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シーン2


                       ――7月8日――


 「やばい~~やば~~~い~~~!!」

 ボクの名前は雨空 立夏、中学三年生の女の子だよ……って! 今はそんな場合じゃないんだった。 何でかって言うと、今日の体育の授業は水泳なんだけど水着を忘れちゃって取りに戻って来たんだ。

 余裕を持って登校してるからまだ遅刻確定じゃないけど……全力でダッシュしてギリギリくらうかな……って考えながら玄関を通って門を出ると、そこにはボクの良く知ってる男の子と女の子が立っていた。

 「……来たな、なら急ぐぞ?」

 そう言ってきたこの男の子は天野(あまの) 晴夜(せいや)でボクはせーやって呼んでるよ。 この家の子でボクの幼なじみなんだ、今のボクは訳があってこの天野家の居候だったりする。

 「そうだね……出来れば遅刻は避けたいしね?」

 そして女の子の方は青空(あおぞら) 春香(はるか)ちゃん。 せーやのお隣さんで彼女もボクの幼なじみだよ。

 「……って! 二人共なんで!?」

 尋ねると同時に二人が走り出したからボクも慌てて追いかける。

 同じ家に住むせーやとお隣さんの春香ちゃんとは今日も三人で登校してたんだけど、途中で忘れ物に気が付いたから、二人には先に行ってもらってボクだけ戻ったはずだったんだけど……?

 「……遅刻しまいと慌てたお前が事故にでもあったら大変だからな?……まあ、春香まで付き合う事もないとは思ったが……」

 「あははは……わたしだけ仲間外れなのも寂しいしね?」

 心配してくれるのは嬉しいけど……ボクもそこまで子供じゃないだけどな……まあ、せーやの場合は昔の事もあるからだろうけど……。

 そうこうしているうちに何とか学校に到着、だけど三階にある教室へ向かう途中で残念ながらチャイムが鳴っちゃった。 それでも走り続けて教室に飛び込む……同時に先生の声が……あれ? しない……?

 拍子抜けしたボクの背後から「……ほら、早く席に付けよ?」と聞こえたのは、クラス担任の初雪(はつゆき) 冬子(とうこ)先生の声だった。

 「……冬子姉ぇ……じゃなくて先生……?」

 「あの……わたし達……遅刻……」

 春香ちゃんの言葉を「職員室に忘れ物をしてな……」と遮った。

 「だから私にはお前達がチャイムの前にいたのか後かなど分からん、さっさとホーム・ルームを始めるぞ?」

 そう言われたらそれ以上は何も言えないのでボク達は教室の一番後ろの席に三人で並んで座る。 そう、ボクらは同じクラスで席も三人で並んでいる……クラスはともかく席については冬子先生もと、冬子姉ぇの策略なんだよね……これが。

 冬子姉ぇはせーやのお父さんの友達の娘さんで、彼女もボク達の幼なじみなんだ。

 「……まったく、姉さんは……」

 「あははは……ほんとにわたし達って冬子さんに助けられてばかりだよねぇ……」

 せーやと春香ちゃんもボクと同じ事を考えたみたいだ。 多分だけど、冬子姉ぇはどこかで廊下を全力ダッシュするボクらを見かけて、それでわざと自分が教室に入るのを遅らせたんだと思う。

 依怙贔屓って思う人もいるかもだし、間違いでもないんだけど……ボク達でなくても相手と状況によってはきっと同じ事をすると思っている。

 そういう先生だって分かっているから、クラス・メイトのみんなも何も言わないんだとボクには思えていた。


 

 一時間目が終わった後の休み時間に、「……たく、遅刻するのも三人一緒とは本当に仲がいいな、お前ら……」と冷やかして来た男子生徒の当麻(とうま) 快斗(かいと)君は、せーやの友人でボクらの部活の仲間でもある。

 「いつも一緒に登校してるんだからな、そりゃ遅れる時は一緒に遅れるだろ?」

 「どういう理屈だよ……」

 明らかに適当にあしらっていると分かるせーやの態度に快斗君は肩をすくめ、それを見ている春香ちゃんは苦笑いを浮かべていた。  

 「……っていうかお前、本当にどっちとも付き合ってないのか?」

 その言葉にボクは思わずドキってなった、それは二か月前の春香ちゃんとの会話を思い出させたから……春香ちゃんがせーやの事を好きで、ボクにも自分の気持ちと向き合って答えを出してほしいって……。

 「ああ、見れば分かるだろう?」

 「いや……俺にはお前が恵まれたハーレム男にしか見えないんだが?」

 流石にムッとした様子で「そんなわけないだろう……」って返すせーや、ちなみに何一つ間違ってはいないよ。 ボクはもちろん、春香ちゃんもまだせーやとはそういう関係じゃなし、ハーレムなんてするような事をするせーやじゃないからね。

 まー冬子姉ぇは十分に美人だし、春香ちゃんや千秋ちゃんも特別美少女ってわけでもないけど、女の子のボクから見ても十分に可愛い子だと思う。 ボクもボクで、まあ……それなりかな?

 だから、他の男子から見たら確かにハーレムになるのかな?

 ちなみに芙容(ふよう) 千秋(ちあき)ちゃんはせーやの従妹の小学六年生の女の子で、もちろんボク達の幼なじみの一人だよ。

 「でも、それを言ったら快斗君にも瑞樹さんがいるんじゃない?」

 春香ちゃんの言った小石川(こいしかわ) 瑞樹(みずき)さんは快斗君のいっこ下の幼なじみの女の子で、ボクらからすると部活の後輩になる。

 「おいおい……瑞樹はそれこそ単なる友人だっての。 お前らだってあいつが俺をどう扱ってるか知ってるだろ?」 

 瑞樹さんは礼儀正しい子ではあるんだけど、快斗君の事だけは呼び捨てで言葉遣いも先輩に対するそれじゃない。 でも決して仲が悪いわけじゃない、そもそもボクや春香ちゃんが仮にせーやのいっこ下だとしても、やっぱり今みたいな感じじゃないのかなって思う。

 何て言うか、”せーや先輩”って言ってる自分が想像出来ないし……。

 そんな事を考えていたら、休み時間の終了を告げるチャイムが聞こえてきた。



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