シーン7
デパートの女性用の水着のコーナーでは当然と言うべきか女の人が多かったが、中には男を連れている客もいて、そのため予想よりは居心地の悪い空間ではなかった。
「……まあ、カップルとかなんだろうけど……」
「……何が?」
「男女で来てるお客がだよ」
立夏は「あー」と納得した顔になり、「じゃあさ? ボク達もカップルに見えるのかな?」と聞いてきた。
「……あーまー……見えるんじゃないか?」
実際はともかく傍から見たらそう見えるのも仕方ないし、変な風に思われるくらいなら俺もその方がいい……そんな気持ちでの言葉だったのだが、立夏は「え? ええっ!?」と驚きの声を上げたのに俺も驚く。
「おい……大声出すなって……」
「あ……ごめん。 せーやが肯定するとは思わなかったから……」
どうやら俺が”んなわけないだろ?”みたいな反応すると思ってたわけか、それも正しい認識だったが、それにしても少し大げさな反応だったように思えた。
「まあ、とにかく……さっさと買うもの買っちゃおうぜ?」
「せーやはせっかちだねぇ……」
苦笑する立夏に「そういうもんだろ?」と答えると、並んでいる水着を見渡してみる。 可愛いワンピースやら少し大胆なビキニ・タイプまである、 ゲームの女の子達は色とりどりの水着を着ているが、現実でもそんなもんなのかと思えた。
「せーやはどの水着がボクには似合うと思う?」
「……俺に聞くか? それ?」
「ん~~じゃあさ、どれがせーやの好みなのかな?」
幼なじみの、そんなゲームのヒロインが言いそうな言葉に俺は少しドキっとなってしまった。 どういう反応をしていいのか困っていると、立夏は悪戯っぽい笑みを浮かべながら「……男の子ってこういう風に言われると嬉しんだよね?」と言ってきた。
女の子が自分に見せる為に水着を選んでくれているというシチュエーションは、快斗の好きなゲームとか、現実にあるにしても恋人同士とかだろう。
「揶揄うなよ……そりゃ、嫌じゃないけどさ……」
うっかり余計な事を言ってしまったせいで、「へ~~? やっぱり~~」と勝ち誇った顔をさせれてしまった。 それが面白くはなかったが、デパートの中で子供じみた言い合いをするのもみっともないし、ここは我慢する。
「……とにかく、立夏が気にいったものを選べばいいだけだろ?」
「はいはい……分かってるよ」
そういって物色を始める幼なじみの少女を、俺は後ろから見つめていたのだった。
買い物から戻って部屋に戻ったボクは、水着の入ったデパートの袋を机の上に置くとベッドに腰かて、「ふ~~」と息を吐いた。
「……まったく、せーやも少しはノッてくれてもいいのにさぁ~」
せっかく二人で水着を買いに行ったのだから少しくらいカップル気分になってくれてもいいと思うんだけどなぁ……。
そう、ボクはそれを悪くはないと思った。 それどころか、せーやと本当にカップルになるのもいいかも知れないって思えたんだ。
だから、同時に”自分の気持ちと向き合ってほしい”という春香ちゃんの言葉が思い出されてもいた。 でも、今のこの想いを彼女に伝えてもいいのだろうか?……と、そうも思える。
春香ちゃんはずっとせーやの傍にいた、自分じゃ何もしてないって言ったけどそんな事はないと思う。 冬子姉ぇや千秋ちゃんもそれは同じだろうけど、春香ちゃんが一番近くで長い時間を過ごしていた。
だから、四季ちゃんがいなくなった今はせーやと恋人になるのに一番相応しいのは春香ちゃんだ。 少なくともせーやが大変な時に傍にもいなかったくせに今頃帰って来たボクじゃないと思う。
でも、できるなら……とも思ってしまう。
もちろん、せーやと春香ちゃんが恋人になってもボク達の関係は何も変わらないはずだ、せーやは決して浮気とかするような男の子じゃないけど、誰かの恋人になったとしても絶対にボクらの事をないがしろにしたりはしないと思うんだよね。
恋人の子を裏切るようなことはしないけど、ボクらの事も大事に思ってくれて、一生懸命になってくれると思える。
それでも、ボクにとってせーやが特別な男の子になって、ボクがせーやにとって特別な女の子になれたならって思うと、そうなりたいと願う自分もいた……。




