The Flowing time like the river
下り電車を降りて幻想駅のホームに立った時、そこには、見たことあるようで、真新しい風景が広がっていた。
※この作品は東方Project二次創作です。原作者様とは一切関係ございません。
微かにする梅の香り、杉の香りと、絶え間なく聞こえてくる車のエンジン音。私は思わず、立ち止まって見上げた空はどこまでも澄んでいて、青い。
「おーい」
後ろから声がした。振り返ると、私と同じように白いワンピースを着た女の子が立っている。その後ろには、彼女の友達と思われる二人組がいる。そして三人の後ろには……。
「あ、あの人!」
私が指さすと、三人とも振り返る。そこには、昨日会ったばかりの青年がいた。彼はにっこり笑って言った。
「おはようございます」
「おはようございます」
私の挨拶を聞いて、彼は嬉しそうに笑った。
「この駅で降りるなんて奇遇ですね。あ、そうだ、今日はいい天気ですよね。絶好のお花見日和だと思いますよ」
「え?」
彼の言葉に驚いていると、後ろで二人の女性がクスクス笑う。
駅を出て、私は青川のこじんまりした一つのカフェへ向かった。ガラス張りの大きな窓から店内を見ると、先ほど出会った三人が座っているテーブルがある。私はドアを開けると、「こんにちは」と言って席についた。
「あれ? さっきの子じゃないですか! 偶然ですね」
彼は笑顔で言う。私の隣に座っていた女性が不思議そうな顔をして私を見た。
「知り合いなの?」
「うん、さっき知り合ったんだ」
彼が答えると、女性は納得したような顔つきになる。
「へぇ、こんな可愛い子と知り合えるなんて、あなたラッキーだったわね」
「えっ?」
急にそんなことを言われて戸惑う私を見て、彼女は微笑む。
「あら、違ったかしら? まぁ、それはともかく、何食べるか決めた?」
メニュー表を差し出されたので受け取る。
「じゃあ、コーヒーお願いします。」
注文を終えると、隣にいた男性が口を開いた。
「ところで、そちらの方は?」
「初めまして、高梨と言います。」
彼は丁寧に自己紹介をする。
「どうも、こちらこそよろしくお願いします。僕は、佐藤です」
お互いに握手を交わした。
その後、私は彼女らと別れて一人駅前の東横インへ向かった。チェックインを済ませ、ホテルの部屋へ向かうとベッドの上に大きなリュックが置かれていた。中には財布やスマホなどが入っている。とりあえずそれを部屋の中に置くと、一息ついて荷物を整理し始めた。着替えなどの必要なものをスーツケースに移し替えていく。そしてある程度片付いた後、私はもう一度部屋を見渡した。窓の外には高く聳える妖山が見える。その日私は息をつく暇もなく、眠りについた。
翌日。私は朝食をとるためにレストランへと向かう。エレベーターに乗りながら、外を見る。相変わらず人の気配がない。でも、少しだけ空気が変わった気がする。昨日の夕方にはなかった、何かを感じたのだ。
私はレストランの中に入ると、窓際の席についてメニューを開く。そしてすぐに料理を決めた。
「すみません、トーストセット一つください」
「はい、少々お待ち下さい」
しばらくして、店員さんが運んできたトレイには食パンが一枚載っていた。そしてその上にバターが載っている。私はそれを半分にして口に運んだ。サクッとして焦げ目のついた香ばしいパンの上でバターがとろりと溶けだす。
最高だった。
ホテルから出て、路面電車に乗って博麗神社へ向かった。
[幻想市内電車をご利用いただきまして、ありがとうございます。この電車は、博麗神社壱之鳥居行きです。次は、春桜舞潟です。]車内アナウンスを聞きながら、私は流れる景色を眺めていた。やがて終点に到着すると、目の前に広がるのは見渡す限り広がる緑。そして、その奥に見える真っ赤な鳥居が印象的な場所だった。私は、参道を奥へ奥へと進んでいく。石畳の道が続く先には立派な社殿が聳え立っていた。しかし、そこに人の姿はない。しばらく待っていると、どこからか声が聞こえてきた。
「おぉ、参拝者か! 久しぶりだな!」
振り返ると、そこには巫女服姿の少女が立っている。
「こんにちは」
私が挨拶すると
「あ、どうも。お賽銭はこっちね。」
と、愛想を尽かしたような言葉が返ってきた。「は、はい」
私は慌てて財布を取り出してお金を入れる。
「よし! これで大丈夫だね!」
「えっと、お嬢ちゃんの名前は?」
「霊夢よ。あんたは?」
「私は……」
「あーいいよいいよ。別に名前なんて興味ないからさ」
「そっか」
私は苦笑いをして言った。
神社を出て、私は大きなため息をついた。
