第44話 望郷の病
あの、元の世界に帰りたい。お母さんやお父さん、どうしているかな?
ユズキやアツシさんは、あの事故から助かったのだろうか?
毎日が、うつうつとはっきりしなくなった。
心配したサナエが、顔を覗き込んでくるが、どうにもならない、この気持ち。
サナエさんがゆっくりと話し出しました。
「ご存じの通り、私たちはホムンクルスで魂がありません。人は魂があるがゆえに悩むことがあるそうです。私たちには、サヤカ様を見守るしか手立てがありません。サヤカ様の場合は、魂をお持ちです。魂は近づくほどに共鳴します。離れれば、薄れてゆきます。万有引力のようですね。もっとも引き合っているのが、おなかにいる赤ちゃんとお母さんだと聞いています。私たちを作られたアイリス様は、心の在り方を、事あるごとに語ってくださいました。ホムンクルスである私たちが、より魂をもつ人に近づくためにです」
「サヤカ様。私たちができることがありましたら、お教えください」
(わかっているつもりでも、なんかなあ。もやもやが取れない。元の世界でのことが、走馬灯のように繰り返し繰り返し思い巡ってくる。駄目だ!。もう嫌だ!)
そんな毎日が1か月ほど経ったある日、屋敷の西の離れに居た”おゆきさん”がやってきました。
「サナエさんから連絡があってね。サヤカさんが元気がないって?」
「すみません。遠いところを。ありがとうございます」
「サヤカさん。あたしも遥か昔を思い出すことがあるの。その時は、初代魔女さんが教えてくれた”ふるさと”という歌を歌うことにしているの。どう、一緒にうたってみない?」
おゆきさんがゆっくりと歌いだしました。あ・・。懐かしい。子供の時、よく歌っていました。
いつの間にか私もおゆきさんにつられて歌っていたのです。そして、涙が・・・・。
「おはようございます」
おゆさんが、既にテーブルに就いていました。朝起きは早いのかしら。
「おはよう。サヤカちゃん、今日はいい顔しているよ」
「ありがとうございます。なんか吹っ切れた感じがします」
「今日は、神殿にお参りしたいね。サヤカちゃんも一緒に行こう?」
サナエたちが用意してくれた、朝食を2人で食べて、神殿に向かったのです。
神殿の封印の間に入ると、初代魔女ハナが座っていました。
「えぇっ」
私は思わず声をあげました。
「ようこそ。私は初代魔女ハナです」
「4代目魔女のサヤカです。よろしくお願いします」
確かに、幽体化した神様がいらっしゃるのだから、それはありですね。
年の頃は30代後半で、落ち着いた感じの人でした。魔女の特徴である、銀色の髪と赤い瞳がこちらをみていました。
「おゆきさん、お久振りね。地上は暮らしやすいですか?」
「うん。まあまあかな」
二人の世界に入ったようなので、しばらく私はボーっとしていました。
しかし、ハナさんの後ろにある、真っ黒な扉の奥から異様な雰囲気がします。
「そうです。この奥に初代魔王サクヤが封印されています」




