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シーン6


 この日の夕方近くに珍しい来客があった、赤いランドセルを背負った千秋ちゃんだ。 どうやら学校の後に晴夜くんのお見舞いにやって来たついでに永遠さんに会いに来たらしい。                       

 そのランドセルを居間に置いて縁側に腰かける千秋ちゃんの隣に永遠さんが腰かけると僕……というかアインさんが彼女の膝の上に乗っかった。

 「……それにしても今日は部活の方はいいのかい?」

 「うん、春香ちゃんと立夏ちゃんには言ってあるよ」

 そうだった、千秋ちゃんはまだ小学生だけど晴夜くん達の中学校の部活に参加しているだった。 部活って言ってもボード・ゲーム部だから、千秋ちゃんにしてみればみんなで遊んでいる感覚なんだろうけどね。  

 それにしても、晴夜くんの具合はそこまで悪くないって事は春香ちゃんや立夏ちゃんから聞いているはずなのにお見舞いに来る千秋ちゃんか……やっぱり”妹”だからなのか、それとも……。

 「ならいいわ。 どうしても仕方ない時もあるけど、部活に限らずみんなで何かをするような事で参加できない時は黙って休んじゃ駄目よ?」

 「うん、分かってるよ」

 永遠さんは少し嬉しそうに頷くと「それで、部活……ボード・ゲーム部だったかしら? 楽しんでいるのかい?」と聞く。

 「うん!」

 部活内容もそうだろうけど、晴夜くん達と一緒に何かするのが楽しいんだろうなって思う、出来るなら僕もみんなで部活動をしてみたいって思う……まあ、無理なんだけどね……。

 「どんなゲームをやっているんだい?」

 「うんとねぇ……」

 千秋ちゃんの話すゲームの内容は正直言って僕にはさっぱりだった、「むぅ?」と唸るあたりアインさんも同じみたい。 永遠さんは楽しそうに相槌を打っているけど話の中身を理解しているというより、千秋ちゃんが楽しそうに話すのを自分も楽しんでいるって風に感じられるかな。

 しばらく楽しそうに話していた千秋ちゃんだったけど、不意に表情が重くなる。

 「……?……どうしたんだい?」

 少しの間迷っていた感じだったけど、「うんとね……」と永遠さんをしっかり見つめて口を開いた。

 「春香ちゃんと立夏ちゃんがね、好きな男の子がいるんだけど……まだその時じゃないからって告白とかしないって言うの……」

 「……!?」

 思わず息を呑み幼なじみの女の子を見つめると、「……それで?」と頭上からの先を促す声。

 「春香ちゃんと立夏ちゃんの好きな男の子……」

 僕の呟きに「四季さん……」と心配そうなアインさんの声。

 「どういう事なのかなって……」

 「千秋ちゃんは何でだと思うのかな?」

 「分かんない……そりゃ言い出しにくいとかってあるとは思う。 でも、その時じゃないって……わかんない……」

 女の子でも男の子でも好きな相手に告白するのは勇気がいる事だってのは僕も分かるし、千秋ちゃんもそうなんだろう。 恋愛とかまだまだ縁がない幼い子供だと思ってたけどしっかり”女の子”に成長してるんだって思えた。

 それは春香ちゃんと立夏ちゃんも同じ、一人の男の子を男の子として好きになる……そしてその相手は多分……ううん、間違いなく……。

 「そうだねぇ……あたしにも予想は出来ても本当のところは分からないさね、ヒトの心というのは簡単には他者にわかるものでもないからねぇ?」

 「そうかもだけど……」

 「でもね、その時がきたらきっと二人はちゃんと話してくれるはずだよ」

 「……その時……」

 庭の桜の樹を見据えながら言う千秋ちゃんの表情は、おそらく”その時”の意味を分かっていると思う。 それは理屈や論理ではなく直感的なものだろう、そう思うのは千秋ちゃんも僕も女の子だからだと思えた。

 分かるのはそれだけじゃなく、誰も名前を出さない”男の子”が誰なのかという事もだった……。

                                                                                    

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