繁華街にやってきた。が、私はこれほどまでに騒がしい街は正直嫌いだ。嫌というほど目に飛び込んでくる色鮮やかな広告の数々、耳を突き刺すような女子高生たちの話し声。私は一刻も早く抜け出したかった。そんな時、私はあることに気付く。昨日は気にならなかったが、この街は至る所に妖怪がいる。人通りの少ない路地裏では、人間より遥かに大きいサイズの猫が歩いている。そして、店先のショーウィンドウには、様々な種類の動物たちが展示されている。その光景を見た私は、胸が締め付けられる思いになった。
「うっ……」
思わず嗚咽が漏れる。私は思わず目を逸らして俯いた。
「おい、お前」
誰かの声がした。顔を上げるとそこには、魔女のような格好をした金髪の少女がいた。「ちょっと、話があるんだけど」
「え?」
「こっちこいよ」
「は、はい」
私は彼女のあとに続いて歩いていく。そしてたどり着いたのは、小さな公園だった。彼女はブランコに腰掛けて私に話しかけてくる。
「どうかしたのか?お前、私が見つけてなけりゃそのまま倒れてたぜ。」「そう……なんですか?」
私は戸惑いながら答えた。
「ああ、そうだ。で、どうしたんだ?」
「実は……」
私は彼女に自分の境遇を話した。すると、彼女は大きく笑った。
「ハッハハ! そりゃあ災難だったなぁ」
「え?」
「ま、でも安心しろって。ここなら少なくとも命の危険は無いだろうしな。それに、ここには私の他にもたくさんいる。だから、きっとなんとかなると思うぞ」
「本当ですか!?︎」
私はにわかに嬉しくなった。
「君、名前は?」
「ん、私か?私は霧雨魔理沙。魔理沙って呼んでくれ。」「わ、分かりました。よろしくお願いします。私は高梨一美といいます」
「おう!こちらこそよろしくな!」
私は笑顔で言う。
「あの、これからどこに行けば良いんですかね?」
「うーむ、とりあえずはこの繁華街から出た方がいいな。案内するぜ。ついてきてくれ。」私は、彼女に連れられて商店街へと向かった。そして着いた先は、古びた雑貨屋さん。
「ここは?」
「文具とか、生活用品を売ってる店だ。ここで必要なものを買い揃えるとしよう」
店内に入ると、そこにはたくさんの品物が並んでいる。
「おっ、魔理沙か。そっちはダチか?」
「いんや?さっき繁華街の裏通りで倒れかけてたから助けてやったとこ。」あ、一美、こいつは森近霖之助。私はこーりんって呼んでる。こいつは、まぁなんだ?、私の兄貴みたいなもんだ。」
「え、そうなんですか!」
「いや違うから。」
「じゃあ、お姉ちゃん?」
「それも違うから。とにかく、僕はただの道具屋の店主だよ。」
「へぇ〜。あっ!ところでこのお店の商品はどこから仕入れてるんですか?」
「基本的には外の世界の物だけど、たまに僕が個人的に買ったりもしているよ。」
「外の世界!すごい!」
「あ、ちなみにこいつこう見えても半妖なんだよ」
「えっ!妖怪もいるんですか?」
「ああ、この街にいる奴らは大体妖怪だと思っていい。あとは、神隠しにあった人間なんかもここに来ることもある。」
「へぇ〜」
私は感心しながら辺りを見回す。すると、奥の方に大きな箱のようなものが置いてあるのが見えたが、触れてはいけないと思い、聞こうとする気持ちを胸の奥でぎゅっと仕舞い込んだ。
「最初は…妖山区の市役所に行けばそこで正式にここの住人として扱われる。行ってみるといいよ。」こーりんが言った。続いて魔理沙が付け足した。
「まぁ、市長の八雲紫はちょっと気難しいやつだがな。」「ふぅん……」
私は適当に相槌を打つ。そして、私はあることを思いついた。
「あの、もし良かったらですけど、私をあなたの家に置いてくれませんか?」
「うん?別に構わないぜ。」
魔理沙が即答した。
香霖堂のある山瀬通商店街からバスで10分ほど行ったところに、魔理沙の家はあった。
「着いたぜ。」
「随分こじんまりした雰囲気の洋館なんですね。」
「魔森区の家は大体こんな感じなんだぜ。」
「へぇ。」
適当に相槌を打った後、しばらく呆然としていた。
「どうした?入っていいぞ?」
魔理沙に言われてハッと我に返った。私は恐る恐る中に入る。
「お邪魔しまーす……」
「ようこそ、我が家へ」
そこは意外にも綺麗な玄関だった。そして階段の上の部屋には、可愛らしい人形がいくつか飾られていた。
「あの、あなた以外に誰かいるんですか?」
「うん?いやこれは近所のアリスがくれた人形なんだ。魔力が宿ってるらしいが、この手の魔術はあいつかパチェにしか扱えんからな。私にはわからないぜ。」「へぇ〜、不思議な事もあるもんなんですね。」
