晴夜編
――イフセカイ――
青空の下、見慣れた公園の入り口に佇んでいるのは、十代半ばくらいの少女だ。
時折、携帯電話で時刻を確認したり周囲を見渡しているのは、誰かが来るのを待っているようだ。
しばらくそうしていた彼女は、やがて走ってくる少年に気が付き、「おそいよ~~!」と頬を膨らませた。
少年は切れた息を整えながら、「ごめん、ちょっと寝坊した」と謝った。
「まったく……初デートなんだよ? 分かってる?」
怒った顔もちょっと可愛いなと思ってしまう少年は、「わ、分かってるって……」と肩を竦めた。
家が隣同士の彼らは、つい最近までは幼なじみという間柄だった。
それが、高校生になったのを期に少女は告白をして、はれて恋人同士になったのであった。
そして、今日の初デートになったわけである。
待ち合わせならどちらかの家の前でいいというのに、わざわざ近所の公園にしたのは、その方がデートらしいという彼女の希望だった。
「うふふふ、なら許してあげるね?」
楽しそうに笑うのを見ていると、この少女と恋人になれて良かったと思えた。
「あーまー……それはいいんだけどな……」
言いながら振り返った少年の視線の先には、路肩に停車している軽トラックがあった。 しかし、それがどうしたのかなと首を傾げるのと同時に「……ずっと付けて来てたんだろ?」と呆れた声。
「……ったく……春香に立夏、姉さんに千秋もだ!」
よく知る名前が跳び出したのに「……え?」となった少女は、続いてよく知る人達の驚きの声を聞いた。
「……やれやれ。 私の備考に気が付くか、成長したな?」
軽トラックの陰から現れたのは、初雪 冬子という彼女らの幼なじみにして担任の教師である女性だった。
「あははは……ごめんごめん」
「二人の初デートだったから……つい……」
同い年の幼なじみの雨空 立夏と青空 春香も苦笑いをしながら出て来る。
「もう……だからみんなで行ったら気が付かれちゃうって言ったじゃん……」
最後には妹分の芙蓉 千秋までも出てきたにの、「えっと……これって?」と困惑してしまう、少女――星空 四季だった。
「俺達のデートをみんなして冷やかしに来たんだよ……」
備考には気が付いていたが。いくら何でもデートの邪魔をしないように適当なところで帰ってくれると思っていた少年――天野 晴夜である。
「冷やかしではないぞ、幼なじみとして見守るつもりだったのだ」
悪びれた様子もなく言う冬子の態度に、呆れはしても怒りはないのは、理由はどうあれ悪意がないのが分かっているからだ。
「大丈夫だって、別にせーやと四季ちゃんの邪魔はしないからさ~」
「うん、立夏ちゃんの言う通りだから……」
「あたし達も付いて行っていいでしょう?」
単純に幼なじみ同士の恋の行方を見守るという気持ちはあるのだろうが、それ以上に面白い見世物と言うか娯楽のように思っているのは間違いないだろう。 そんな事をしてる暇があったら自分達も彼氏を探せばいいのにと思う。
何にしても、このままではいつも通りにみんなで遊びに行くのと同じになり、四季とのデートどころではなくなるという危機感を覚えた。
だから、「行くぞ四季!」と恋人の腕を掴んだ。
「……え? ちょ……晴夜くん? 行くって……どこに?」
困惑した様子で頬を少し赤くしている四季に、「どこでもだよ!」と答えて駆け出せば、戸惑いながらも一緒に走り出す四季の表情は楽しそうでもあった。
「あ、こら!」
「晴夜君待ってよ……」
「いいじゃん、減るもんじゃないし!」
「そうだよ~!」
抗議しながらも、追いかけてくる気配のない少女らの声を背に受けながら走る晴夜は、大好きな友達と恋人と共に生きる未来は、きっと幸せなものになるだろうと信じているのであった。
終
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