序章 刺激
なんとなく生きていた。
友達と喋って、遊んで、空いた時間を使い勉強して、アルバイトして。
それでも充実はしていた。友達といるのは楽しかったし、アルバイト先でちょっと可愛い先輩と一緒にいられるのも嬉しいし。
でも、強い刺激が足りなかった。それがないだけで日々がつまらない。
「何か起きねぇかな。」
アルバイト帰りの駅のホームでそんなことを小さく呟きながらスマホを取り出し、今日のニュースやトレンドに目を通す。
『謎の光の目撃情報が多数』
『未知の物体』
やけにオカルト系の情報が多く出回っている。
オカルト系は結局は編集などでそれっぽく見せているだけでほとんど偽物だ。しかし、ワクワクさせられるのは事実なので偽物ということが前提でそういうものは見ていた。
だが今回はニュースですら真実としてこれらの情報を報道していた。創作物としては面白いと思いつつも、そんなことあるわけないだろ。と、鼻で笑った。
「あれ、透?」
声をかけられたので前を見る。そこには同級生で幼馴染の紡がいた。彼女は容姿端麗の才女で、運動神経も良いが、意外と天然という、非の打ち所がない人である。
「部活帰り?」
「うん。透、一緒に帰ろうよ。」
「どうしてもと言うのなら」
「どうしてもだよ!ほら、電車きたよ。行こ。」
「よし、行くか。」
スマホをしまい、車両に乗ろうとした。
その直後、ズンッと地震のように揺れる。さらに逃げる間もなく、閃光に辺りが包まれ、光源と思われるところから巨大な穴が空き、そこからこの世界のものとは思えない、いや、この世界にあってはならない、いてはならないモノが出てきた。
このモノの出現が世界の生存権を賭けた異界間戦争の始まりだった。