私はそんな事を言いながらリビングに入った。するとそこにはソファーに座って本を読んでいる金髪の少女がいた。私はその少女に見覚えがあった。
「あっ!アリスさん!」
「あら、こんにちは。一美ちゃん」
彼女は、上海と呼ばれる人形の使い魔と一緒にお茶をしていた。
「ちょうど紅茶を飲んでたところなの。一美ちゃんも一緒にどうかしら?」
「えっ!良いんですか?」
「もちろんよ。ほら、そこ座って」私は促されるまま席に着く。そして、私の前にはティーカップが置かれ、紅茶の入ったポットが置かれた。
「いただきます。」私は早速口をつける。味わったことのないような美味しさだった。
「おいしい……」
「そうでしょう?」
彼女は得意げな顔で笑みを浮かべる。
「そうだ。私、自己紹介してなかったわね。私はアリス・マーガトロイド。魔法使いよ。」「あ、はじめまして。高梨一美といいます。」
私が挨拶すると、アリスさんは微笑んだ。「ええ、よろしくね。一美ちゃん。」「はい、こちらこそ。」
「それじゃ、部屋のものは勝手に触ってくれていいからな。二人で本でも読んで待っててくれ。」魔理沙はそういうと、どこかへ行ってしまった。
「ねぇ、一美ちゃん。」
「はい?」
「私達、友達になりましょう?」
「ええ、是非。」
こうして、私たちは友人になった。
あれから大体3時間ぐらい経っただろうか。キッチンの方からものすごい音が聞こえてきたので私はそっちへ向かった。すると、そこでは魔理沙が料理をしているところだった。
「大丈夫ですか!?」魔理沙は焦っている様子だ。しかし、よく見ると彼女の手元では、鍋の中で何やら得体の知れない液体がぐつぐつ煮えたぎっていた。「うおおおっ!しまっ……!」
「あっ、危ない!!」
私は咄嵯に飛び出し、魔理沙の持っていた包丁を手で掴む。そして、そのまま手を突っ込み、熱湯の中を掻き回した。私は火傷してしまったが、何とか間に合ったようだ。
「はぁ……、よかった……。」
「すまん!助かったぜ!」
「いえ、気にしないでください。それより怪我とかはないですか?」
「ああ、少し痛むだけだ。とりあえず冷やせばなんとかなるだろうさ。冷凍庫の中に保冷剤があるから、取ってきてくれ。」「わかりました。」
私は言われた通り、台所にある冷蔵庫を開ける。中にはたくさんの食料が入っていたが、あまり見ないようにして、一番下の段に入っているものを取り出す。そしてそれをタオルに包んでから、急いで魔理沙の元へ戻った。
「はい、これ使って下さい。」
「おう、ありがとよ。」
魔理沙はタオルを受け取ると、それで患部を包み込んだ。
「ありがとう。おかげで助かったぜ。」
「いえ、当然の事ですよ。」
「まぁ、これで一安心だな。」
今夜のご飯は、カルボナーラパスタとシーザーサラダだった。普段は小食な私も、今日のゴタゴタで疲れていたのだろうか。ものの10分でペロリとたいらげ、そのまま寝室へ向かいベッドに倒れ込んだ。
翌朝、目が覚めると魔理沙の顔があった。
「お、おはようございます……」私は慌てて飛び起きる。そして顔を洗って歯磨きをして着替えてリビングへ行くと、魔理沙は既に朝食の準備を終えていた。「お、やっと起きたか。もうすぐ朝飯できるぜ。」「はい、分かりました……」
私はソファーに座り、テレビを見る。すると、ニュース速報が流れ出した。「ん?何かあったんですかね?」
「ちょっと見てみるか。」
魔理沙がリモコンを操作し、チャンネルを変える。すると、
「今日未明、方急山仙線沿線に何者かが爆弾を仕掛けた模様。東方急行電鉄は、今後の事件、事故防止のついて…」とキャスターが言っているのが聞こえた。「爆弾だって?」
「ええっ!まさかそんな!」
「まだ犯人は捕まってないみたいだな。」
「早く止めないと!」
「おい、どこ行くんだよ?」
「決まってるじゃないですか!電車を止めに行くんですよ!」
「馬鹿言うなよ。お前一人が行ったってどうにもならないぞ。それに、お前がいなくなったら誰が上海たちの面倒を見るんだ?」
「でも……」
「落ち着け。警察に任せればいいじゃないか。」
「そうですね……。」
暫くして
「今日は一日中、暖かくなる見込みです。降水確率は0%、最高気温は25℃…」天気予報を見終わった後、私はソファーで横になる。
「なあ、一美」「はい?」
「昨日は本当に助かったぜ。」「いえ、当然の事をしたまでですよ。」「それでもだよ。」
「ところで、魔理沙さんはどうしてここに?」「ああ、それなんだがな。実は霊夢に頼まれてな。」
「霊夢って、あの博麗神社の巫女さんの?」
「そうだぜ。あいつは私の古い友人で、よく遊びに来てるんだ。その時にいつもお茶とお菓子を出してやってたら気に入られちまったらしくてさ。」
