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出世払いになるようです。その6

崩れ落ちる離れの残骸から守るために、奥様に覆いかぶさったところまでで、私の記憶は途切れている。




「・・・・な、お前の気が違ったかと思ったぞ。」

「・・・・」


誰かの話声が聞こえる。寝かされているのは、スプリングの利いたベット?ベルベットの手触りだ。


「あんなところで剣を抜いて、俺の剣に誓えるか、、なんて言いだすし、、よっぽど慌てたのだな?」

「ああ、、、手紙と一緒に送られてきたものは中毒性のある禁止薬物だったしな。

そもそも、、お主の監督不十分だ。大変な不祥事だぞ。」

「借りが出来たなあ、、今回は。みんなまとめて聖職停止にしたから、お前の法で裁いて構わんぞ。大人数だから大変じゃのう。」

「なにを他人事みたいに。西教区の司教はどうするんだ?出がけに、地下牢に入りきらないほど関係者を突っ込んできたんだろう?」

「あれは責任もってうちでやる。きれいになって良かったじゃないか。」


ん?なんの会話だ?


「しかし、、、さんざん食い物にされても気が付かない領主なぞ、いらぬのではないか?」

「・・・ユーハン領はうちの国にとって重要だ。あいつは、、、確かに領主向きではないのかもしれないな。農業バカ、なんだ。尻を叩いてくれるいいパートナーがいれば、、、、」

「ほう、、、それで、この娘さんが?」

「いや!違う!ただ、煮え切らないあの男に活を入れてほしかっただけだ。領地が3年も不作だと報告が上がってきていたし、、まさか、、、こんな大物を釣り上げてくるとは思わなくて、、、冷や汗かいたわ。」

「そうだな、、、よく治められている土地だと思っていたら、、、薬物に、人身売買に、横領に、脱税、帳簿の改ざん、挙句に玉璽の偽造か?まさか、教会が寄付を取るのに、領主の母親を薬物中毒にして愛欲におぼれているとは、、、、呆れる。」

「いや、それ、みんな、そちらの不祥事だから!領の財務関係者まで教会が入り込んでたから!」

「・・・・・しかし、お前、、、イリアに将軍ごと兵を出しているんだろう?こっちにお前が自ら兵を連れてきて、、、王都の守りは大丈夫なのか?」

「大司教、、、わが妃が今頃、玉座に座って退屈しておりますよ。」

「あはははは!!そうか!お前の妃は、、、怖いよな。」


ん???大司教?わが妃??なんで、、イリア?

聞かなかったことにしよう。うん。私は眠っている。



時折、目が覚めているような、、、、沈むほど、体が重い。

寝返りを打とうとしても、体が自由にならない。

ただ、どうも、、馬車に乗せられているらしいことはわかった。



「・・・イリアのほうは、うまくいったようだな。かの国はうちの国の緩衝としてなくてはならないからな、、、」

「ああ、、、思い切ったことをする。そんなことをする子だとは思わなかったが、、、」

「真面目過ぎて、面白みに欠ける息子か、、、あはははは!!化けたなあ。」

「即位するまでに、憂いを無くすのだと、、、びっくりだ。まあ、他にもあったんだがな。」

「お前さんが、めんどくさがっているからだろう。あんなに弱った国の一つや二つ、属国にするのも容易かっただろうに。」

「まあね。そうすることで、せっかくいい関係を築いた栄国に目を付けられるのも面倒だから、、、そのままにして、自滅させてから、、、でもいいかなと。かといって、栄国にとられるのも、、面倒だし、、、そのために、あそこの姫を生かしておいて、いざとなったら王位につければいいかな、と。」



ん?



「あんな使い方をするとはなあ、、、面白いことを考えたもんだ。」

「・・・これで、、我が国に従属を申し出る決断ができる王なら、使えるが、、、」

「どうかのう?手に入れた権力は手放しがたい。」

「・・・・・」

「しかし、、、いい跡継ぎが育ったじゃないか。」

「ああ、、、お前さんのところは大丈夫なのか??金と欲にまみれた聖職者しか育ってないんじゃないのか?あ?」

「ああ、そこは大丈夫。秘蔵子はいる。ただ、整わないうちに出すと、つぶされるのでな。しまってあった。今回、まとめて、綺麗になったからそろそろかな。」


ふふっと笑い声がする。二人共、、、楽しそう。話の内容は物騒だが、、、


「教会は怖いな、、あの司祭、俺を前にしても、国の指示は受けないと言い張ったからな。」

「それを想定して、わしを連れてきたんだろう?」

「ああ、突っ込むと、後々お前さんに言われ続けるからな。」



面白そうな話が続くが、、、どうも、、、長くは起きていられないみたいだ、、、

馬車がちょうどいい揺れ加減だ、、、、



・・・・ニャーン・・・・ニャー


真っ暗な空間で、金色の猫が鳴いている、、、遠くに見える。


・・・ニャーン・・・・ニャー


どうしたの?どこにいくの?一緒には行けないの。





*****

「お嬢様?、、、お嬢様?」


ハンナの声がする。家に帰ってきたんだろうか?

「・・・ハンナ?、、、もう夜なのね?」

「ああ、、、いえ、、、お嬢様は少し目を傷めてしまって、包帯がまいてございます。光もよくないというので、カーテンも閉まっておりますし、、、大丈夫ですか?」

「そう、、、」

「あと2.3日すれば良くなるだろうとお医者様がおっしゃっておりました。お身体のほうは、、、痛いところはございませんか?ずいぶん、眠っていらっしゃいました。」


もう何年も寝ていた気がする。体中痛いのは、、寝すぎたのかな?


「ハンナがおりますからね!なんの心配もいりませんよ。何か、召し上がりますか?」


少し起こしてもらって、お水を飲ませてもらう。


「・・・夢を見たのよ、、、猫が、、、来てね、、、」

「・・・・・」

「ちょうど私の右手のあたりに、、、撫でてみたら、、温かかったわ。」

「・・・・・」


はっと、、、自分の耳を触ってみる。

片方、、、、失くしてしまったわね、、、、、


「・・・お嬢様?」


眼が見えなくても、、、、涙は出るんだな、、、














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