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シーン2


                ―11月10日―


「……いかんな……」

 リビングのソファでテレビを見ていていつの間にか眠っていたようだ、身体を起こしながら壁掛けの時計を見上げると午後六時を少し回っていた。

「……休日とは言えダラダラし過ぎか……」

 今年も僅かという時期もあってここのところ少し忙しかったから疲れも少し溜まっているのかも知れないな。 リモコンを見つけてテレビを消すと、「さて……」と私は考え込む。

 本当であれば適当なところで買い物に行くつもりだったのだが、夏場と違い外はすっかり暗くなっているし、冷たそうな風の音も聞こえているとそれも少し億劫になる。

「冷蔵庫に何かあったか……?」

 子供の頃から過ごして居るこの家には今は私一人しかいないが両親が亡くなっているというわけではない。 どういう気まぐれかは知らないが何年か前に父さんが田舎暮らしがしたいと言い出し母さんもそれに付いて行ったのだ。

 もちろん私も誘われたが断った。 仕事もあるし、何より晴夜達の成長をまだ見守っていたいからだ。 

 そんなわけなので人並みに自炊は出来るようにはなってはいる、まあ……春香には及ばないのが少し”姉”として情けなくはあるが……。

 青空あおぞら 春香はるか……彼女は料理に限らず家事スキルは高い、加えて誰に対しても穏やかで優しく、おまけに美人とくれば男からしたら理想のお嫁さんという感じだろうか。 あいつの婿になる男か……と思考すれば、当然というか晴夜の事が思い浮かぶ。

 特別に秀でた何かがあるわけでもないが、真面目で誠実という人間として大事なものをもっている自慢の”弟”だな。

「なかなかにお似合いのカップルか……が、そう簡単な話でもないのが問題だが……」

 雨空あまぞら 立夏りっか……一度は離れ離れになりながらも最近帰って来た幼なじみで妹分の女の子の存在だ。 あいつもまた晴夜に友情以上のものを感じているが……。

「千秋もな……もう少し大人になればどう思うか……」

 芙容ふよう 千秋ちあきはまだ晴夜を兄として慕っているだけだが、将来的にどうなるかは私にもわかるものではないからな……まあ、そこもきちんと含めて答えを出したのだがな。

「そして、私か……」

 春香と立夏は私の答えも聞きたいらしいが、実のところ分かり切った事なのだ。

 私にとって晴夜は手間のかかる弟でしかないのだが、あの二人の想いが真摯なものである以上は安易にそうも答えを言うのも悪いと思う。 それにありえないとも思うが、もしも晴夜が私に告白した時にどうするのか?という問題はある。

「……いや、ありえないではいけないのか……」

 星空ほしぞら 四季しき……晴夜の婚約者を自称していたあの子があいつの心にいる限りは誰とも恋人になろうとしないというのが、”ありえない”理由なのだからな。

 晴夜は晴夜で私の事を”姉”としかみてないとも思うのだが、教師と言えど年頃の男の子の気持ちを完全に理解出来るというのも自惚れだろうしな、そういう可能性もあるかもくらいに思う事にしよう。

「……しかし、四季か……」

 あの子が生きてさえいれば、こうもならなかったのだろうか?

 四季と晴夜は年相応の恋人同士となっていて、春香や立夏もあるいは少しは複雑なものを感じながらも二人を友人として見守っていたのか……。

 晴夜を巡り三人がいがみ合うという想像は出来ないな……が、絶対に……とは言い切れないか……。

                

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