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最終話 世界が平和になっても異世界生活は終わらない

 唐突だけど、魔王軍が壊滅したらしい。

 信頼できる筋からの確かな情報ということで、朝から町中が大騒ぎ。

 私たちは部屋の窓から、慌ただしくお祭りの準備を進める町の様子を眺めていた。


「魔王軍が壊滅するなんて、ビックリなのです」


「ほんとよね。あたしたちがいた頃なら考えられないことだわ」


 もしかしなくても、この二人が抜けて魔王軍の戦力が大幅にダウンしたことが壊滅の原因だと思う。

 元を辿れば私がパアルちゃんから魔王の力を貰ったのが始まりだから、世界平和に貢献できたと誇ってもいいのだろうか。

 それを言うなら、私を召喚したパアルちゃんが一番の功労者ってことに?

 まぁ、細かいことは気にしないでおこう。


「せっかくだから、これを機会に世界中を旅してみたいなぁ」


 いままでは魔王軍の脅威を避けるために封鎖されていた場所が多かったので、これからは気兼ねなくいろんなところに出かけられる。


「賛成なのです。気になっていた食べ物を片っ端から食べに行くのです」


「あたしも賛成だけど、あんたって見かけに寄らず食いしん坊よね」


「見ての通り、育ち盛りなのです」


 誇らしげに胸を張るパアルちゃん。

 未成熟な幼い体には成長の余地しかない、という考え方もできる。

 ひとまずここは、あえて発言に触れないのが優しさというもの。


「いつ出発する? 三日後ぐらい――って、さすがに早いかな?」


「そんなに待てないのです。荷物をまとめてすぐに出発するのです!」


 と言いもって、パアルちゃんは露店で買ったアイテムポーチにいろいろと詰め込む。


「なにちんたらしてるのよ。ほら、早くしないと置いて行くわよ」


 フェニックスちゃんに至っては、すでに扉の前で待機している。

 二人とも、善は急げという言葉を体現するかのような行動力だ。

 私も急いで支度を済ませ、最後に屋台で食べ物を購入してから町を出る。


「とりあえず、あっちに行くのです!」


 パアルちゃんが遠くに見える山を指差し、元気よく告げた。


「あそこになにかあるの?」


「炎竜フレイリュードが生息してるのです。尻尾を切り取って、レーナに食べてもらうのです」


「あ、前に話してたよね。確か、薄切りにして炙るとおいしいんだっけ?」


 あらゆる生物を見境なく捕食する凶悪なモンスターだから、流通には乗らないらしい。

 以前、始まりの町に向かう道中で教えてもらった。


「火ならあたしに任せなさい! 最高の焼き加減で仕上げてあげるわ!」


「フェニックスの唯一の特技を発揮するチャンスなのです。失敗したら罰ゲームさせるのです」


 賑やかな話し声を辺りに響かせながら、私たちは軽い足取りで先へ先へと進む。

 目的の珍味を味わったら、きっとすぐに次の場所を目指すのだろう。

 楽しくて騒がしい異世界生活は、まだまだ始まったばかりだ。

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