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シーン14


 自販機でコーヒーとミルク・ティーを買うと屋上へとやって来た、別にその場で飲んでも良かったのだが、偶には二人だけで話をするのもいいと思えたからだ。

 「……その、悪かった……結局、演劇……つーかヒーロー・ショーか? そこしか行けなかった」

 「そんな事ないよ。 あれだけでも十分に楽しかったから」 

 言いながらも、やはり少し残念そうに見える。

 「そうか、なら良かったよ」

 言ってから缶コーヒーを一口飲むと、千秋もミルク・ティーに口を付けてから可愛らしく微笑んで見せてくる。 

 「晴夜兄ぃってさ、いつも千秋に優しくしてくれるよね?」

 「まあ、可愛い”妹”だからな?」

 普段通りの千秋の声に、俺も普段と変わらずに答えた言葉は嘘偽りのない本音だった。 


 妹かぁ……。

 やっぱりそうだよね、晴夜兄ぃにとっては千秋は”妹”だし、千秋にとっても晴夜兄ぃは”お兄ちゃん”だもんね。 

 ずっと、ず~~と考えてみた。 千秋は晴夜兄ぃの恋人とかお嫁さんになりたいわけじゃない、千秋の晴夜兄ぃへの好きって気持ちは春香ちゃんや立夏ちゃん、それに冬子お姉ちゃんに対しての好きと同じなんだと思う。

 誰が誰と恋人になったとしても、みんなでずっと一緒にいられることが千秋にとっての幸せなんだって思える。

 もちろん、それは今の話ではあるんだけど、千秋がもっと大人になるまで春香ちゃん達に待っていてもらうのも悪いとも思う。 だから……。


 「……本当にいいの?」

 春香ちゃんが困惑した様子で聞いてくるのに対して「うん」と千秋は頷く。

 晴夜兄ぃ達の学園祭が終わった後、千秋は春香ちゃんと立夏ちゃん、それに冬子お姉ちゃんに声をかけて屋上に来ていた。 きっと千秋がどんな事でみんなを集めたのかは分かっていたと思う、だから春香ちゃん達が驚いたのは千秋の言った”答え”に対してなんだろう。

  「今の千秋は晴夜兄ぃの恋人になりたいわけじゃないから、今のまま……晴夜兄ぃの”妹”でいいんだ」

 「でも……”今は”でしょ?」

 「うん。 それが”今の千秋の答え”だよ?」

 千秋がもっと大きくなった時に、ひょっとしたらこの答えを後悔するかも知れないけど、千秋は千秋の好きなお姉ちゃん達を困らせたくもないから。 それに晴夜兄ぃが絶対に春香ちゃんか立夏ちゃんを選ぶとは限らないし……って、そんな意地悪な事も思ってたり……。

 「……千秋ちゃん……」

 「もういいだろう、春香」

 ずっと黙っていた冬子お姉ちゃんがやって来て、それからそっと千秋の頭を撫でてくれた。

 「千秋もいつまでも幼い子供のままでもないという事だ、その千秋の答えだというなら、私達がこれ以上は言う事もないだろう?」

 千秋が「うん!」と頷いたら、春香ちゃんと立夏ちゃんは顔を見合わせてから千秋に笑顔を向けた。

 「そっか……」

 「うん、そうだね」

二人の顔を見返しながら千秋はおばあちゃんの言葉を思い出していた……。


    ――ニンゲンはね、恋人だけと一緒に生きていけるわけじゃないんだよ――


 一人のニンゲンが生きていく中で大勢のヒト達と出会い、そしてその中から大好きと思い大事にしたいと思える者が何人も出てくるだろう。 恋人はその中でも確かに特別なのかも知れないけども、他のすべてを捨ててまで選ぶ価値まではない。

 それに恋人になんてならなくたって大好きなヒトと一緒に生きていけるなら、それが”恋人”という形でなければいけないなんて事はないんじゃないかい?

 おばあちゃんの言った事は何となく分かる……アニメとかみたいに恋がすべてみたいに考えなくていいから、今出せる答えを出せばいいって事だと思うんだ。

 千秋は今はまだ誰かの恋人になろうっては思わないけど、春香ちゃん達は恋人になりたいって男の子がいる……なら、それでいいと思うから。

 



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