シーン11
学園祭への準備があるとは言っても、それで俺達の日常が大きく変化する事はなかった。 普通に学校へ通い授業を受けて放課後になれば部活動をする、その内容も学園祭の為のゲームを覚えると言っても結局はボード・ゲームで遊ぶという普段通りのものなのだから。
――9月21日――
千秋にとって晴夜兄ぃって何なのか?
ずっと考えているけど全然分からない、だって晴夜兄ぃは大好きだけど将来お嫁さんになりたいとか思うわけじゃないんだもの。
だから誰かに相談したいなって考えて、千秋は永遠おばあちゃんの家にやって来た。 どうしてお父さんやお母さんじゃなくて永遠おばあちゃんなのかは自分でも分からないんだけど……。
いきなりお邪魔しちゃっておばあちゃんは少し驚いたみたいだったけど、お家に入れてくれて、縁側に並んで腰かけていた。
「…………なるほどねぇ」
千秋の話を終わると永遠おばあちゃんはそう言って千秋をジッと見つめてきた。
「自分の心はちゃんと理解しているつもりで簡単には理解出来ないものだからねぇ……特に女の子の恋心っていうのはね」
言い終わるといつからいたのかアインちゃんがおばあちゃんの陰から出てきて千秋の膝の上に乗って千秋を見上げてきた。 何かを言いたそうに視える紅い瞳を見返しながら「でもさ、分からないんじゃダメだと思うんだ……」って返した。
「そうかい? 分からないものは分からないのがしょうがないさ」
「でも……」
春香ちゃんも立夏ちゃんも千秋の答えがないと絶対に晴夜兄ぃに気持ちを伝えないと思う、だから分からないじゃ絶対にいけないと思う。
「だからね、今のあんたに分かっている事は何かしら?」
「今の千秋に分かっている事……?」
おばあちゃんは「そうだよ」と頷いた。
「そうさねぇ……あんたは晴夜の事は嫌いかい?」
「そんな事ないよ! 晴夜兄ぃの事は大好きだよ!」
「そう、それは”分かっている事”じゃないかい?」
そうなんだけど……千秋にはおばあちゃんが何を言いたいのかが全然わからなくて思わず首を傾げながらじっと顔を見つめた。
「まず今の自分に何が分かっているのか……それを考えてごらんなさい、そうすれば今の自分に出せる答えが出せるはずだよ?」
「……今の答え……?」
「そう、絶対的な正解である必要はないさ。 今の自分に出せる答えを見つけて、それでどうしたいのかを決めればいいと、あたしは思うよ?」
千秋を見つめていたおばあちゃんの瞳が少し下に向けられたと思ったらアインちゃんがおばあちゃんの膝の上に跳び移った。
「その結果、いずれ後悔する事もあるかも知れない……でもね? その時に過去に捉われずに前に、未来に進めるならそれでいいのさ」
そう言うおばあちゃんはどこか遠くを見つめてるみたいだった、何か昔の出来事でも思い出しているのかな。
「……そうだねぇ、ひとつだけ教えておこうかね……」