「そうだったんですね。」「ああ、それで今回も私に相談してきたわけだ。」
「でも、なんで私に頼む必要があったんでしょう?」
「それは多分……、いや、なんでもないぜ。とにかく、私はこれから出かけてくるから、留守番頼んだぜ。それと、もし警察に事情聴取されるようなことがあったら、適当にはぐらかしとけよ。じゃ、行ってくる。」
「行ってらっしゃい。」
昼頃になって、魔理沙は帰ってきた。しかし、彼女はどこか様子がおかしいようだった。
「ただいま……」「おかえりなさい。随分遅かったですね。」
「あ、ああ。ちょっといろいろあってな。」
魔理沙はそう言いながら、私に新聞を手渡す。
「これ、読んでみろ。」
そこにはこう書かれていた。
『謎の爆発事件続発!方急山仙線で連続爆破テロか?』
「どういうことですか?」
「わからないのか?これはおそらく妖怪の仕業だぜ。」
「えっ!?」
「さっきニュースで見たろ?」
「あっでもこれ文々。新聞…」
「この記事に関しては信用できる。」
「そうなんですか?」
「ああ、だがあいつにしては珍しいな。普段どれだけ記事を面白おかしくするかに力を入れてんのに。」
「確かに……、言われてみると、この見出しだと信憑性がありますね。でも、どうしてこんなことを?」
「恐らくだが、妖怪たちは人間に恐れられてる存在だから?自分たちの存在が世間一般に知られてしまったらまずいんだろうな。」
「なるほど……。」
「それにしても困ったもんだぜ。これじゃあ安心して寝られねえよ。まっ、出かける分にはいいが、お前も気をつけろよ。」
「はーい。」
この日の午後、私は「色香」という市内のビル街に遊びにきた。魔理沙曰く、裏通りにさえ入らなければ大丈夫とのことだ。
「あれ?一美ちゃん?」
聞いたことのある声が聞こえたので振り返ると、一昨日の3人組がいた。「あら、奇遇ですね。」
私は愛想笑いを浮かべる。
「今日もお買い物に来たんですか?」とリーダー格の女が言った。
「えっと……」
「ああ、こいつらは私が呼んだんだぜ。」
後ろを振り向くと魔理沙が立っていた。
「まぁ、一緒にお茶でもどう?奢るぜ。」「はい、是非。ご一緒させていただきます。」
私たちは近くの喫茶店に入った。
「へぇ、魔理沙さんは魔法使いなんですか。」と女が言う。
「ああ、そうだ。私は普通の魔法使じゃないけどな。」「普通じゃないって、どんな感じなんです?」
「例えば、今ここでお前らに催眠術をかけてもいいんだぜ。」
「えっ!本当ですか!」
「ほら、やってみせてくれよ。」
「分かりました!それではいきますよぉ……。」と言って彼女が手を叩くと、私以外の三人の動きが止まったように見えた。
「どうだ?」
「凄いです。まるで時間が止まってるかのようでした。」
「そっか。ところで、今日は何か用事があって来たんじゃないのか?」
「あ、はい。実は……」
私は、昨夜起こった事件について説明した。
「なるほどねぇ。で、あんたたちの目的は?」
「もちろん、妖怪たちの企みを阻止することです。」
「でも、どうやって?」
「それが……」
「取り敢えずは今夜霊夢に会ってみるんだな。あいつならなんか考えがあるかもしれないし。」
「そうします。ありがとうございます。」
3人は会計を済ませると店を出て行った。
「さて、私らもそろそろ帰るか。」
「はい!」
方急魔森線に乗車し、私たちは発車まで待っていた。
「方急線をご利用頂きまして、ありがとうございます。この電車は、快速急行桜大幣行きです。次は、白玉楼に停まります。お出口は、右側です。方急幻海線、地下鉄山瀬通線は、お乗り換えです。」魔理沙と私は席に座っていた。すると、彼女は突然口を開いた。
「なあ、もし妖怪たちが人間を襲っていたら、お前はどうする?」
「そうですね……、出来る限り助けたいと思います。」
「なんでだ?面倒ごとに巻き込まれるかもしれねえぞ?」
「それでも構いません。だって、誰かを助けるということは素晴らしいことだから。」
「ふぅん、変わった奴だな。まっ、そういうところが気に入ったんだけどさ。」
「えっ?」
「よし!着いたぜ!降りるか。」
「はい!」
「おう、文屋じゃないか。また来たのか?」
「ええ、ちょっと取材に来たんです。」
「なんだ、今回は1人か。いつも連れてる女の子はどうした?」
「あの子には留守番を頼んでいますので。」
「ふうん、まあ良いや。今日は何を聞きたい?」
「最近、この辺に妖怪が現れなかったか調べてほしいんですが。」
「妖怪?妖怪のことなら……あれっ、おかしいな。」「どうかしましたか?」
