4人で机を合わせて食べる。

しかし私の班には男子2人と女子1人しかいなかった。

私の他にもう一人いるはずの女子は、現在不登校だ。

さっき話しかけてきた男子が、カレーとご飯を器用にスプーンにのせながら言ってきた。

拓海という名前だ。

「梨花。さっき泣いてたの、どうしたの?」

すると隣に座る男子が慌てて言う。

「あんま聞かない方が良いんじゃないの?」

そのとおりだ。

「え‥‥‥あ、ごめん。」

 そうとっさにあやまる拓海。

私は素直に謝られて逆にちょっと恥ずかしくなった。

「いや、別にダイジョウブ。ちょっと昨日見た本が感動しちゃって‥‥」

我ながら嘘は苦手だ。

「えっ?なんの本?」

しかし、拓海は私の『本』という言葉に過剰に反応する。

「教えてよぉ〜」

私は今テキトーに読んでる本のタイトルを言った。

「!?マジ?やべぇ。俺もそれ読んでる。ほら。」

そういって机から私と全く同じ本をとりだす拓海。


今思えば、この瞬間に私は拓海に惚れたのだと思う。

でもそのときは全く予期していなかった。


「わぁーマジで?その本超泣くよね!」

私はすこし‥‥ほんの少し嬉しくなって拓海を見た。

すると拓海は整った顔を少し崩して笑った。

「別に泣かないけどな。でも面白い本だと思うよ。お前も読む?」

そういって拓海は隣の席の男子に薦めた。

「俺は遠慮しとく。分厚い本みると吐き気がする」

玉木はこの班で一番勉強が苦手だ。

といっても、私も拓海もいつも学年トップ10には入ってるこのクラスの平均点をあげるストライカーだから、玉木もそんなに悪い点というわけではないだろう。

「俺のこの前の国語のテスト、何点だと思う?」

玉木はニヤニヤしながら言ってきた。

「90点?」「95点?」

私と拓海は当てずっぽに言ってみる。

「残念!2点でした〜」

前言撤回。

玉木はアル意味学年で10位に入っている1ケタ大王だった。

今まで全く他の男子のことには興味が無かった。

でも、同じ班の男子だけでもこんなにいろんな発見があるなんて。

潤を想っていた1年間が無駄におもえてならない。

もっと楽しく過ごせたかも。

もっと笑って過ごせたかも。

そう思うと後悔しか残らない。

よし、潤のことは忘れよう。

そう決心したその日が、


私の拓海への恋が始まった瞬間だった。


ここからものがたりはスタートします。

私(梨花)はここから、拓海にベタ惚れするわけで。

あ、これ以上言ったらネタバレですね。

えぇと‥‥‥はい。

次も絶対読んで下さいね!

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