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悪魔は少女と手を繋ぐ  作者: ムヒ
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1話 会ってはならなかった2人

聖樹の森、名前は美しそうだがただの森である、何の変哲もない、何かがある訳でもない、ただの森である


そこに、1人の悪魔が木の傍に座り込んでいた


「クソッ...やられた...」

「ゴブリン...種族に合わず奇襲を...知恵をつけたな...」


悪魔は胸に大きな切り傷をつけていた

血を止めようとしても、血がだらだらと溢れてくる


「治癒が間に合わん...終わりだな...」


悪魔は覚悟を決めた、死ぬという覚悟を

その間、自分の人生を振り返っていた


「...楽しい時間だった...ただひたすらに、人を殺していいただけだったな...」


悪魔は満足気だった、もう自分の使命を、神に与えられた使命はもう全うした、悪魔に悔いは無かった


悪魔は目を瞑り、静かに死にゆくのを待った




「...」




「...」




「.......?」



何かがおかしい、悪魔はそう思って目を開けた


「何を...している...小娘...!」


そこに居たのは1人の少女だった、必死に悪魔の傷の治療を行っている。

傷に薬品を塗り、包帯を巻き、薬草をすり潰し、追加の薬品を作る。

その工程をひたすらに続けていた




「お前...自分が今、何をやってるのか分かってるのか?」


少女は悪魔に答えた


「人助けよ」

「意味がわからない...お前が助けてるのは悪魔だ...!」

悪魔は動かせなくなった体を必死に動かそうとする

少女はそれを見てもなお、治療を続ける

「悪魔でもなんでも、私は助けなくちゃ気が済まないの」

悪魔は少女を睨むように言う

「この傷は...ゴブリンにやられた傷だ...ゴブリンは少ない頭でこの俺を奇襲し、復讐を成し遂げたのだ...これは名誉あることだ...だから俺は静かに死んで、それにこたえなくてはいけない、だがお前に治療されては、ゴブリンの努力も無駄になってしまう...やめろ...もしその治療で動けるようになったら殺すぞ...」


少女は脅しを無視し、治療を続ける


「いや、貴方は殺せない、殺そうとしても、絶対に殺す意思はそこには無い」

悪魔は呆れた顔をした

「...警告はしたからな...じゃあ勝手にしろ...」






そして治療が終わり

悪魔は万全とはいかないが、立ち上がれるようになるまでは回復した。


立ち上がった姿を見て、少女は喜んだ

「よかった、回復したね」


「ふむ...警告はしたぞ?」


途端、悪魔は槍を少女の首元に止めた


「悪魔は人を殺す生き物だ、しょうがないよなぁ?」

そのまま槍を突こうとしている、しかし少女は怯えた顔1つせずに話した

「いや、貴方は殺せない、分かるんだ、それには殺す意思は無い」


「...」


悪魔は何か思い詰めたような顔をしている


「何故...我が怖くは無いのか?」

悪魔は怖かった、少女の目が、少女の顔が怖かった

死の瀬戸際にいるというのに、まるで人を助けるような顔をしている。

まるで目の前の悪魔を助けるような、勇気に満ちた顔。



悪魔は死に際の人のその顔を見るのは初めてだった

初めてが故に、怖かった


「人の死に際の顔は、いつも生にしがみつくような、必死な顔をする、俺はその顔を見るのが唯一の楽しみなのだ...だが、お前の顔は...他とは違う...」


悪魔はたじろいだ、そして、槍を下ろした


「ほらね、殺せなかった」


悪魔は固まっていた、何千年も生きている中で、初めての経験だったのだ。

悪魔は少女に問う


「なんで、俺が殺せないと、分かっていた...?」

少女は初め、驚いたような顔をしたが、少し考えて


「何となくかな...?」


悪魔は拍子抜けした

「何となく...?」


「そう、正直助かるかは、ほとんと賭けだったよ、私に悪魔の気持ちなんて分かるわけないし」


悪魔な驚いたまま少女にまた問う


「占星術師だとか、そういうのではないのか...?」


「いや?私はただのしがない冒険者だよ」


悪魔はまた固まった、予想外だったのだ、もっと何か、心が読める占い師だとか、そういうのだと思っていたのだ




「...」




悪魔は混乱した、ただの勘で俺の殺害から逃れた?その助けたいという、気持ちはどこから?何故?何故あそこまで怯えるような顔をしなかった?死に際だったというのに何故?

悪魔の頭は疑問でいっぱいだった

そして同時に、何千年と生きてきた中で初めてここまで混乱させた人間に、興味を持ち始めた





少女は気まずそうにして、「もう、いくね?」そう言って先に向かっていったが



「ちょっと待て」



悪魔が突然呼び止めた


「俺は貸しを作るのは嫌いだ、礼と言ってはなんだが、お前の冒険に3日だけの間同行させてくれないか?」



「...は?」


少女は固まった

「驚いた...悪魔って礼とかするような生き物じゃないって勝手に思ってた...」


「少しの間だ、お前に興味を持ったというのもある、人間というものを知りたくなった」



へぇ...と少女は少し嫌そうな顔をし、悩んだ、悩み続けた、悩んで悩んで悩み続けた、悩んで悩んで悩んで悩んで悩んで悩んで悩んで悩んで悩んで悩んで悩んで悩んで悩んで悩んで...





だが、答えはすぐに出た


「いいよ、丁度仲間が1人欲しかったんだ」



それを聞いた悪魔はにやっとし



「感謝する」




ここに1つの奇抜なパーティが出来た

人を殺す悪魔と、ただの冒険者の少女


正直いって不気味だ、おかしいのだ



2人はそのまま、1つの目的地に向かって歩き出した

悪魔と少女、この2人がいずれ、何か革命を起こすとは、まだ誰も知らなかった...
















「そういえば、名前聞いてなかったね、名前は?」


「コカビエル...」


「へぇ〜!なんか悪魔なのに可愛い名前!」


「お前は...小娘、名はなんという?」


「私?私はエイリューンっていうよ!」


「そうか...」








2人はそのまま、森の奥へと歩いていった...




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