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シーン9


 コンビニへお菓子を買いに行こうと家を出たボクだったけど、そこで出くわした永遠さんに誘われて、永遠さんの家の縁側でおやつをごちそうになる事になった。

 透明の袋に包まれたお煎餅とかクッキーとかが入った容器を挟んでボクと永遠さんが座ると、そこへ黒猫のアインちゃんがボクの隣にやって来た。

 「……そういえば、立夏達は今度海に遊びに行くんだって?」

 「え?……ああ、そうです」

 何でこのお婆ちゃんが知ってるのかなと思ったけど、せーやかせーやのお母さんとかから聞いたんだとすぐに思い付いた。

 「みんなで揃って海に行くのって初めてだからすっごい楽しみです!」

 「おや? そうなのかい?」

 永遠さんは意外そうな顔になった。

 「はい、プールならせーやや春香ちゃんや四季ちゃんと何度も行ってるんだけど、海はなかったですよ」

 そう、出来れば四季ちゃんも一緒だったら良かった……と考えてふと思う、せーやの”婚約者”の四季ちゃんが生きていたら、きっとせーやとは今でも恋人同士だったはず。

 でも、そうだったとしてら春香ちゃんやボクはどうしてたんだろう?

 春香ちゃんや……もしかしたらだけどボクはせーやに対して友達以上の好きって気持ちを持つ事にはなってないんだろうか?

 「……どうしたんだい?」

 優しい声に気が付くと永遠さんがボクを見ている……にしては少し変だった、どちらかというとボクの膝の上に乗っかているアインちゃんみたいに感じた。

 「……あ……その……ちょっと考え事をしちゃって……」

 「うふふふ、そうかい」

 ヒトを安心させる穏やかな笑いを浮かべた永遠さんは、コップの中の麦茶を一口飲むと少し考え込む仕草をした。 それがボクにはまるでボクの心を見透かされているような気持にさせる。

 「あの……?」

 「……ん? ああ、ごめんね立夏。 少しだけ特別サービスもいいかもねって思ってさ?」

 「……はい?」

 永遠さんの言葉の意味がボクにはさっぱり分からなかった。 特別サービス? 誰に対してなんだろう?

 「……あの、いったい何の事なんですか?」

 「うふふふ、いずれ分かるよ立夏ちゃん」

 皺だらけも悪戯っぽい笑顔が、ボクには可愛らしい少女のそれのように見えた。

 「それよりもね、立夏……」

 「はい?」

 「立夏ちゃんは晴夜の事をどう思ってるんだい?」

 突然に言われて「……はぁ?」と素っ頓狂な声を出しちゃった。

 「幼なじみとはいえ、あんたや春香もお年頃さね。 晴夜に対して何か思うところがあるんじゃないかと思ってね?」

 そう言われても……うん、春香ちゃんがせーやを好きなのは知ってる、でもってボクも……って言うか、そもそも永遠さんに言うような事じゃないと思う。

 でも、永遠さんだから言ってもいいのかなとも思える。 ボクがいなくなってからずっとせーやと春香ちゃんをずっと見てきた”家族”以外の大人の人だから。

 せーや達も信頼してるみたいだし、出会ってそう経っていないけどボクも信用出来る人だとは感じてる。 何より、このままだといつまでもモヤモヤとして気持ちのままでいるように思えたから。

 「……ボクはせーやの事……好きです。 なれるならせーやと恋人にもなってみたい……でも……」

 「……春香に悪いかい?」

 それでも、言うべきか迷っていた事を先に言われて「…………え?」と永遠さんを見つめた。

 「あの子らとの付き合いもそれなりだしねぇ……こんな年寄りでもそれなりには分かっているつもりだよ?」

 言い終わると同時に永遠さんが顔を向けた先をボクも見ると、それは庭にある葉桜だった。

 「……そうだね、あんたが気持ちを伝える事は晴夜や春香に迷惑になる行為かも知れない……でも、逆だったらどう思う? あんたのために春香が自分の気持ちを抑え込んでいたとしたら……」

 「そんなのダメだよ! あ……」

 そう、春香ちゃんだけでなく千秋ちゃんや冬子姉ぇでも自分の気持ちに遠慮をしてほしくなんてない。 それでボクとせーやが恋人同士になれなくても、せーやがきちんと考えて出した答えなら我慢……ううん、祝福できると思う。

 「そういう事さね、自分の気持ちを無理に抑え込むことはない。 あんた達が納得のいくように決着を着け、そして結果を受け入れられるならそれでいいと思うけどね?」

 春香ちゃんはきっと一人だけ抜け駆けするのが納得のいく決着じゃないからボクに気持ちを考えてほしいと言ったんだ。 もしもボク達が自分と同じ気持ちならせーやにちゃんと伝えてほしい、その上でせーやの答えを聞きたんだろう。

 気が付くとボクは立ち上がっていた、そして永遠さんの顔をしっかり見ながら「ありがとうございます!」と言った。

 「ふふふ、あたしは少しお節介を焼いただけだよ?」

 穏やかに笑いながら肩を竦める永遠さんに「そんな事はないですよ」言って、ボクは駆け出した……。




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