シーン8
―11月20日―
最期のテスト時間の終わりを知らせるチャイムが鳴り先生がテスト用紙を回収し終えて教室を出て行くと、大きく息を吐いた。
「は~~~やっと終わった~~~!」
見れば立夏が机に突っ伏し、「ふふ、お疲れさま」という春香の労いの声を聞いた。
まだホーム・ルームが残っているが、ひとまずテスト期間が終わったという安堵と解放感を心地よく思っていると……。
「……晴夜、部活は火曜からだったよな?」
……と、快斗が確認してきたので「ああ、そうだ」と答える。
「ボクとしてはパーっといってもいいんだけどね、冬子姉ぇを仲間はずれには出来ないしね?」
「わたし達はいいけど、冬子さんはこれから採点作業だしね……」
立夏が肩を竦め、春香が苦笑する。
「そっか、じゃあ俺は今日はさっさと帰るか……」
「ん? ああ、例の新作ゲームか?」
「そういうこったな」
快斗の好きな恋愛ゲームの新作が一昨日くらいに発売だったはずだ、おそらく購入済みだろうが、流石にテスト前のプレイは控えていたのだろう。
そんな快斗の真似というわけでもないが俺も中途半端で放置していたゲームをクリアしてしまおうと考えたが、不意に別の事を思い付く。 テストも終わりまた部活が再開する前のこのタイミングなら、あの心配事を相談してみるにはいいのかもと思う。
四季の怨霊が……いや、魂は成仏していなくて俺に取り付いているのでは……という不安だ。 問題は誰に相談するかという事だが、父さんや母さんはあまり霊現象を信じる方ではないし、快斗やこの二人の少女はもちろん、姉さんにも話辛い。
もちろん、霊能力者みたいな人の知り合いも……と、そこでとある顔が思い浮かぶ。
「……せーや?」
「ぼーっとしちゃって……どうしたの?」
不意に現実に引き戻された俺は、「……ん? ああ、俺は帰ったらどうしよかなってさ?」と誤魔化した。 それに二人が納得するのを見ながら、これから急いで行く事もないし明日でいいかと考えたのだった。
――――――
職員室へ向かう廊下の途中で「……普段通りと言えば普段通りだったが……」と思わず呟く。
テスト終了後のホーム・ルームを終えた生徒達はどこか解放感がある、その気持ちは私にも理解出来るし、どこか懐かしさえ覚える感情だ。 それは私の可愛い”弟”も同様で、先日に感じた影は今日は全く感じなかった。
「私の気にし過ぎだったのか……それならそれでいいか……」
生徒達にとってはひとつの終りであっても、教師である私にはまだ採点作業があるためむしろ大変なのはこれからだ。 しかし、大人であればそれを仕事と割り切るしかない。
「……しかし、そろそろ頃合いか……」
春香達に対する答えをだ、永遠さんが言っていたように結論を急ぐものでもないが、いつまでも引き延ばしてもいけない。 どんな結果になるにせよケジメは付けなければ人間は未来へとは進めないだろう。
「……とはいえ、まずは私も採点作業を終わらせないとな」




