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煮物からソリティアを考える

作者: 水酸化カリウム

職場には定時に余裕をもって着くようにしている。オフィスに入ってから自分のデスクにたどり着くまでに何人かのデスクの隣を通るのだが、最近気になることがある。


職場ではフレックス勤務を採用しているので、出社時には既に多くの人がデスクのパソコンに向かっている。朝、通り過ぎるデスクのモニターに目をやると、隣の部署の主任が必ずソリティアをプレイしているのだ。


毎度それがとても気になる。

なぜわざわざ会社でやるのか。なぜソリティアなのか。


主任がプレイしているのはごく普通のスパイダーソリティアだが、個人的にはそんなに面白いと感じない。私はソリティア系でいうとフリーセル派だし、マインスイーパの方がもっと好きだ。


小さい頃、親戚のおじさんがパソコンでゲームをするのを隣で見ていた。当時は画面よりもパソコンそのものに興味を惹かれていたものと推測するが、その時プレイしていたのもスパイダーソリティアだった。


主任の年齢は定年間近といったところだが、年を重ねると奥深さや味わい深さが分かるようになるのかもしれない。


さらに高校生の頃の教師が、お前たちも大人になったら煮物のうまさに感動するときが来るんだよ、と言っていたのを思い出した。どうやらここにヒントがありそうである。


煮物のうまさが分かるようになる、という変化はつまり煮物を食べる我々の味覚の変化だ。ここに年齢も関係していそうである。なぜそんな変化が起こるのか。理由を2つ考えた。


1つ目。様々な味を知り尽くし、世の中の料理を一通り味わった者の極致という説。様々なテレビ番組で高級料理を食べている中尾彬の最も好きな食べ物がガリガリくんであるように、やっぱり結局は煮物だよな~という感じなのかもしれない。経験から導かれる至高。


私の倍以上の人生を生きている主任なら、私の知らない味を知っていても何ら不思議ではない。だとしたら主任はもともと相当なゲーマーである可能性が出てくる。


この説は、かの伝説的ゲーマー・ウメハラがソリティアを推し始めることで立証される。


2つ目。本当は肉や揚げ物といったこってり系が好きだが、体の消化機能が追い付かなくなり、消去法で煮物が繰り上げ1位になるという説。これは単純に老化である。年を経るごとに身体的能力が劣化し、本当はやりたいゲームがあるのにプレイできなくなっているのだ。


主任はゲームが好きだが、プレイできるゲームの中でソリティアがトップになるほど体はボロボロなのかもしれない。こちらの方が有力な気がしてきた。


この説はウメハラが、最近ゲーム疲れる。ソリティアがおすすめ。と言い出すことで証明される。


以上のことから、主任はゲーム好きであることが推測される。また、副次的なものだがウメハラがソリティアを推すようになった場合、その原因がどちらの仮説によるものなのかは判断できないことが分かった。あるいは、両方の要因が重畳した結果なのかもしれない。


ここまでソリティアをプレイする側、煮物を食べる側の我々の変化について考察を加えてきたが、ソリティア・煮物の方はどうなのだろうか。もし過去よりも面白く、おいしく変わっているのなら、上記のように感じるのは当然である。


時代とともに煮物の味が改善されているのだとしたら、現在の我々は過去最高の煮物を口にしているはずである。煮物の味は作り手の腕に左右されるため、これは煮物を作る側の努力のたまものといえる。


同様に,ソリティアも過去と現在では多少変わっているのかもしれない。そう思って先程数年ぶりにプレイしてみたが特に変わったと感じる点は無かった。普通だった。


いや、主任なら変えられるのかもしれない。ソリティアのプログラムをいじり、自分好みの味付けに変えているのかもしれない。主任がハッカーである可能性が浮上してきた。


先述の親戚のおじさんの例を考慮に入れると、ソリティアで遊ぶ世のおじさんたちは須らくプログラミングに明るいのではないだろうか。


さらに高校教師の言葉の意味を考えると、時間とともにプログラミングを習得し、ソリティアでできることが増えるから年を取ると面白くなるということか。


そうなると主任のモニターに映っていたものはソリティアに見えてじつはもはや別物といえるゲームなのかもしれない。


この文章を書いているうちに別の可能性が思い浮かんできた。実は面白いからではなく、単なる見栄からソリティアをプレイしている、という説である。


高校教師は自分の中に、煮物をうまいと感じられる大人(=自分)はシブくてかっこいい!という価値観をもっていたのだ。一方主任は、朝からソリティアをプレイする自分、知的でカッコいい!と思っている。


もしそうだとしたらその価値観は私にはよく分からない。先日見たときは初級をプレイしているように見えたが。


ここまでの推測で、主任の人となりがある程度掴めてきたのではないだろうか。

・相当なゲーマー

・老化が進行している

・プログラミングスキルがある

・よく分からない価値観を持っている


以上はあくまで可能性の話であり、本当かどうかは分からない。


一応主任の名誉のために断っておくと、定時外なのでソリティアで遊んでいても特に問題はない。と思う。


主任に偏った先入観がつきそうなのでここまでにしておく。


※この作品は「カクヨム」にも投稿しています。

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