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【連載版】鳩時計の裏っ側 二次  作者: 滝翔
第四弾 サンタ・ク・ローズの奇跡
27/41

3


「それにしても兄貴!!

猫界の頂点から退いたと思えばまさかサンタをやってたなんて……

いつも兄貴は俺らの予想を遙かに上回っていてパネェッス!!」


「成り行きだ馬鹿野郎が……

二人でそこの製造機の入り口に寒天粘土を入れてくれればいい」



「「 分かりやしたぁ!!!! 」」



アオがまだ野良の世界にて 肩で風を切っていた時代

いつでも後ろを付いてく舎弟が茶トラのテンザンと柴トラのコジマだった

アオがミオ宅にお世話になってからは疎遠になっていたものの

一言声を掛ければ すぐに集合する様は猫に似つかない忠誠心を持つ者達だ


「よし製造はアイツらに任せて行くぞナカイ!!」


「手伝ってくれてホントに嬉しいよアオさん……!!」


「範囲はこの街だろ? だったら土地勘で俺に勝る者はいねぇ!!」


平面を歩いてきた猫は空を渡るトナカイよりも地続きを感じ得るのだ

ここら一帯で幅を利かせていたアオにとって特定の所在など朝飯前

というより餌を貰える民家とそうじゃないのとで区別していたから尚更だ


シャンシャンシャンシャン♪ シャンシャンシャンシャン♪


赤白ストライプのタンクトップを扮装するアオサンタは

ナカイから繋がる手綱を肉球で抑えて出発した

巨大な手で押し上げられる様な軋みを響かせて

宙へ浮くソリは夜空目掛け 速度制限を守りつつ走行する


「今回は飲食系の注文が少ないな」


「稀なケースだからねぇ 基本的に玩具や人形が主ですよ

一年に一度 プレゼントが貰える日だから欲に忠実なのは仕方がない

……それに実は食い物類のプレゼントは一つだけ既に袋に積んであるんだ!!」


「ふぅん…… にしてもこの服は着る必要があったのか?」


「可愛いじゃないか!!?」


「引っ掻くぞてめぇ……」


「雰囲気作りですよ!! 幻想的な職種は形を拘らないと!!

それに冬の寒空は舐めちゃいけない 防寒対策も相まってるのさ!!」


一匹より二匹 ソリを引いている間の他愛ない会話も

幸せそうに堪能するナカイを見てアオも付き合って上げていた


一件目の民家に降り立つと

さっそくアオに疑問符が浮かんだ


「どうやって中に入るんだ? 煙突からか?」


「それは神話時代のお話 今はこうスッとね!!」


なんとアオは二階窓の障壁をすり抜け

一瞬にして子供部屋に辿り着いたではありませんか


「空飛ぶソリといい…… どうなってんだ……」


謎が増えていく一方の中

おつむが足りない普通の猫は取り敢えず長靴の中にプレゼントを納めた

そして再びソリに乗り カラクリを問うもナカイはお決まりのはぐらかし


これを繰り返して四件目も無事に届け終えれば

ナカイの提案により一時帰宅することになった


「五件目はいいのか?」


「それはご存じアオさんの〝飼い主さん〟宛なので

アオさんが帰るついででよろしいかと?」


「あぁ…… 一番先に届けに来るのが本来ならミオんとこだったのか……」


「その節はホントに申し訳ないです……」




ナカイの家の玄関先には

残り五個分のプレゼントとその上に香箱座りしてドヤる二匹の猫が

仕事しました感満載で待っていた


「出来ましたぜぇ兄貴!!」


「リスト通りの物がちゃんと作れたと思うっす!!」



「ご苦労だったなお前ら 礼は後日するから今日は解散だ」



お尻を高く突き上げて背伸びする舎弟猫二匹は

まるで残業から帰る会社員の如くノソノソと去ろうとする


「お役に立てて光栄でした兄貴ぃ!!」


「この感じ懐かしいですよねぇ~~……

〝マダラ〟が来てからは人間臭くなって張り合いがねぇって言うか」



「マダラか…… あの野郎は今どうしてるんだ?」



「統治国家ですよぉ!! 弱い猫にも均一に餌を分け与えるとか……

うぅ~~!! 思い出しただけでも毛が逆立ちますわ!!」


「野良の世界なんてそんな甘くないってのに……

自分もそういう立場だったのか躍起になってるっすよね~~」



「そうか…… まぁ当分俺は戻る気はねぇから お疲れ!!」



「「 おつかれさっしたー!! また呼んで下さいねぇ!!!! 」」



助っ人達の役目は終わるが

残されたアオとナカイは出来上がった物を届けなければならない

再度ソリにプレゼントを載せていざ冬の夜空へ


「アオさんはお仲間さん達に愛されているんですね」


「仲間っていうか取り巻きだな」


「……羨ましいです」


「取り巻きが居ることがか? じゃぁお前もボスになればいいじゃねぇか?

その図体なら猫の世界で一番取れるぜ?」


「いいえ 慕う存在がいるということにですね」


「……?」


この後も六件目七件目と無事に配達は滞りなく済ましていき

最後の九件目を終えてミオ宅に向かおうとした時

二匹は予期せぬ事態に巻き込まれてしまう




〝 なぁナカイ…… お前…… 俺に嘘付いていただろ? 〟



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― 新着の感想 ―
[良い点] ふるさと納税の例えに爆笑! すごいシステムになってるんですね!もっと疑問に思っていいはずなのに「へーそうなんだ」ってなってしまうのはナカイの力?! [一言] アオが…人望ある仕事できる人(…
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