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王女サヤカの思い(幸せな星)  作者: 藤村 次郎
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第5話 領地視察のお父様に付いてゆく

 さて、この世界にジャージというものはありません。ファスナーもありません。

簡単に着れて、伸縮性が良く、汗も適当に吸ってくれるものがないのです。

ボタンと言うものが無くて、男性は作務衣のような服で、腰と足元をひもでくくるものが主流です。

(うーん。ボタンとゴムひもは欲しいわね)


 家の中ではドレスではなく、どうも和が主流で着物です。

外に出るには大変で、女中が寄ってたかって着つけることになります。もう、軽やかに動くなんてできません。外で、農作業を手伝っている子供の服装を頼んでみましたが、即刻却下されました。


「お嬢様に、はしたない格好はさせられません!」って。



「お父様、今日は私を同行させていただきとう存じます。」

今日は、領地巡回の日。私は、父に同行したいとお願いしました。

「ならば、はよう支度をせい!」 父の顔に笑みが一瞬見えました。


 そう、今日は計画通り、朝からお出かけモードの衣装にしてもらっています。

素早く、小物入れを抱えて、表に出ます。


 今日は、お父様と一緒です。

馬車は、前後に向かい合わせに4人が座れるようになっており、向かい側には、お父様が座っています。

「お父様、今日はいい天気ですね。」と言って、にこっとしました。

そうそう、愛想は振りまいても損はありません。


 身の回りの世話をしてくれる侍女や女中さんも、後ろに続く馬車に乗っています。

いつもは、お父様が一人で馬を駆ってゆくのだそうですが、今日は、馬車が3台連ねています。

途中から村長と思われる人が、馬に乗って後ろの方を付いて来ています。


「今日は、東の田畑を見て回る。昼飯は、途中の東屋でとるぞ」

お父様は、時々止まっては、村長を介して作業をしている人と話をしています。


 私も降りて、周りを見渡しました。 そして、道端の野の花や、とんぼ、バッタなどを追いかけるのです。

そう、私付の女中がつかず離れずで、私の後を追って来ます。ご苦労様です。


 ほんに、のどかです。上を仰げば青い空に白い雲がゆっくりと流れています。小鳥も声もカエルの歌も。小川を覗けば、小さな魚たちが忙しく泳いでいます。


 コンビニもビルも高速道路も、何もないけれども、自然はいっぱいあります。田舎暮らしの前世を思い出して、ちょっと、ほろっとしました。


 田んぼに出ている人たちが、遠巻きに私を見ています。

「あれは、サヤカお嬢様よ」

「はじめて、お見かけするけど可愛いわあ」

私を見て、皆がほめそやすので、お父様は上機嫌。行く先々で、同様の光景が見られたようです。


 さすがに、今日は疲れました。

6歳の身体では、限界です。 帰りは、馬車の中で、クロと一緒に、うとうとすることになりました。

「お父様、今日はありがとうございました。また、ご一緒させてください」


 自室かえってから、今日の視察内容を覚書に書きました。

前世は、この世界よりレベルが高く、それはレベル6でした。

人力だけじゃなく、家畜の力や自然の力を利用していましたが、ここでは人力で耕し、田畑への灌漑は水路や桶で水やりをしています。


 文明のレベルアップは、生産や生活の向上が見込めますが、争いごとにつながる危険性を孕んでいます。まあ、今の私が率先できることでもないですし、静観ですね。

まずは、この世界を知ることが楽しみの一歩です。

不用意にちょっかいは出しませんよ!


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