「いや、確か昨日、その妖怪が現れたような気がしてな。」
「どこに現れました?」
「ここから西の方に行ったところだ。」
「なっ!?それは本当ですか?一体何が起こったんです?」「よく覚えていないが、爆発みたいなものが起こって、それから記憶がないんだよ。」
「なるほど……。他に何かありませんか?」
「いや、ないよ。」
「そうですか、ありがとうございます。」
文と別れて、私たちは駅も外に出た。帰り道で私は魔理沙に尋ねた。「結局妖怪たちはどこにいるんですかね?」
「分からん。だが、恐らくまだこの辺りにいるはずだぜ。」
「え?どうして分かるんですか?」
「勘だよ。」
「ええ〜?」
「まあ、気にすんなって。それよりも早く帰ろうぜ。」
私たちは自宅に戻った後、すぐに夕食の準備を始めた。今日のメニューはカレーライスである。
「おい、一美。」と魔理沙が言う。
「なんです?もうすぐできますよ。」「いや、そうじゃなくてだな、今朝の話なんだが、霊夢が妖怪退治に行くって言ってたぜ。」
「えぇ!本当ですか?」
「ああ。なんでも、紫が言っていたらしいぜ。」
「そうなんですね……。」
カレーライスをたいらげ、私たちは再び出かけた。
「今度の2番線の電車は、方急本線直通、急行東幻想市行きです。この電車は、4つドア6両です。」「うわぁ!すごい!」私は思わず声を上げてしまった。今まで見たことのない光景だったからだ。
「へっへーん、驚いたか?」と魔理沙が得意気になる。
「はい!こんな景色初めて見ました!」
「まあ、これからもっと驚くことがあると思うぜ。」
しばらくすると、私たちの目的地に到着した。
「さっきの話なんですけど、霊夢さんが妖怪退治をするってどういうことなんでしょう?」
「私にも分からないぜ。でも、あいつならなんとかしてくれるだろう。」
幻想駅の乗り換え口を歩いていると、私の中で何かが目覚めた気がした。と同時に、歩いている人の種族が一目でわかるようになった。「あそこに見えるのは、人間ですね。そして、向こうに見えるのは……」と私が指さすと、魔理沙は言った。
「あれは鬼だ。あいつらは角が生えてるからな。」
「なるほど。確かに言われてみればそうですね。」
暫く歩いていると、今度は居酒屋「伊吹屋」の前に来た。
「相変わらずデケェ声で喋るなぁ萃香は。」「あの人は誰なんですか?」
「ああ、あいつは伊吹童子だぜ。」
「えっ?それって酒呑童子じゃないんですか?」
「そうだぜ。茨木童子と混同されがちだけどな。」
「あっ、着きましたよ。」
方急と打って変わって、短くて可愛らしい電車がいた。
「これで一駅でしたね。」
ドアが開き、乗り込もうとしたとき、「待て。嫌な予感がする。やめとこう。10分後には次のがくる。そっちで行こう。」と魔理沙が言い出した。「えっ?どうしたんですか?」「いいから来い!」私は引きずられるようにして外に出た。
「あの……どうして止めたんですか?」
「さあな。ただの勘だぜ。」
「ええ〜」
「まあ、気にすんなって。」
私たちは駅から出ることにした。
「次の駅は博麗神社前でございます。」
「おっ!着いたか。降りるか。」
「はい!」
「お前はここで降りろ。」「えっ、どうしてですか?」
「危ないかもしれないだろ?だからここで待っとけ。」
「分かりました。」
私は駅に取り残されることになった。
「……遅いなあ。」
十分ほど経った頃だろうか、突然後ろから誰かが走ってきた。
「お待たせしました!乗ってください!」
「文さん!?」「話は後です!早く!」
「はい!」
「発車します。」
電車に乗り込むと、文が息を切らせながら言った。「間に合ってよかった……。」
「何があったんですか?」
「実は……先程、幻想市内の方々が襲われたんです!」
「ええ〜!そんなことってあるんですか?!」
「いえ、聞いたことがないです。でも、現に起こってしまったんです。」「それで、一体どこに襲われたんですか?!」
「それはですね、え〜と、確か、紅魔館というところでしたよ。」
「なんですって!その近くまで行ってくれませんか?!」
「もちろんですよ!今すぐ出発します。」
幻想駅に到着したのち、そこには文のリムジンが止まっていた。
「さあ、急いでください!」と文が言う。私たちは慌てて車に乗り込み、出発した。
「あの!一つだけ質問してもいいですか?」
「ええ、構いませんよ。」
「ありがとうございます。では、霊夢さんはどこにいるんですか?」
「それがですね、妖怪退治に出掛けたんですよ。」
「ええっ!大丈夫なんでしょうか?」
「まあ、いつものことなので心配はないと思いますよ。」
