シーン11
ボクは春香ちゃんの部屋で彼女と向き合ってる。 ボク達の間には麦茶のはいった二つのコップ乗る小さなテーブルだけ。
「……それで、お話にって何なの立夏ちゃん?」
そう言いながらも、春香ちゃんには察しは付いているんだろうって事は顔を見てて分かる。 だから、ボクもストレートに言う事にした。
「うんとね……ボクもせーやの事が好き、もちろん男の子としてだよ」
春香ちゃんは何も言わずのボクをじっと見てたけど、やがて穏やかな笑顔になり「……やっぱりね?」と言った。
「やっぱりって……分かってたの?」
「何となく……ね?」
この鋭さはせーやの事だからというよりボクとせーやの事だからなんだとって思う、だってボク達は互いよ良く知る幼なじみなんだしね。 きっと春香ちゃんはボクが自分の気持ちに気が付いていないだけだって分かっていたんだと思う。
普通に考えたらその方が春香ちゃんにとって都合がいいんだろうけど、他の女の子達ならともかくボク達を裏切るような行為は自分で許せなかったのだろう。
「それで、春香ちゃんはせーやの告白するの?」
春香ちゃんは首を横に振ると、予想通り「……ううん、まだだよ」と答えた。
「まだ千秋ちゃんと冬子さんの気持ちをちゃんと聞いてないしね。 あ、もちろん立夏ちゃんが告白するのは止めないよ?」
「ボクもしないよ、分ってるでしょ?」
春香ちゃんは「うん、そう言うと思ってたよ?」と微笑む。
ボクだって春香ちゃんや冬子姉ぇ達を裏切るような行為をしたくはないもの。
今のところ冬子姉ぇと千秋ちゃんはせーやの姉や妹という振舞いに見えるけど、ボクと同じで自分の気持ちにちゃんと気が付いていないだけっていう事もある。
「……でもさ、その……言い方は悪いんだけど、せーやはまだ四季ちゃんに……死んだ人にとりつかれてるんだよね?」
直接聞いたわけじゃないけど、せーやは今でも四季ちゃんの婚約者でいようよしているんだとは感じていた。 ボクが近づこうとするとあえて距離を取ろうとするっていうか……あ、物理的な話じゃなくて心の距離だよ。
とにかく、ボク達とはあくまで”幼なじみ”でいようとしていると思う。
「……うん、晴夜君に心の中にはまだ四季ちゃんがいるね。 死んでも……ううん、死んじゃったからこそだよね」
せーやだけじゃない、ボクにとっても四季ちゃんは大事な存在だったから分かる、大事な人の死というものは強烈な印象を残す。 それでも時間の流れと共に薄れてもいくけど、そうなる事を怖く思う。
四季ちゃんの事を忘れかけていた事に不意に気が付き、大事な友達の事を忘れられる自分の冷たさを怖くなるんだ。
「ボクも四季ちゃんは大好きだし、せーやに四季ちゃんを忘れてほしいって思わないけど……でも、いつまでも婚約者でいる事が正しいとは思えないよ……」
「私もそう思うよ、四季ちゃんには悪いけど……死んじゃった人とじゃ晴夜君が幸せになれない」
そうは分かっていても、どうすればいいのかが分からなかった。




