シーン15
昔ね、一人の女の子が男の子に好きだって告白された……。
女の子はその男の子の事は好きではあった、でもそれが友達としてなのか恋人としてなのかが分からなかった……。 でも女の子にはゆっくりと自分の気持ちに向き合う時間はなかった、女の子はある理由で男の子のセカイにやって来ていただけで、そんなに遠くない未来には自分の世界に帰らないといけなかったからなの……。
「それって……女の子は男の子のいる国とか町に遊びに来てたとかって事ですか?」
縁側に腰かけて黒くなり始めた空を見上げる永遠さん……いや、その瞳は空ではなく更にその先を見ているようの僕には思えた。
「…そうさね。 そういう事でいいかねぇ?」
「ですかね?」
永遠さんが肩を竦めたら、アインさんの苦笑も聞こえてきた。
こうして猫の視点で見上げているとどちらかと言えば小柄の永遠さんも巨人みたく見える、今となってはすっかり慣れたけど……。
あ、今の僕は精神体というべきか魂と言うのか分からないけど、とにかく黒猫のアインさんの中に入っている状態なんだ。 別にアインさんの紅い瞳を通して見ているわけではないんだけど、視界の高さは猫の視点なんだよ。
「そういう言い方って……もしかして女の子って永遠さんの事ですか?」
「ふふふふ、さぁてねぇ?」
意味深に笑う永遠さん、やっぱりか……。
今のこの光景を見たら、縁側に座る普通のおばあちゃんと飼い猫だろうけど、実際にはすごい魔法を使う魔女と使い魔なんだよね。 まあ、魔女のおばーちゃんと黒猫っていうのも物語とかのイメージそのまんまなのかもだけど。
その時、「……こんにちわ……じゃなくてこんばんわか……」っていう男の子の声が聞こえた。 視線を向ければ、生垣の向こうからこっちを見る学制服姿の男の子……永遠さんは「ああ、そうだねぇ?」と穏やかに笑って返す
「晴夜くん……」
僕が名前を口にすると「ああ、だな?」って言ったけど、もちろん僕に対して答えたわけじゃない……。
「珍しいねぇ……一人かい?」
「ああ……」
言われて気が付いた、いつもなら晴夜くんの隣には春香ちゃんと立夏ちゃんがいるはずなのに……今日は確か学園祭だって聞いたけど。だからといってそれが一人で帰宅する理由になるとも思えない。
「千秋がさ、春香達と……女の子だけで話があるってさ……」
「そうかい。 千秋も答えを出したってわけかい」
次の瞬間に僕と晴夜くんの「「答え?」」という声が重なった。
「それって……?」
「晴夜、あんたも答えを出す時が近づいているって事だよ。 そして”彼女”の願いが叶う時もね?」
思わず「え!?」と永遠さんを見上げるのと、「どういう事ですか!?」と晴夜くんが大声を出すのは同時だった。
「さてねぇ?」
しかし、永遠さんは惚けた声で言いながらゆっくりと立ち上がった。
「何となく、そう思えるのさね?」
そう言って家の奥へ歩き出すのを「また直感で物を言って……」とアインさんも追えば必然的に僕も引っ込まなければならなかった……。
何を言っていいのかも分からないけど……そもそも僕の声は晴夜くんには届かないけれど……それでも何か言いたかったんだ……。