「そうなんですね……。」
私は不安になりながらも、それ以上聞くことはしなかった。
暫く走ると、湖畔になにやら大きくて、豪華な赤い屋敷が見えてきた。「あれが、紅魔館でございましょうかね?」
「そうだぜ。」と魔理沙が答える。
「では、私が話をつけてきますので、少しの間ここで待機していてください。」
そう言って、文は車を降りた。数分待つと、彼女が戻ってきた。「どうやら中に通してくれるようです。」私たちは中に入った。
「こちらが応接室でございます。」とメイドらしき人に案内された部屋に入ると、一人の女性が待っていた。銀髪で、背が高く、黒い服に身を包んでいるが、どこか違和感がある。彼女は言った。「初めまして、私は十六夜咲夜と言いますわ。よろしくお願いいたします。」
「はい、宜しくお願いいたします。」と言って、私も挨拶をした。
「早速本題に入らせていただきたいのですが、よろしいですか?」と魔理沙が言った。「ええ、勿論。」と咲夜は答えた。
「まず、私たちを襲ったのはお前たちの仕業か?」といきなり魔理沙が訊いた。「いいえ違いますよ。」と即答した。「じゃあ、誰がやったんだ?」と魔理沙が食い下がると、彼女は続けた。「さっきも言いましたけど、本当に知らないんです。」
「そうか……」と残念そうに呟くと、咲夜が
「お嬢様なら何か知っているかもしれません。お会いになられますか?」と言った。「是非頼むぜ。」と魔理沙が返事をする。
「かしこまりました。それでは付いてきて下さいませ。」
そう言われてついて行くと、大きな扉の前にたどり着いた。そして、「失礼します。お客様をお連れ致しました。」と言うと、中から声が聞こえた。「入っていいわよ。」
「はい、失礼します。」
中に入ると、そこには椅子に座って紅茶を飲んでいる少女がいた。
「あら、いらっしゃい。その子は?」と興味深げに訊いてくる。「初めまして、高梨一美といいます。」
「ふ〜ん、貴方は外来人なの?」「はい、まあそんなところです。」「へぇ〜、そうなのね。私はレミリア・スカーレットよ。」「はい、よろしくお願いします。」
「それで、今日は何しに来たのかしら?」
「実は、襲ってきた奴について知りたくて来たぜ。」と魔理沙が言った。「なるほど、そういうことね。いいわ、教えてあげる。」「ほんとか?!助かるぜ!」
「でもその前に、私の話を聞いてくれないかしら?」「ああ、分かったぜ。」
「実は最近幻想市が何者かによって脅かされているのよ。」「何者かって?」と私は疑問に思った。「分からないのよ。正体不明の人物なの。」「そんなやつがいるなんて信じられないぜ。」と魔理沙が言った。
「ええ、私も最初は信じなかったんだけどね。でも実際被害が出てしまったのよ。」と悔しそうに言う。「そいつはどんな能力を持ってるんだ?」
「それが……何も持っていなくて、ただ単に弾幕を張ってくるだけなのよ。」
「何だそりゃ?全く意味がわかんねえぞ!」と魔理沙が言った。
「まぁいい。お前ら、行けるか?」と魔理沙が私と文に訊いた。
「ええ、もちろんです。」と私は答えた。「では、行きましょうか。」
私たちは紅魔館を出て、空へと飛び立った。
ー数時間前
「そういやさ、お前ってなんか能力持ってんのか?」
「それが、わからないんですよ。」
「じゃあなにかしら動いてみてくれ。」
私はすかさず、指を鳴らした。すると、2階から何やら魔導書にようなものが飛んできた。
「なるほど。モノの位置を操る能力か。それって自分で標的とか動きとか決められるのか?」
「やってみます。」
といい、私は、その魔導書を思うままに動かし、さらに鍋もこちらへ飛ばしてきた。
「これだけあれば十分戦えるだろう。」
紅魔館から街の上を飛び、妖山の方へやってきた。「この辺りで良いでしょうかね?」
「まあ、大丈夫だと思うぜ。」と魔理沙が言った。私は魔導書を開き、適当なページを開いた。
「では、始めましょう。」
私が合図を出すと、二人は一斉にスペルカードを発動させた。私は、自分の位置を操って飛びながら弾幕を張っていた。「なんだか様子がおかしいですね……。」と文が言った。確かに、いつもより相手の攻撃が激しく感じられた。その時だった。突然視界が真っ暗になったのだ。「あれっ!?︎これは一体どういう事ですか?」と文の声が聞こえる。「多分ですけどルーミアさんかと。」「どうしてこんな事をするんですかね?」
「それはわかりませんけど、とりあえず今はここから出ましょう。」
そして私は、暗闇の中で目を覚ました。
「やっと起きたか。」と魔理沙が言った。周りを見渡すとそこは、先程までいた場所とは異なっていた。
