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スローライフ,  作者: 佐々木照
準備中.
1/5

第1話 はじまり

『スローライフ,』へお越しくださり、ありがとうございます。


 この作品は一部過激な表現をしています。

また、作者の主観に基づき創作されています事をご理解頂きますよう、よろしくお願いいたします。


 それでは、よい時間をごゆるりと。

                              作者:佐々木照


 僕の名前は桜葉怜(さくらばれい)22歳。

趣味はゲームと料理、運動は得意な方だ。周りからは仕事のできる奴と思われている(自称)。

 そんな僕の唯一の弱点といえば人間関係だ。小学校では同学年で一番足の速い男子をリレーで追い抜き、モテまくってたから女子からはイジメられた。

 中学では変わろうと心に決め、小学5年から習っていたという理由で運動部に入ったはいいが、すぐに先輩を追い抜き試合ではレギュラー入りとして抜擢された。そのおかげで先輩からも同期からも必要以上に仕事や雑務を押し付けられ...まぁ結果イジメられた。

 高校では目立たないようにしようと心に決め、真面目になった。おかげで友達ができた。同じ中学で同じクラスにもなったことのある子だった。なんという偶然。イジメられるのはイジメられる側にも問題があると聞く、彼女もその一人だった。案の定すんなり打ち解け、休日は遊んだりするほど仲良くなった。しかし僕は良いように使われた。彼女は特大な嘘つきで、しかも前科ありだった。要は裏切られたんだ。「怜、友達は選んだ方がいい。」と、あの時クラスの子のアドバイスを聞いていれば、楽しい青春時代を送れたかもしれないと後悔だってした。

 大学、、仲のいい子はみーんな辞めた。取り残された。僕に夢なんてない。やりたいこと、特になし。就職するならまぁ大卒の方が給料いいかと考え大学を卒業し、その後テキトーなところに就職した。



 僕は疲れていた。社会人1年目、毎日仕事で疲れて帰ってきては寝ての繰り返し。生きるためにはお金がいる。ただそれだけを考え、ひたすら同じルーティーンで今日まで生きてきた。


「づかれだ~~」


(橋もっちは仕事できんのにめんどくせーから彼女いねんだろーなー。顔は良いのに勿体ね)


同期のダル絡みで心身共に疲れ切った僕は、帰宅してすぐ上着を脱ぎ捨て靴下を投げ捨て、お気に入りのふわふわクッション名付けて[ワクワクさん]に飛び乗った。


「ダ~~イブッ! この丁度いい柔らかさといい手頃なお値段といい、抱き心地の良い大きさで足で挟むとフィットするこの感じ! たまらなく良い... 最高~~もう動けん1ミリも。」


(ほわぁ あわよくば神よ、この哀れなおなごをこのまま異界へと導いてくれたまえ~)


手のひらを擦り合わせ土下座ポーズで腹にワクワクさんを挟んだまま祈り、と思いきや器用にその体制のまま首だけを傾け、目を閉じた。やがてスースーと寝息をたてはじめた。カーテンの隙間から赤い光が漏れていることにも気づかずに...




ーーそのころ神界では

 3柱の神が怜の様子を視ていた。

1柱のうち年寄りが長い髭を手で解きながら、眉間にシワを寄せる。


【説明しよう。この残念な子が我らが送り届ける魂である。】


宙に浮き胡坐で伸びをした青年は悪戯っぽく笑った。


【ふぅん?】


【この子が!手を合わせて祈るとは!見どころがあるわね~】


声と同時に姿を現したのは、色彩豊かな食べ物を抱えた少しぽっちゃりした女性だった。

青年は久しぶりの再会を喜ぶかのように、女性にすり寄った。


【ちょっと何処ほっつきあるいてたのさ~】


女性はニコッと笑うと、静かに答えた。


【わたくしの料理を味見してくれる者を探していたのよ...】


青年は両の頬を膨らませるとプイッとそっぽを向いた。


【味見役はここにいるじゃないか~~】


2柱の会話を見ていた年寄りは深く溜息をついた。


(やれやれ、若いもんは気楽でいいのう。 ワシなんてあのババ神に面倒を押し付けられる度に反抗しておったが... まさか給金が変わったとかっ?!これは後で確認せねば。)


年寄りは眉をひそめて髭を解きながら遠くを見つめた。

しばらくして、思い出したかのように椅子に腰掛けた。青年と女性もそれに気付き、年寄りに続いた。


「時間じゃ。」


(にしても、最近は子供ばかりじゃのう もう少し肉付きの良い...おなごを見たいのう)


年寄りの一言で、人間サイズの光の玉が現れた。


「残念じゃ。本当に残念じゃ。」


という年寄りの戯言は光と共に消え去った。






 寝ていた怜は急に年寄りの声がしてパッと目を見開いた。


「え!!いまなんか聞こえ.. ゲホッゲホッ。」


(なんこれ煙?! まずい息が...)


「誰かぁ...たすけ......」


視界が煙で充満していて曇っていた。何も見えない。

僕の意識は、いつもよりも穏やかでいて温かい、日差しの下にいるような心地よさで包まれ、途切れた。







「目が覚めたかの?」


 気が付くと、目の前に80歳くらいの年寄りの顔面があった。


「うわわあああ!」


怜は心底驚き、顔も引きつったが心地よい空気と不思議な空間と年寄りを見てすぐに冷静になった。

ーー見渡すと、辺り一面光の玉が無数に浮かんでいて、接触しては混じり、混じると思えばはじけ、大小さまざま、色もたくさん、不思議な世界に不相応な年寄りと18歳くらいの顔のいい青年に食べるの好きって顔に書いてある分かりやすそうなお姉さんがいた。


(びっくりした、誰だよこのじいさん)


「あの僕お年寄りと接吻するほど飢えてませんよ?」


年寄りの顔面に若干引きつつ、冗談っぽく言った。


(ここは...どこなんだよ!!起きたら白髪のジジイの顔面近いし!寝覚めはイケメンの顔面かワクワクさんだけって相場が決まってんだろうが!)


※主人公の性別は女です。


「ワシも寝起き一番に見たいのは愛玩かのう。君を食うたりせんから安心せい ふぉっふぉっふぉ。


さて、歩きながら説明しようかの~ ついておいで、桜葉怜よ。」


年寄りはそういうと、くるりと背を向けた。


(いま心読まれたのか?!夢だと思うが夢だと信じたくないな。そうなると、考えられるのは僕が死んだことによる死後の世界、もしくは異世界、か。前者だな。)


「ハハッ まじかよ、僕死んだのか~」


怜は声を上げて笑った。この時、異世界連れってってくれるんじゃないか期待6割、不安3割、未練1割と自己完結していた。普通なら慌てふためくところだが、疑り深い性格と真面目さが合わさり、テキトーなので、それほどこの後の事を考えてはいなかった。


(めっちゃ綺麗じゃん。写真撮って親に送れたらいいのに。 あ、もう無理か。)


 年寄りの後ろ姿を眺めつつ、ぼんやりと不思議な空間を堪能した。



次回『第2話 対面と対話』

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