第10話 神様に魔法使いになりたいとお願いしました
8歳になったある日、巫女衣装の人の夢を見ました。
「汝、異世界より転生せしもの。これより能力を授ける。能力は王、戦士、魔法使い、神官のいずれかをモデルにして与えられる。汝がなりたきものを示せ。すぐには難しいであろうから、3日後に望みを聞こうぞ。」
と、言って消えたの。そして目が覚めました。
(夢なのか?。本当ならば、私はこの世界を楽しめるのでしょうか?)
つい、ニマッとしてしまいました。
(そうね。『王』は自由が無い。家臣を無碍にすると反乱が起きるし、付き合いも面倒くさい。何でもできるなんて思う人もいるが、あんな窮屈そうな役目は嫌だ。まあ御免こうむりたい。
『戦士』はかっこいいな。でも仕える身も上役が良ければと思うが、自由が無い。それに、毎日稽古だ、実践だ、魔物狩りだなど、死と隣り合わせだ。死にたくないし、とにかく痛いのは嫌だ。
『魔法使い』。これはちょっと興味があるな。自由気ままな人生が過ごせそうね。ただ、魔力量の制限や難しい呪文は勘弁してほしいわ。
『神官』、これはないわ。場合によっては人の上に立って説法をなんて、そんな柄じゃないし、面倒なのはいや!。
ということで、『魔法使い』にしよう。付加能力など整理しておこうかな)
4日目の朝。
「何になるか、決まりましたか? 4つとも選ぶこともできますよ。王であり、戦士であり、魔法使いであり、神官でも。それと、私の横にいらっしゃるのは神様です」
(いや! 待ってー。確かにモデルであって、一つしか成れないとは言わなかったっけ・・・?)
「魔法使いで、お願いします」
「あいわかった。欲がないのお! まあ良い。それでは魔法使いの能力を与えよう」と光る物体が言った。
「あのー。いくつか希望を聞いていただけますか?」
「いいよ。 何でも聞いちゃうよ」
(軽そうな神様なのかな?。まあ良いか)
「では、思いつくことが、魔法で出来るようにしてください」
「おぉ・・それは、おもしろい。叶えよう! *****。これからはこの星の者たちを豊かに、そして安寧に努めなさい。では、また逢う日まで」
ということで、一段落しました。
私は、ひょっとして、とんでもないことを叶えてもらったのでは?。
巫女衣装の人が、
「とんでもないことを、お願いしたのですね。でも、神様が見かねたら、排除されますから気をつけてくださいね」
「あのー。『神様が見かねるかも?』と思われたら、連絡貰えますか?」
「良いですよ。では、モニタリングするために従者を付けます。ごきげんよう!」
と、目が覚めました。
そして、横には2年前に迷い込んできた黒い猫が、じっとこちらを覗きこんでいます。
ああ・・・この猫が従者なのか。
「きみ、名前は?」と一応聞いてみました。それまで『クロ』と呼んでいましたので。
「ジジと呼ばれている。今まで通りクロでもいいよ」と猫がしゃべったのです。
「うん。じゃあ、ジジでお願い。それにしても君はずっと私の側にいたよね」
「うん。それが使命だったので。名前はジジでOKだよ」と言いました。
私はファンタジーものが好きで、本を買い求め、映画もしらみつぶしに見てきました。ところがラノベというジャンルが出来てインターネットで、誰でもが作って、読めてという時代がきたのです。中でも異世界物は、面白く想像を掻き立てられるものでした。それまでは小説家と呼ばれる人の作品が当たり前で、もう年寄り臭いものでしたね。そのところ確かに素人で、まったく文章も下手、整合性もちぐはぐのものもありますが、発想が面白いのです。どろどろ、ぬるぬるしたものをスライムと称して、取り扱った冒険ものは面白かったですね。
さて、そういう世界に、わたしは転生してきました。魔法が使える世界なんです。そして、私は王女様。今までの、普通の女の子ではありません。容姿端麗、魔法使い放題。でも、悪いことはしませんよ。
これからの展開にワクワクします。
魔法少女って色々ありました。子供の時は憧れました。
あっ! 今でも子供です。やりたい。呪文を唱えて、くるくると回って、杖で”えぃ!”って。
精神年齢18歳なのに、恥ずかしい。でも、身体は子供。恥ずかしがることもありません。
うん!。ない!。ない!。
「ジジ、魔法を唱える時は、決まった呪文とか形、杖、服装などある?」
「ないよ!。自由にどうぞ」
そう、星型のエンブレムを先端に付けた、スティックを作ったのです。そして呪文も。
「ジジ、見てくれる!」
スティックを掲げて、変身を唱えると、真っ白なワンピース風で背中には小さな白い羽が生えてます。そして、くるっと舞いながら
「タマスカール ハルマカール 大きくなーれ! ニャン」
と唱え、ジジにスティックを向けました。
おっー。何とジジが子牛ほどの大きさになりました。
「サヤカー・・、戻してよー、早く」
「ねえ、ジジ どうだった。素敵と言って!」
「・・・・・」
その後、何度か練習したのです。
まあ、”大きくなあーれ”と、頭の中にイメージを描けば、それで発現できるのだけども。
可愛くやりたいのです。
(あのー、本当に精神年齢は18歳なの?)
(恵さん。今日はとんでもないお誘いがありました。王、戦士、魔法使い、神官のいずれかになれると夢の中で巫女風の人に言われたのです。答えは魔法使いにしました。それと、猫がしゃべったのです。まあ、この世界はファンタジーだと思いましたが、これは事実でラッキーなことですね)




