第41話 アマルガ、エンダントを探して
僕たちはやってきた。
ここ。地球という星にある東京という町。
今、山手線で日暮里駅に向かっている。
失踪した、アマルガとエンダントを探して、宇宙のどこかしこを探査した。そして、この星に向かった彼女らの、わずかな痕跡を発見したのだ。彼女らは、次の目的地(逃亡中の彼女らの選択の余地はなかった)に向かったはずだ。
残像の中に、彼女らとは別の2人がターゲットを見つめていた。ひょっとしたらパラレルワールド管理局かも知れない。であれば、問題が複雑になってしまう。
そして、・次はにっぽり にっぽり・・と流れると同時に、目の前の座席がほんのりと白い光に覆われ始めた。
「よし、ジーム! いまだ! 」 僕たちは、その座席に向かって突進した。
僕は、ゾーム。ジームと一緒に、失踪者を探す依頼を10日ほど前に受けた。
「ねえ、ゾーム。この依頼の報酬には魅力があるけど、下手したら、ここに帰ってこられないかも?」
「ありうるね。でも、種族復興が叶えられるチャンスだよ。もう3万年も2人きりだよ」
その結果が、今の状況である。
魔女の家の前に、ゾームとジーム、2つの人型が現れた。
アマルガとエンダントは、ここに来たのだろうか?。探知機が反応していない。
「ねえ、ゾーム。ひょっとしなくても、ここには居ないよ。時間軸が変わっていたのでは?」
「確かに。あそこで聞いてみようか?」
「サナエさん。外に亜空間移動ポイントを使って、2人現れました。パラレルワールド管理局ではありません」
「なるほど。うーん、敵意は感じませんね」
「しかし、あれ人ですか? 陽炎のようにゆらゆらして、形がはっきりしないですね」
「パラレルワールド管理局に連絡しましょうか?」
「あ・ こちらに来ますよ」
「こんにちはー」
「お邪魔したいのですがー?」
まあ、敵意がないならば、入ってもらいましょうか。
ドアを開けて。
「ようこそ、魔女の家に」とサナエが招き入れました。
ユラユラとした2人を椅子をすすめると、器用に座ったのです。
ん!・・座ったと言えるのか?
「粗茶ですが、どうぞ」とメイドのアヤメが差し出しました。
「これはこれは、ありがとうございます」
ユラユラした形から、触手のようなものが伸びてきて、カップを持ち上げました。サナエたちは、その動きを目で追っていました。ちょっと変わった生態系の人ですね。昔ゲートを抜けてきたニカワ族は、変形自在な球体が進化したものだと聞いたことがあります。よく似た生体なのでしょうか?
「ところで、どのような件でこちらにおいでになられたのですか?」
「その前に、自己紹介をさせてください。私たちはオクトパ族で、私はゾーム、彼女はジームと申します。皆さんからは、ユラユラと形が不定形に見えると思いますが、これは特殊な服で、通常宇宙服とも言います」
「私はジーム。彼と”何でも屋”を営んでおります。この度は、失踪したタイムトラベラーの捜索依頼を受けて、この星に辿り着きました」
「こんにちは」とパラレルワールド管理局がやってきました。
今日のパラレルワールド管理局の到着は早いですね。
ゾームとジームは、食べていたお菓子を手からポロっと落として、固まっています。
(なんで、パラレルワールド管理局が、来てるんや!。やばい!)
