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おお!あと920万ガルド!

ハル様に持ち込んでいただいた宝飾品の展開は早かった。


モーガン商会は王室御用達の、老舗、しかも堅物な真面目な商会だ。

調査は思ったより早く進み、イミテーションを作って売っていた組織が摘発された。その工房で働かされていた職人は、南の国からの内乱時の亡命者で、ほぼ監禁状態だった。

その職人の腕前があまりにも素晴らしかったので、こんなお粗末な詐欺行為を考えたらしいが、、、もったいない。使いどころを間違っている。


「・・・それでな、そのインチキ商会が、モルガン商会、って名乗っていて、モーガン商会の会長が怒ったらしい。ものすごく。」

「ああ、、、ありがちですが、、そりゃあ怒りますね。」

私は下町の店を突然訪れたハル様に、とっておきの緑茶を入れながら、頷く。

「それでな、、非常に不本意ながら、父に褒められた。」

「・・・??」

「下手に突っつく前に大人に相談するとは、お前も物事がわかるようになったな、と。」

「ああ、下手に動くと、水が濁って見えなくなりますからね。」


緑茶が良い色で出た。おいしい。


「それで、その監禁されて働かされていた職人達はどうなりますか?」

「今、取り調べ中だ。扱いはひどいものだったらしい。罪には問われないと思うぞ?」

「ですね、、、取り調べが終わったら、うちで雇いたいんですが、いかがでしょう?」

「・・・ああ、、、それは無理そうだな。モーガン商会の会長が全員好待遇で雇いたいと手を挙げたからな。そうなるだろう。」

「・・・ちっ」

「・・・・・」



せっかくの休日の午後、向かい合わせで生徒会長とお茶を飲むなんて、、平日と変わらないなあ、、


「早く教えようと思ったんだがな。」

「あ、、、すみません。クッキーもありますから、どうぞ。」

クッキーを入れた缶から、お皿にクッキーを盛り付ける。

平民ぽい服装を心掛けたのであろうハル様は、白のシャツにグレーのスラックス。それでも高貴さがにじみ出ちゃうのがさすがだ。だいたい、庶民はそんなお仕立ての良い服を着ていないと思うぞ。気を使って、乗合馬車で来たらしい。まあ、いつもの馬車に乗ってこんな下町に来たら人垣が出来ちゃうから、そこは誉めてあげよう。

「ありがとう。」

「・・・・・」

出したクッキーを一枚つまんで頂く。

「あ、ハル様もどうぞ、召し上がれ。」

「・・・お前は、、」

文句を言いながらも、クッキーをつまんだハル様は、

「なんだか、懐かしい味がするな。これはお前が焼いたのか?」

「いいえ、教会のバザーで買ったんです。教会のバザーに出すから、と、どこぞの高貴そうなご婦人がうちのアクセサリーをまとめ買いしてくださって、、、うちからも、何点か寄付させていただいたんですが、、、そのバザーを見学に行って、クッキーを沢山買ってきたんです。美味しいですよね!」

もしゃもしゃとクッキーを食べる。素朴な、ほっとする味だ。ちょっと濃い目に入れた緑茶にもあうなあ。


「・・・それでな、父が、お前のことを気に入ったらしく、」

「どこから、それで、なんですか??」

「ああ、お前のことは壺を割ったあたりから説明してある。」

「あ、、、そうですよね、、すみません。」

「今回の功績で、壺代を50万ガルドくらい引いてやれ、というので、、」

「ありがとうございます!!!じゃあ、あと920万ガルドですねえ!」

「それから、、、あと100万ガルドひくので」

「え?」

「夏休み中は俺の侍女として地方の視察に同行するように。」

「へ?」

「なんでもする、って言ったよな?」

「あ、、、、はい。」

「詳しく決まったらまた連絡する。」

「あ、、、はい。」


夏休みの予定が急に決まってしまった。ルーは後期の仕入れをしに領地に帰ると言っていたから、私はどうしようかなあ、避暑にいきたいなあ、涼しいところに。とか思ってたんだけどなあ、、避暑と秘書って、、、


「ああ、山岳地帯のほうだから、ここよりは涼しいと思うぞ。」

あ、心の声が、出てましたか、、、


「それから、、、」

「まだ何か?」

「ああ、アンとウィルの婚約の正式書類が上がってきたらしい。」

「あら!それは良かったですね。お二人共あの事件以来お休みされていたので、心配していたのですが、収まるところに収まって、ようございました!」

「・・・あんまり、驚かないんだな。」

「・・・・・?」

「あの二人とは小さい頃からの付き合いがあるが、、、まさか婚約するとは、、俺は正直驚いた。」

「ふむふむ。お祝いは何がいいでしょうねえ、、あ、ルーにも報告して、、、彼女に選んでもらおうかな。うんうん。」

「聞いてるのか?」

「え?はい。なるべくして、なったと思いますが?」

「そうか?仲のいい幼馴染、って感じだったと思っていたんだがな。」

「ガーデンパーティーで、アン様がつけていらしたネックレスは、真珠にガーネット。ウィル様は水色のサファイヤのピアスをされていました。これで十分でしょう?

ちなみにサファイヤは誠実・慈愛、パールも誠実と困難を乗り越える、なんて意味がありますね。乗り越えたんでしょうねえ、お二人で。はあああ、、、さすがルーが手掛けただけあって、素敵な仕上がりでした。」

「・・・・・」

「あ、ハル様もサファイヤのカフスでしたね。愛されてますねえ、お母様に。」

「・・・・・」


午後になるとちょうどいい具合に木陰が出来る。色が濃くなってきた葉から木漏れ日が落ちる。ルーが喜ぶなあ。早く教えてあげよう。


「それから、」


「え?まだあるんですか?」

「・・・うん、、、」

「なんでしょう?」

「先日、サンプルだから、鍋敷きにでも使ってくれ、と、お前に渡されたタイルだが」

「ああ、はいはい。」

「おばあさまが気に入ってしまってな。あと100枚くらい注文したいらしい。」

「ええええ!」

「中庭の入り口に敷くらしい。」

「あの、その、、、あの使い方でご立腹では?」

「いや、割れた壺のかけらをタイルに施して再利用するなんて、よく考えたなと感心されていた。派手過ぎる模様も、タイルの生地の色を合わせてあるから、嫌みなく上品だし、どれも一点もの、というのが気に入ったらしいぞ。」

「・・・ありがとう、、、ございます。」

「足りなかったら、屋敷にもう一つ対の分が残っているから、割って使ってもいいといっていたが、、どうする?」

「ひええええ~勘弁してください!」

「そうか?」

「そうです!」


高貴な方の考えてることはわからない。1000万ガルドだよ?まあ、割っちゃったけど、事故だし。わざわざ割る人はいないよ!!確かに目がちかちかするような派手過ぎる模様ではあるけど、、、とりあえず100枚かあ、、


「できそうか?」

「・・・・・はい。すぐに手配します。仕上がりまでは少し時間を頂くことになります。」

「で、一枚いくらかも確認しておいてくれ。」

「はい、、、ありがとうございます。職人たちも喜びます!」








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