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シーン8


             

 部屋の隅に立てかけられた折り畳み式のテーブルを用意し、その上にはカードの束――山札が二つ置かれている。

 「えっとね、このゲームは”ワードサーチ”って言って……」

 立夏が双方の山札の上のカードをめくると片方には”電化製品”と書かれていて、もう一方には大きく太い書体で”こ”と書かれていた。

 「立夏ちゃんこれって?」

 「こっちがお題で、こっちが頭に付く文字だよ春香ちゃん」

 「成程、この場合は”こ”から始める電化製品の名前を言えばいいんですね?」

 「そういう事だよ、瑞樹ちゃん」

 ルールは簡単そうだし、時間もそうは掛からなさそうだ。 知っていて持って来たわけはないだろうが、これなら千秋でも楽しく遊べそうだ……と考えていると、その千秋が「うんと……こたつ?」と言った。

 「ああ、確かに電化製品だな」

 俺がそう言うと立夏が文字の方のカードの取って「じゃあ、これ千秋ちゃんのね」千秋に渡したから、俺だけでなくみんながキョトンとなった。

 「おいおい立夏、今はインストだったか?……じゃなかったのか?」

 姉さんが抗議する。 ちなみにインストとはインストールの略で、立夏達の間ではルール説明の事をそう呼ぶらしい。 というか、分かってはいたけど姉さんは一応は顧問なのに一緒に遊ぶ気満々だな……。

 「あーそうなんだけどね……まあ、このゲームってこういう適当さも面白さだからね……んで、こうやってカードを取っていって最後に一番枚数を持っていた人の勝ちね」

 本当にやる事がシンプルだな……しかし、そうなるとこれ、教師で知識が豊富な冬子姉さんが有利じゃないのか?

 「まあいい、千秋は一番年下だしハンデだ」

 妙に自信ありげな顔なのは姉さん自身もそう思ってるからだろう。

 「じゃあ、次いくよ~」

 「おう! こい立夏!」

 ちなみに立夏も俺達と同じ一プレイヤーであって、別に俺達が立夏と勝負するというわけではない。

 ちなみに次のお題は”お”の付く調理器具だった。 料理をほとんどしない俺にはちょっと難しい問題だぞ……。

 「……”お”の付く調理器具か……むぅ? ここまで出かかっているのだが……」

 姉さんも料理は人並みにはするはずなのに答えが出ないらしい。 なるほど、クイズ番組の回答者もそうみたいだが、いざ答えようとすると言葉が出てこないのか。

 「……えっと? おたま?」

 「あ、おたま!」

 春香と瑞樹さんがほぼ同時に答えたが……春香の方が僅かに早かったように聞こえた。

 「う~~んと……今のは春香ちゃんかな?」

 確認するようにみんなを見る立夏、俺は頷いて見せる。 

 「じゃあ、これは春香ちゃんね?」

 「やった~」

 「むぅ……残念です……」

 言葉ほどに残念そうでもないのは、あまり勝ち負けに拘るゲームでない事を瑞樹さんもすぐに理解出来たからだろう。 しかし、結局一枚も取れず仕舞いなのも情けないから俺も多少は気合を入れていくつもりだ。 

 「次は……”がぎぐげご”の付く……白いもの?」

 複数の文字がある時はどれかひとつが頭に付けばいいんだったな、白いもの……白いものか……。

 「ガンドムだ!」

 俺が答えると、「ガンドム?」と瑞樹さんが首を傾げた。

 「それってせーやの好きだったアニメのロボットだよね?」

 「でもあれって白いの? 他にも青とか赤とかの色も塗られてた思うんだけど?」

 女の子向けのアニメではなかったが二人共俺に付き合ってテレビを見た事もある……が、それだけだった故に知らないのだろう。

 「ガンドムは敵からは”白い奴”って呼ばれてるんだよ、だから白いものでいいんだ」

 「む~~?」

 唸る千秋を始め女の子組はまだ疑問視してるようだが、このゲームは言い切った者勝ちだ、「まあ、そう呼ばれてたな?」という快斗の援護射撃もあってこのカードは俺がゲットした。

 その後もゲームは続き、結局は冬子姉さんがトップだった。 しかし、勝ち負けに関係なく全員がこのゲームを、楽しく有意義な時間を過ごしたと俺は思っていた。

 



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