「ゾームさん。この星の責任者である魔女が不在なので、パラレルワールド管理局に来ていただきました」
「パラレルワールド管理局のケリーです」
「同じく、時空管理係のメアリです」
「ゾームさんにジームさん。あなた方の目標時空はここではありません。この世界での時空点は2000年後です。それにしても、今回の移動は褒められません。よって、A級時空違反者として処分することになります」
ケリーの顔を見つめていた2人は、がっくりと肩を落としました。
「ただし、この星の管理者の意向に沿う形であれば、条件付きで移動を認めることが可能です」
そして、の言葉を発したメアリを凝視した2人は、大きくうなずきました。
このオプトパ族は、体長3センチメートルほどの小さな生物だそうです。今座っている彼らには、約16000体を包含しています。そして、目の前のように集合した形をとることができます。文化・文明レベルは4の上です。彼らの星は3万年前に消滅しており、ここにいる彼らは、今まで宇宙をさまよい生き延びていたらしい。
「すみません。遅くなりました。第4代目魔女サヤカです」
「これはこれは、お初にお目にかかります。私はパラレルワールド管理局のケリーです」
「同じく、時空管理係のメアリです」
サナエさんが、今までの経緯を説明してくれました。
そして、パラレルワールド管理局と魔女の家の面々で話し合った結果、ホムンクルスと合体することで、定住を許可することにしました。しかし、合体する機能を付加するには、昔この地に居た錬金術師のアイリスの力が必要です。パラレルワールド管理局は地球に出向いて、アイリスの助勢を要請しました。
アイリスと、第4代目魔女サヤカが揃ってから議論することになりました。
星歴5603年
「うーん、うーん・・・・、えーーと、これは難しい。ちょっと考えさせて」
アイリスが、柄にもなく困っている。夜空を見上げながら、どこへともなく彷徨っていきました。
夜が白々と明けるころ、フラフラとアイリスが魔女の家に帰ってきました。
「よし!これで行こう! これならばできるわ!」
アイリスが意を決したようにつぶやいた。考えがまとまったようです。
オクトパ族は、小さな個体が寄せ集まって、人型になっています。小さな個体自体は、思考能力も低いし生存能力も乏しいですが、合体することによって、レベル4まで進化することができるそうです。
小さな個体をホムンクルスに植え付けて、それらをネットワーク状に結べばよいのでは。ここまでは考え付きます。ホムンクルスも、魔素を使ったネットワークで情報を共有していますが、それはあくまで情報であって、生物的なつながりではないため、彼らが合体で獲得した進化には到底届きません。
そこでだ、ゾームを16000人作れば良いじゃないかと。ホムンクルスの脳の容量は大きい。それにゾームをコピーしてゆくと、160000人のゾームが誕生します。
ハ・ハ・ハ・・・そりゃあ、見た目は異なれど、同じ記憶、知識、思考の者が16000人。元祖ゾームは俺だ!なんてことになるのでしょうか?
幸いなことに、魂は小さな個体ごとに持っており、時間が経てば、個々に成長してゆき個性が育つと思われます。そして、魔女の星としては31000の魂が得られ、おいしい移動者です。
ここは、魔女の家の居間。
第4代目魔女サヤカ、錬金術師のアイリス、魔女の家の管理人のサナエ、パラレルワールド管理局のケリーとメアリ、魔女の家のメイドたち。そして、ゾームとジーム。
関係者、全員がテーブルに着きました。
「本人たちが同席する形で、議論したい。まず、自己紹介をしましよう」とサヤカ。
ということで、順次自己紹介を進めました。
「さて、こちらの条件を提示する。飲んでくれるならばこの星の住人として歓迎しよう!」
アイリスの説明にゾームとジームは、意外と即決で承諾したのです。
・ゾームの意識や知識を、アイリスの研究室にあるセンター脳にコピーする。
・オクトパ族の個体をアイリス作のホムンクルスに融合させる。
・脳の活動が確認されたら、ゾームの意識や知識を写し込む。
・初段階として男性10体、女性10体を目標に作業を進める。
・30日の経過観察がよければ、次に進める。
・ミズホ王国の開拓村にホムンクルスとオクトパ個体の融合装置とゾーム複写装置(以下オクトパ人化装置)を設置して、人化を進める。
・全員(31000人)が人化するには、1年ぐらいかかりそうだね。
・開拓村は、オクラ町と改名する。
「ありがとうございます。アイリス様のおっしゃる通りで、お願いします」
ゾームとジームが、感謝の言葉を述べました。
「ところで、ゾームどの、繁殖はどのような形で行われていたの?」
アイリスは、素朴な疑問を投げかけました。
ゾームは男性系、ジームは女性系で、それぞれから個体をひとつづつ出し合って、2個を合体させる。しばらくして分離することで4体を得ます。これは主に女性系の身体の中で行われます。そして、独り立ちできる100体ほどになったら、女性系の親から分離されます。(出産ですね?)
「うーん。ここまでは理解できるかな?」
分離された子供は、まあ提供した親の元で育ってゆくのです。
まあ、人間の育ち方と変わらないですね。
しかし、肝心なところを有耶無耶にして良いのでしょうか?
子作りだ。でも、アイリスである私も、サヤカも、サナエたちも経験がありません。
ということで、この話はここでお終い。
男性10体、女性10体を魔女の村に預けて、この世界の常識を身に着けてもらいましょう。うん、もちろん、子作りもね?
なにはともあれ、16000人の男の子と、15000人の女の子は、オクラ町で栄えたということでハッピーハッピーです。
さて、新たな開拓村を探しましょう。
(恵さんへ。宇宙って多様ですね。オクトパ族と言って、集合生命体がやってきたのです。彼らを、この星に受け入れることにしました。しかし、私たちだけでは不可能なので、地球からアイリスさんを呼ぶことにしました。そして、31000人のホムンクルスを用意して、分離できました)




