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シーン9



             ――3月27日――

 

 ベッドに寝そべりながらテレビのバラエティー番組を眺めている。

 リビングのテレビに比べれば二回りは小さいこれは、どちらかといえば番組を鑑賞するよりもテレビ・ゲーム用に買ってもらったものだ。 ちなみに俺の好みは正統派なファンタジーRPGだ、アクションや格闘ゲーム……それに快斗の好きそうな美少女ゲームも少しはプレイもする。

 「……立夏が帰って来た……か……」

 その事自体は嬉しい……ただ、それだけにあの子が――星空 四季がどれ程遠くに逝ってしまったかを痛感してしまう。 小学生にしてみれば二つも三つも離れた県は遠すぎるものだが、それでもこうして再会出来るのだから。

 幼稚園から小学校に上がる頃に両親を交通事故で失い俺の家族になった女の子、その四季もまた交通事故で死んでしまう……しかも俺のせいで、俺の身代わりになってだ……。

 「分かってはいる……四季に助けてもらったこの命を自分から捨てるわけにはいかない……」

 言葉にして口に出してみると、どこか言い訳めいていると感じた。 本当は人を一人死に追いやっておいて、自分は死ぬのが怖いだけでそれを四季のせいにしているのではないかと。 そう思ってしまうと自分がひどく醜い人間に感じてきた。

 『……したらな、その恋人は言ったんや。 ”あんたとの婚約なんて解消や!」ってな?』

 不意にテレビから聞こえてきた声にギョッとなって思考は中断された。 液晶モニターへと目を向ければ、そこでは二人組の男が漫才を披露していた。

 「……婚約……か……」

 男女が将来結婚しようと約束する事、ゲームや漫画ではちょくちょく聞くが、現代日本の一般市民には全くとは言わないがほとんど縁がない言葉だろう。

 しかし、俺には婚約者がいた……いや、婚約者がいる。 それが星空 四季という少女だ。 もっとも、親同士が決めた許嫁とかいうのではなく、子供同士の単なる口約束でしかなかった、それでも当時の俺にとっては……いや、今でもその約束は大きな意味を持っていた。

 それはきっと四季が間違いなく俺の初恋の女の子であり、その初恋が終わらないまま俺の前から永遠にいなくなったからだろう。 もしも、お互いに成長していき、互いに初恋の相手だった・・・友達に戻っていたとしたら、この想いは幼い頃の綺麗で淡い思い出でしかなかったと思う。

 あるいは、俺がもっと成長し大人になった時には今のこの想いもなくし、四季の存在も心の奥底へと封印されて別の女の子と恋人になってるのだろうか?

 そうなりたいとは思えない、それは俺にとってはひどく怖い事だった。 自分が誠実な人間だとは思わないが、それでも自分の身代わりになってしまった女の子との約束を裏切る程に酷い男になりたくはない。

 「ほんと……ゲームにみたいに人を生き返らせる魔法やアイテムがほしいよ……」

 思わずつぶやいていた言葉に、俺もまだまだ子供だよな……と思った。

 その直後に携帯の着信音が聞こえたので起き上がってベッドから降りると、机の上にある携帯を取った。

 「もしもし……姉さん? どうしたの?」

 『ああ、明日の花見だがまだ場所を伝えてなかっただろう?』

 そういえばそうだった。

 『立夏達にも伝えておいてくれよ? 場所は……』

 次の瞬間、冬子姉さんの口にした場所に「……はぁ!?」と俺はつい素っ頓狂な声を上げてしまっていた。


         

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