シーン4
――???年前?――
その女の子が晴夜の家にやって来たのは彼が小学校に上がる少し前だった。
両親を事故で亡くした彼女の両親の古い友人だった晴夜の父親が引き取る事になったのだ。 両親を事故で亡くすという事の意味を言葉のままにしか理解できない晴夜は、少女の事を可哀そうだとは感じつつも、一人っ子だった彼は新しい家族が増えたという事を無邪気に嬉しくも感じていた。
だから、自分の両親から少女を紹介された時には楽しそうな表情と口調で自分の名を名乗っていた。
「……せいや?」
「ああ、あまの せいや。 俺の名前だ、よろしくな?」
男女が一つ屋根の下で同居する事の意味を考えるような思春期ではないが、それでもかわいい女の子と一緒に暮らすというのは嬉しいと感じるのが、男の子というものなのも事実だった。
少女は晴夜の顔をしばらく見つめていたが、不意に何かに怯えた様な表情になった。
「……せいやはこれからどこかへいくの?」
「ん? まあ、こうえんにあそびにね。 おまえもいくか?」
どうして彼女はそう思ったのだろうという疑問は、晴夜には浮かばない。
「ううん! あそぶならおうちがいい……せいや、いっしょにおへやであそぼ?」
晴夜としては公園で思いっきり遊びたい気分であったから、少女の言葉に渋い顔をしたが、「晴夜、遊んであげなさい」という母親の言葉に仕方ないなと頭を掻きながらも、もう片方の手を差し出した。
「じゃあ、いこうよ。 なにしてあそぶ?」
キョトンなった少女の顔は、やがて嬉しそうな笑顔へと変わり、「うん!」と返事をしながら少年の手を、自分とほとんど変わらない小さな手を取ったのであった。
これが俺と彼女の出会いだった……。
この後は俺は彼女と部屋でそれなりに楽しく過ごした、だから、きっとこの子とは新しい家族としてやっていけると、呑気にそんな事を考えていた。
夕方のニュースか何かで、俺の家から向かう途中の歩道に車が突っ込んだものの、幸いにも死者も運転手以外のけが人もなしだったという話を聞いても、なら、良かった程度の事くらいしか思わなかった……。
そう、もしもここに俺や彼女がいたらという事など、まったく想像も出来なかった。




