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シーン13


              ――10月10日―― 


 ボードゲーム喫茶は大盛況……にはほど遠かったが、開始から半日ほどずっと二つ用

意したテーブルが埋まり続けるくらいには来客があった。

 「まあまあ……ってとこかね?」

 奥の壁によりかかりながら、二年生の四人組にあれこれ説明している立夏の様子を眺めている。 俺でも十分に説明できるゲームなのだが、立夏がいるとなると結局あいつの方が上手に説明出来るのだ。

 その向こう――入口側のもうひとつのテーブルでは一般客の親子と共に春香と千秋が簡単なゲームをプレイ中だ、来客の人数によっては部員の誰かが人数合わせの為に加わる必要もあるというのも実際にやってみて分かった事だ。

 その千秋達のテーブルに追加のドリンクを配り終えた冬子姉さんが俺の方にやって来て「どうした? 少し疲れたか?」と聞いてきた。

 「いや……ただタイミング的にすることがないっていうか……」

 「そうか……まあ、いいタイミングでもあるか。 そろそろ快斗と瑞樹が戻って来る頃だろう、そうしたら次はお前と千秋で周って来るといい」

 改めて見ると千秋達のゲームもあと数分くらいで終わりそうだった。

 「千秋とか……」

 快斗の好きなゲームの場合、こういう学園祭だのを一緒に周るのは攻略中のヒロインなのだが俺はゲームの主人公じゃないし、姉さんも変な意図はないだろう……そんな風に思ってしまう自分に、最近自意識過剰になっていると感じた。

 そう、単に”兄”として”妹”の面倒をみてやれというか、偶にはサービスくらいしてやれくらいのもののはずだ。

 だから、「ああ、そうさせてもらうよ」と素直に答えた。


 

 学園祭と言ってもゲームや漫画ような派手さはない、模擬店なんかの飾りつけも良く言えば手作り感、悪く言ってしまえば少し雑とかいう風だ。 それでも大勢の生徒や一般の来場者の行き来きが、いつもの退屈で面倒な学業の中ではなく今日が少し特別なイベント中だという雰囲気を感じさせてくれる。

 この学校では部活動が義務化されているわけではないの部員はそれぞれの部活の出し物に参加し、いわゆる帰宅部の連中はそれぞれのクラスでの出し物に参加する形だ。

 そんな出し物がいろいろとある中で俺と千秋がやって来たのは演劇部の公演だった。

 それは公演開始の時間がちょうど良かったという程度の理由だったため、その内容までは良く視ないまま会場である体育館に入ってしまった……。

 「……しまったな」

 その演目はなんと”ウルトラガイ”だったのである、演劇と言うより要するにヒーローショーだな。 もちろん、ウルトラガイや怪獣の着ぐるみもミニチュアっぽいセットも素人レベルのチャチなものだが、そうと割り切ってしまえば決して出来の悪いとも言えないと思う。

 まあ、それはいいのだが……。

 「千秋はこういうのには興味ないよな……?」

 隣に座る従妹に小声で言うと、「そんな事ないよ?」と返してきた。

 「そうなのか?」

 「うん。 千秋も日曜日にやってるの視てるよ?」

 今やっているのというと最新のウルトラガイZか、意外と言えば意外な事と思うと同時に、俺も千秋の事に関して知らない事もまだあるんだなと気が付く。

 千秋だけじゃない、春香や立夏、それに冬子姉さんの事に対しても同じだろう。

 「それにしても……どうしてヒーローショーなのかな?」

 「今の部長と数人の三年生が特撮ファンで、大学の特撮サークルを目指しているって聞いた事があるな?」

 千秋は「へ~」と答えると再び演劇に見入ったので俺も舞台へと視線を戻した、ウルトラガイと古大怪獣アロザが戦いを繰り広げている。 古代の恐竜が進化し怪獣となったアロザにウルトラガイが右手を振るうと、それに合わせて円形の光が現れてそれがアロザに向かって移動――飛んでいき命中すると怪獣も怯むような動きをした。

 スポット・ライトを使った光線技の演出だ。

 何気なく千秋を見ると思っている以上に真剣に見入っていた、俺も昔は同じような顔であのヒーローを見ていたのだろうか、作り話と理解出来てなおテレビの向こうのヒーローに畏怖とあこがれの念をもった瞳で……。

 古代怪獣アロザは太古に生息してた恐竜の生き残りが永い眠りから目覚めた後に、現代の地球環境の変化が原因で怪獣へと変化した。 しかし、決して人類に対し敵意や悪意を持ってはおらず人間を捕食もしない。

 しかし、五十メートル級の体躯を持つ生物はただ存在するだけで脅威となり、ましてや人の生活域に入ってくれば倒すしかないのだ。 それは昔にテレビで見たストーリーであり、この演劇では地球侵略を企む宇宙人の操る怪獣として登場していた。

 そんなこんなでアロザと宇宙人は倒され、ハッピー・エンドで舞台は終わった。

 最初は失敗したか……と思ったものだったが、「面白かったね~」と笑う千秋を見ると結果的には良かったと安心した。

「……さて、次は……と、もうこんな時間か……」

 大急ぎで戻らないわけでもないが、ここから何か周ろうとすると足りないか……「もう終りなの?」という残念そうな声に、やはり失敗だったかも知れない。 

 千秋はこの学園の生徒ではないのでこのまま一人で周る分には何も問題はないし、俺としても……いや、姉さん達もみんな千秋には学園祭を楽しんでほしいと望んでいるはずだ。

 しかし、千秋は千秋でボード・ゲーム部としての一員としての自覚と責任感もあるだろうし、それは良しとしないだろう。 俺が千秋の立場ならそうだろうし、”兄”としてそれくらいは理解しているつもりだ。

 「……んと、みんなのとこへ戻るならその前に何か飲みたいな?」

 「……ん? そうか……」



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