第9話 側仕えに1歳年上の女の子がきました。
イネが、女の子を伴ってやってきました。
「こちらは、アイカ騎士団長のご息女です。先日お館様にお願いしておりました、候補の者です」
「メグミ・アイカ」です。よろしくお願いします」
「メグミ様のお部屋は、サヤカさんの右隣りになります。彼女を如何様に使って良いと、お館様から聞いております。しかし、くれぐれも度が過ぎないようにお願いします」
「イネは心配性だね。無茶はしないですよ」
まあ、毎日にスリルを求めて、いたずらの限りを尽くしている私が言うのは、ちょっとはばかれます。
お父様にお願いしていた、遊び仲間兼側仕えの子がやってきました。獣耳がある狐種の女の子。
腰まである、真っ白な髪を一本の大きな三つ編みにしています。目は鳶色でぱっちりと可愛いです。それに、騎士団長の父譲りで運動神経が抜群だそうです。これで、いたずらに磨きがかかると思うとゾクゾクしてきました。
さて、今日は廊下で滑って遊ぼうということになりました。
着物の裾を持ち上げて帯に挟み込みます。ちょっと膝上丈になって、恥ずかしいところもありますが、廊下を滑って遊ぶにはこの格好が必須です。
「さあメグちゃんも裾を上げて、滑りましょう」
「ちょっとこれは恥ずかしいですね」
足袋に摩擦を少なくする魔法をかけます。メグちゃんにも。
「さあ行くわよ、メグちゃん」
「サヤカ様、お待ちをー」
すぃーすぃーすぃーっと。
これは楽しい。二人して廊下を行ったり来たり。
もっとスピードを出すのに、遠慮はいらないわ!
さらに、廊下にも摩擦を少なくする魔法をかけます。
そして、事故が。
「きゃー」と悲鳴の後に、ドスンと音がした。
「あ痛たった。あーー、たんこぶができましたわ」
間髪を入れずに、イネの大きな声が、頭の上から聞こえます。
「サヤカ様、メグミ様。なんというはしたない格好で!」
でんぐりかえって、逆さまになって、お尻が丸出しになっていたのです。これはやばい。
その場で、正座させられて延々と説教されたのです。
大概は7歳のやんちゃで許されるのですが、今回はお父様もやってきて、自重するようにと申し渡されました。
でもでも、ほとぼりが冷めたら、次はなにをしましょうか?
「サヤカ様、お顔が悪くなっていますよ!」
他愛もない悪さと言えども、度重なると女中たちの心象が悪くなるのは当たり前ですね。
それから、カエルを廊下に放したり、池の鯉をすべて、真っ赤に色直しをしたり。
そうそう、あの生意気な女中頭の部屋にゴッキーを100匹ほど送り込んだ時は、胸がスーッとしましたね。その後、イネやその他の女中たちが変な笑みをしているのを目撃しました。
「今日は、甘いものが一品多いような気がしますが、どうしてでしょう?」
「サヤカ様、女中たちからお菓子が届いております」
しばらくの間、厨房の方や女中たちから、なぜかお礼が舞い込むことになりました。
うん。やったね。
女中頭は、ほどなく辞めてゆきました。ちょっと可愛そうでした。
その後釜はイネが就くことになり、サヤカ付の侍女が変わりました。
「アカネと申します。ご存じは思いますがイネの娘です」
(恵さんへ。侍女がイネさんの娘さんでアカネという人に変わりました18歳です。それが、理路整然とした説教をぶち込んできまして、メグちゃんと目を白黒した次第です。いたずら、できないよー。でも、やさしいお姉さんでした)