「ここはどこなんでしょう?」と文が訊くと、「恐らく、ここも敵の中だとは思いますが……」と答えた。
「おい、誰か来るぜ。」
「どうやらお客さんのようですよ。」と二人が同時に言った。
「あら、もう来たのね。」と声の主が言った。
「貴方は誰?」と質問をした。
「私の名前はフランドール・スカーレット。吸血鬼よ。よろしくね。」と彼女は答えた。「ええ、よろしく。」
「でもなんで急に紅魔館に?」と魔理沙が訊いた。「貴方たちを助けるためよ。」
「そうか。ありがとな。」
「一美さんは闘いに慣れてるわけじゃないから無理しないことね。」「ありがとうございます。気をつけます。」「うん!それでこそ私の友達よ!」と嬉しそうに言った。
「それじゃ、私はこれで失礼しますね。頑張って下さい。」と言って、どこかへ行ってしまった。
「よし、そろそろ行くか。」
今宵は紅い満月だった。
例の繁華街の上空を通過した時、後ろから何者かの声がした。振り返ると、そこには純狐がいた。「久しぶりだな、霊夢。」と彼女が話しかけてきた。
「あんたは、あの時の……!」
「そういえば自己紹介がまだだったな。私は純狐という者だ。」
「それで、今日は何をしに来たの?」と私は尋ねた。
「お前たちの敵討ちをしに来てやったぞ!」と言い、弾幕を放ってきた。私たちは弾幕を避けながら会話を続けた。「なぜ私たちを襲うのかしら?」「ふん、答える義理はないな。」
「まあいいわ。さっさと倒してやるわ。」と魔理沙が言い、戦いが始まった。
「いくぜ!恋符『マスタースパーク』!!」と魔理沙が叫んだ。すると、彼女の八卦炉に巨大な魔力が集まり始めた。そして、それを一気に解き放った。しかし、相手には効かないようだった。
「もうお遊びもごめんだ。純化しろ。」
何やら紫の光が純狐の手から放たれた。
「一美ー!避けろー!」
私は光を咄嗟に避けた。その瞬間、後ろの山の麓にはクレーターができていた。「あいつの能力って何なのかわかるか?」と魔理沙が私に訊いてきた。
「えっと、確か、穢れを浄化するとかなんとか言ってた気がするんだけど……」
「ふむ、それなら私に任せてくれ。」と魔理沙が言った。
「わかったわ。任せるね。」
魔理沙が詠唱を始めた途端、魔理沙から強い魔力を感じた。そして、その魔力はどんどん強くなっていった。
「こいつはちょっと強そうだな……。」
「それじゃ、そろそろいくわよー!」と私は言った。
私は、スペルカードを発動させた。
「夢想封印!」と叫ぶと同時に、大量の光の玉が飛んでいった。そして、それに続けて、私は弾幕を張った。相手は、避ける事に集中しており、なかなか攻撃に転じられなかった。「そろそろ決着をつけましょうか……。」と私は呟いた。
「そうね、私も疲れてきたし。」と魔理沙が言った。「それじゃ、一気に決めるわよ。」私が純狐を操って魔理沙のマスタースパーク、霊夢の夢想封印の弾幕の前に連れ出した。
煙が上がり、暫くは様子がわからなかった。煙がはれると、そこに純狐の姿はなかった。
暫くして、妖山の方から眩しい光が差し込んできた。朝が来た。「終わったな。」「えぇ、そうね。」
こうして長い夜が終わった。
私は文さんと共に、妖山の頂上付近に来ていた。「この辺でいいでしょう。」と文が言った。「ありがとうございます。」
「いえいえ、お礼なんて要りませんよ。それよりこれからどうします?」
「とりあえず、一度神社に戻ります。」
「わかりました。では私も一緒に行きましょうかね。」
「助かります!」と私は言った。
私は神社に戻ると、すぐに文と別れた。
「あんたもそろそろ帰ったほうがいいんじゃない?」
「そうですね。色々と疲れが…」
「まぁ、今夜は魔理沙んちに泊まっていきなさいよ。」
「わかりました。ありがとうございます。」
「いいよいいよ。礼なら魔理沙に言いなさいな。」
私は神社を出た。路面電車はもう来ているようだ。
「次の停留所は、魔森大林2丁目です。」
アナウンスを聞きながら、私は昨晩のことを思い出していた。
魔理沙の家に着いた時、何か実家のような安心感が不意にした。何故だろう? そんなことを考えているうちに電車は終点についた。
私は急いで魔理沙の家に走った。
魔理沙の家に着くと、玄関で魔理沙が待っていた。「おっ!来たな。待ってたぜ。」
「ごめん、遅くなっちゃった。」「大丈夫だ。今はまだ5時半だからな。」
「それじゃ、早速だが、行くぞ!」と言って魔理沙は私の手を握った。
「えっ、どこに?」と私が言うと、「博麗神社の宴会だよ。」と魔理沙が答えた。
「霊夢さんのところに?」
「あぁ、あいつには世話になったからな。」
