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シーン7


                    ――4月16日――

 

 今日も今日でいつもと変わらない学園での一日が終わろうとしていた。

 「……では、これでホーム・ルームを終わる」

 冬子先生がそう言った後に俺を……というか、俺達三人を見た。 直感的なのか経験的になのか、即座に何かあるなと思う。

 「天野に青空、それと雨空は……そうだな? 今から三十分後にこれから言う部屋に来い……おっと、当麻もだな、小石川を呼んで一緒に来い」

 なるほど、このメンバーという事はボードゲーム部絡みだなとは分かった、おそらくは今日から活動開始という事だろう。 

 予想してたよりもずっと早いのは、姉さんの事だから俺達が部員を勧誘出来る前提で部室に使える部屋探しなんかを進めておいたんだろう。 要するに申請の書類を提出した時にはすでにいつでも活動開始出来る状態だったわけだ……多分。

 それにしても三十分後というのはどういう事だろう?

 「すぐじゃいけないんですか?」

 春香が質問すると冬子先生は悪戯っぽい笑みを浮かべて、「ああ、三十分後だ」と答えたのだった。

 その後、帰りのあいさつを終えるとクラスメイトは部活や帰宅するために次々と教室を出て行き、快斗も瑞樹さんが帰る前に呼びに行くべくさっさと出て行った。 最後に俺と春香に立夏が残ったのは、単に三十分という中途半端な時間で行くべきところもなかったからだ。

 「……せーやと春香ちゃんはどう思う?」

 「うん、怪しいよねぇ……?」

 「ああ、絶対に何かを企んでるな、あれは……」

 考えが一致するのは冬子姉さんも含めた俺達が幼なじみ故だな。

 「昨日さ、ボクのところに電話があって、簡単にできるボードゲームを見繕って持ってこいって言ってたからさ、多分申請が通って活動開始だと思うんだけど……何で三十分後なんだろう?」

 立夏がそう言ってきても、俺も春香も首を傾げるしかない。 

 姉さんの性格ならどうしてもやらなければいけない仕事がって、でも俺達だけで先に活動を始めているのが面白くないという可能性もあるが、あの表情は絶対にそうではないと確信できる。 

 何かを企んでいるとは分かりやすくても、何を企んでるかというのが分からないのが姉さんなのだ。

 「まあ……考えても仕方ないよねぇ……」

 「まあね……冬子さんだしね……」

 それは春香にしても立夏にしても同じだ。 結局この話はこれで終わり、後は適当な雑談で時間をつぶしてから教室を後にしたのだった。


 

 冬子姉さんの指定した部屋は案の定、中等部校舎の三階に倉庫代わりに使われていた部屋だった、広さにすれば教室の半分くらいか。 三階と言ってもここは俺達の教室がある第一校舎ではなく、理科室というような特別教室がある第二校舎の方だ。

 高等部の方の校舎も作りはほぼ同じでだ。 ちなみに部活動は中等部と高等部で別れてはいない、運動部などの公式試合には当然別々だが練習は基本的に一緒に行う。

 そうでなくてはいくら姉さんでも中等部三年になった俺達に新しい部活を作れとはいわないだろう。

 俺達が部屋に入り、少し遅れて快斗達もやって来た。 そして、それから五分ほどで扉が開き姉さんがやって来た……「やっほ~晴夜兄ぃ~」と元気な声の黄色い髪の小学生と共に……。

 「……って千秋っ!?」

 俺が声を上げるのに続き春香と立夏も同じような反応をした。

 「千秋ちゃん……って、晴夜先輩達の幼なじみの?」

 「ああ、そうだけど……」

 快斗と瑞樹さんも大声こそ出さないが驚きを隠せない。

 「ふふふふ、驚いたようだな?」

 「そりゃ驚くって! どうして千秋が……?」

 「心配ない、学園側には許可はちゃんと取ってある。 だいたい、私達が一緒で千秋だけのけ者には出来ないだろう?」

 確かに俺も出来るなら千秋も仲間に入れてあげたいとは思っていたけど、いくら何でもそれは無理だと思っていた。

 「立場的に千秋は”体験入部”だな、こいつも来年にはこの学園の生徒になるのだからな?」

 流石に無理がないか?とも思うが、それを言ったら立夏の転校の件もそうだし、今更な気はしないでもない。

 「それにしたって……」

 「……もしかして千秋は邪魔……?」

 上目遣いで聞いてくる千秋の声は寂しげだった。 俺達の中で一番年下な彼女はどうしてもおいてきぼりになってしまう事もある。 学校もそうだし、俺の家に遊びに来ても、家の距離や年齢を考えれば立夏よりも早く自分の家に帰らねばならなかった。

 俺達で部活動を始めても結局千秋は一緒に入られない。 もちろん一年後には一緒に活動できるようになるのだが、その一年という時間は千秋にとっては長く、その間にまた俺達との溝が大きくなってしまうように感じているのかも知れない。

 「そんな事はないさ」

 俺は明るく笑うと千秋の頭を撫でてあげた。

 「ちょっと驚いただけだ、それに千秋を決してのけ者にはしないって約束もしてるだろ?」

 「うん!」

 それで千秋は笑顔を見せてくれた。

 「……まあ、人数は一人も多い方が楽しいしね?」

 「だよねぇ……快斗君達もいい?」

 春香に尋ねられた二人も、仕方ないという風に肩を竦めながらも……。

 「ま、いいんじゃないか?」

 「はい、いいと思います」

 ……と、賛同してくれたのだった。



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