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シーン10




              ―11月22日―

 

 この日、私は自宅に春香と立夏、そして千秋を招いた。

 リビングのテーブルで待つ三人に紅茶を用意して彼女らの前に置き、そして最後に私も席に着く。 要件は伝えていないがだいたい予想は付いているのだろう、少し緊張した面持ちで私に視線を向けてくる。

「……さて、それでは私の”答え”を伝えよう……とはいうものの、以前にも言った事と大して変わらないがな。 私にとってあいつは、晴夜は”弟”だ……あいつの方が私をどう思ってるかは分からんがな」 

 十中八九あいつも私の事を”姉”としか思ってないだろうが一応は言っておく。 

「あー冬子姉ぇは美人だししっかりしてるし……あり得ないとは言えないよねぇ……」

「言う程でもないがな立夏……」

 肩を竦めてみせてから、「まあ、今はそれは問題ではないからな」と続ける。

「どうしてなの冬子お姉ちゃん?」

「春香と立夏が自分の気持ちを晴夜に伝えるのだからな、あいつが好きなのが私達の誰かなのか、あるいはまったく別の女の子なのかは問題ではないという事だよ千秋」

 千秋は「あーそうなんだぁー」と納得したが、実際のところはそうでもない。 もちろん、千秋に対して嘘を言ったわけではない、晴夜の好意の対象がこの世界に生きている女の子であれば言ったとおりだ。

 しかし、それが死者であった場合は……。

「そうですね、晴夜君がわたしや立夏ちゃん以外の女の子を好きでも……晴夜君が幸せになる・・・・・ならそれが一番ですから」

 立夏も「そうだよねぇ……」と頷く、そんな二人の表情に影があるように見えたのは、私と同じ不安を抱いているからだろうか……。

「そういう事だからな、後は二人の思う通りに行動するといいだろう……と、言いたいのだがな、その前にやる事があるらしい」

「……らしい?」

聞き返してきた立夏だけではない、春香も千秋もどういう事?という表情をしている。

「……永遠さんがな、私達が前に進むために必要な事があるとな」

 当然、「必要な事って?」と聞かれたが、私はそれに対して「すまない、今は説明出来ないんだ……」と答えるしかなかった。 それは私自身も完全にはあの人の話を信じ切れていないくらい途方もない内容と言うのもあるが、だからといって妹達に適当な嘘で誤魔化す事も出来なかったからだ。 

 三人共どう考えていいものか迷っている様子だ。 

「どうしようか……?」

 私達の中では立夏は一番あの人との付き合いは短い、だから一番困惑しているように思える。 そんな立夏に「どうしようって言われても……」と春香。

「千秋はいいと思うよ」

 しかし、千秋はまったく戸惑いを感じさせない声で言った。

「良く分からないけど、冬子お姉ちゃんはおばあちゃんを信じたから千秋達に言うんでしょ?」

 戸惑い気味に「ああ……」頷くと、「だったら千秋はお姉ちゃんを信じるよ」と言い切ったのだ。

「……そうですね、永遠さんもですけど……わたしも冬子さんを信じます」

「うん、ボクも信じるよ」 

 春香に続き立夏もそう言ってくれるのを嬉しい事と感じると同時に、彼女らの姉であるという事のプレッシャーも改めて感じた。 

 大人として教師として誰かの信頼に応えねばいけないが、自身がそれ程に優れた人間であるとも思っていない。 だから、もしもその信頼を裏切ってしまったらという怖さがあるのだ。

「ああ、私に任せてもらっていい」

 しかし、それを見せるわけにはいかないと思うのは、教師として大人として……何よりみんなの姉としてのせめてもの矜持だった。

 


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