結
「俺の気持ちを伝えられなかったのが悲しかった……!
だってミーナ…… 急に死ぬんだもん……」
「チュー……」
「心を開いたのに…… 周りの景色が美しく見えた途端に……
俺が抱いてたのはお前の亡骸だった……
しっかり供養したさ…… 優しいだろ俺……!
その時からヤザジクナッタンダヨ…… オレ……
喧嘩もしていないし! お前の夢だったオシャレな場所にも住んでるんだぜ?!
ナガマ…… 仲間も恵まれて……
人間なのにミオお嬢さんとも仲良くして貰って……
お前の夢を…… お前の夢をぜんっっぶ叶えてやったぜ!!」
「うん…… うんそうなんだね……」
「……なのに ……なのに俺の前から急に居なくなりやがってぇ!!!!
全然満たされないんだよ!! 誰かが死んだ程度で心に空いた穴が塞がらないんだよぉ!!
……そう気付いた時にはもう ……遅かったんだよぉ」
「……」
「うぁぁぁぁあああああああ!!!!
ごめんミーナ…… もっと早く……
もっと早く今の自分になれなくて ごめんなさい……!!」
「……勘違いしているよチュー」
「っ……」
ミーナはチューを再び包んで上げた
目から溢れ出る涙を 彼女は自分の顔を押し付けて
それ以上 悲しむことの無いようにせき止めてくれた
「私は今も幸せ…… だってあのチューが私とデートしてくれるんだよ?
覚えてる? 私と一緒に中心地まで行って花柄のワンピースの布を一緒に探してくれるの」
「あぁ…… 覚えている 忘れる筈がない」
「……この意味分かる?」
「……」
チューはハンカチで涙を拭き 少しだけ冷静を取り戻した
「じゃぁ君は……」
「フフッ! 初めてになるのかな…… チューに守って貰ったの」
「ハァ…… ハハハ…… こんなことって……」
ミーナの抱き締める力が強くなったのを感じた
それと同時に懐かしい温もりが離れていくことも
「ありがとうチュー! ずっと大好きだからね!!」
「ミーナ……」
彼方へ去る光の粒が 別れの秒針
その顔が見えなくなる前に 最後には今の自分を精一杯 これでもかと
「僕も大好きだからね!! ありがとうミーナ!!
もう大丈夫…… いつものように 笑ってる自分で皆と未来を進むよ!!」
「うん……!!」
不意に握り合っていた手は放たれて
ミーナは消えていった やっぱり僕らは気が合っていたのかな
そう想わせる互いの最後の一言は 不思議と重なった
〝 愛しているよ…… いつまでも…… 〟
目が覚めると何てこと無い
ホワイトレディーの鳴き声も聞かず仕舞いで朝を迎えていた
「行ってきます!!」
ミオの元気な声が家中に広まる
いつも通りの日常が始まったのだ
ただ一点 バス停に向かうミオをヒッソリと追うアオの姿が
「いつからあんなに心配性になったんだアオ君は……
まぁ頼もしい限りだけど……」
チューは枕元に敷いていた水色のチョッキを手に取る
そして特に何もせずにタンスの中に閉まった
それからはお察しの通り 12回目のハトの鳴き声を待ち遠しく
再び眠りに就くのである
今度は疲れない 普通の良い夢を見る為に
場所は代わって 保育園の門前
登園して来たミオを待っていたのはシルバー
「おっ…… おはよう」
「……」
ミオは無視をする
周りには茶化す気満々の同級生達が待機しているが
不思議と夢の世界で出来なかったことが
今なら出来る気がする そんなポッと出の勇気が
いつの間にか備わっているものだ
「ごめんミオ!! ついでに玄関まで一緒に話して行かないか?!」
「……」
「駄目か?」
「エッヘヘ…… シルバー君見てたら思い出しちゃって
あんな大きくて怖くて強い怪物に立ち向かっていたシルバー君……
カッコよかったよ!」
「……ヘへ そっ そうだろぉ!!」
二人だけの秘密の冒険
それはミオにとっても そしてシルバーにとっても貴重な時間の一端
互いの成長は夢の世界があったからか それともゲームっぽかったからか
たった一日で距離が縮まった二人を 同い年の子達に理解される筈も無く
だけどミオとシルバーにとっては確かな物語
そんな喜ばしい成長を見て不満を抱えている
もはや妬みに感じている性悪猫ちゃんが一匹
こちらを見つめていて
「チッ…… 相変わらず女の扱いがなってねぇな」
と鳴いているアオも 普通の日常に戻ったのだった