「そうなのね。わかったわ。」
「よし、いくぜ!」
私たちは二人で空を飛んで行った。
空はもう暗くなっていた。
神社に着くと、鳥居の奥におおぐま座が輝いていた。参道を歩くと、奥から何やら楽しげな音楽が聞こえてきた。そして、境内に入ると、そこには大勢の妖怪たちがいた。そして、その中には見知った顔もいた。
「あら、あなたたちも来たのね。」と霊夢が声をかけてきた。
「おう!今日はありがとな!」と魔理沙が霊夢に言った。
「別にいいわよ。それより、早く飲みましょう?」
「そうだな。一美、行こうぜ。」
「うん、わかったわ。」と言って、私達は席に向かった。
「ほらっ!飲んでるかーい!?」と萃香が叫ぶ。「はいはい、あんまり飲み過ぎないのよ。」と霊夢が言った。
「わかってるよ。それより、こっち来て飲まないかい?」と霊夢に訊く。
「まだ仕事があるから無理よ。」
「相変わらず真面目なんだねぇ。まぁいいさ。ところで、そこのお嬢ちゃんは誰だい?」と突然話を振られた。
「あっ、私は星熊勇儀っていうんだ。よろしくな!」
「私は、茨木華扇といいます。こちらこそよろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」
私は社務所の縁側に腰掛けて「大吟味」を呑んでいた。
「あやや、あなたも来ていたのですか。」
「あっ、文屋さんこんばんは。」「どうも、文屋です。」
「そういえば、文さんも新聞書いていますよね。」
「はい、一応やっていますね。」
「どんな感じの記事を書いているんですか?」
「そうですね……。主に幻想市内の出来事を書いていますね。あとは、記事の内容に合わせた写真を撮ったりしていますね。」
「へぇ、写真まで撮っているんですね。すごいなぁ。」
「いえいえ、それほどでもありませんよ。」
「そう言えば、文さん。」と私は文に向かって言った。
「今日の夕刊もらえますか?」「はい、わかりました。少々お待ちくださいね。」と言って、文は飛んでいった。
暫くすると、文は一枚の新聞を持って戻ってきた。
「お待たせしました。これが今日の夕刊です。」
「ありがとうございます。」
私はそれを眺めた
「博麗の巫女と魔法使い またまた大手柄!」という見出しだった。
本文を読むと、今回の事件の概要が書かれていた。そして最後に、犯人についての記述があった。そこにはこうあった。
「犯人は、元人間の妖怪である。動機は復讐と思われる。」と書かれていた。
そうか……やっぱり、あの時私を襲った妖怪は、復讐の為にやったのか……。
私は少し悲しくなった。
宴会の後片付けをしている最中、私は魔理沙に声をかけた。
「ねえ、魔理沙。」
「ん?どした?」
「ちょっと、散歩しない?」
「おう!いいぜ!」と言って魔理沙は箒にまたがった。
神社の裏手にある草原に私たちは向かった。
「綺麗だな。」と言って魔理沙は夜空を見上げた。
「本当ね……」と私も同意する。
「あの星の向こうには、一体何があるのかしら。」と私が言うと、魔理沙が答えた。
「きっと宇宙だよ。」
「そうね。いつか行ってみたいわね。」
「そうだな。」と言って魔理沙は黙った。
沈黙の時間が流れる。この時間がずっと続けば良いと思っていた。
翌朝、私は幻想駅に向かった。
「あの、今までお世話になりました。またちょくちょく遊びに来ます!」と私は魔理沙に挨拶をした。
「おう!いつでも待ってるぜ」と魔理沙が言った。
「それでは失礼いたします!」
私はホームに上がってきた。
「まもなく8番線に、上野東京ライン高崎線直通、普通籠原行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまでお下がりください。この電車は、15両です。グリーン車は4号車と5号車…」
こうして私は幻想市を後にした。
電車の中で、私は魔理沙からもらった「大吟味」を呑んで過ごしていた。
トンネルの向こう側は、いつもの景色だった。見慣れた空、山。だが、前までの自分とは、何か違う気がした。私の心の中には、魔理沙がいた。
「あぁ、恋ってこういうことなのかなぁ。」と思った。
そして、私にとって初めての恋は終わった。でも、これから先、まだまだたくさんの恋をするだろう。その度に、今の気持ちを思い出したいと思う。さようなら、幻想市。さようなら、初恋。私は、住み慣れたあの街へ……
私は、次の目的地へと向かっていた。
「次は……宮原かぁ。」
私は、宮原駅で下車して、何か吹っ切れたように家路についた。
玄関を開けて叫ぶ「ただいま」の一声。奥からは、聞き覚えのある家族の声がした。