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生活魔法

 ゼノは少女の肩を抱いたまま数秒、体を硬直させていた。

 おかしいと思い周囲を見回してみるが、アサシンゴブリンは疎か白以外何もない。


 ゆっくりと少女から離れ立ち上がり、何度も周囲を確認するが何もない。

 地面も夜空も。

 陣地も篝火も。

 そして、人間もゴブリンも。


 あるのは自分と仮面の少女だけ。

 呼吸が可能なので大気はあるのだろうが、そもそも大気がなくては死んでいるのでゼノはカウントしていない。


「なんだここは。何故俺は、ここが《《俺の生活魔法だ》》と理解しているんだ」

「あの、えっと。スーツの人、でいいですか?ここがどこだか、分かるんですか?」


 少女も状況が変化せずに、自分からゼノが離れた事を不審に思い周囲を確認していた。

 そして互いの名前すら知らない事に気が付いた。


「ああ、すまない。自己紹介すらしていなかったな。俺はゼノだ。傷付きやすい年頃なんでな、おっさん呼びだけは勘弁してくれ」

「あっ、はい。わかりました。私はミラです。それで黒いゴブリンに囲まれてから、どうなったんですか?ここはどこか、分かりますか?」


 仮面の少女…ミラからは焦りや混乱が声からは感じられない。

 ただ純粋に理解出来ない状況への疑問だけがある。

 アサシンゴブリンに囲まれた時はともかく、それ以前は感情の起伏が乏しくなっていたゼノ。

 そのゼノこそ混乱していた。

 《《自分の能力の名前とその効果の差》》に、理解が追いつかなくて。

 ゼノはスーツのポケットからギルドタグを取り出すと、ミラに差し出した。


「これを見てくれれば分かる。ここは《《生活魔法の中》》だ」

「どういう事でしょうか。ギルドに登録してから3日以内に新たな能力に目覚める確率と。元々覚えていた生活魔法の中に入るという不思議な現象。有り得るとするなら、どちらの確率が高いんでしょうか」


 ゼノにタグを返しながら、ミラは思案するが答えは出ない。

 対してゼノは、自身の能力を感覚として理解し始めており。何をどうすればどうなるかを、掴み始めている。


「何度も言うが、ここは生活魔法の中で間違いない。ただ一般的な代名詞の生活魔法ではなく。中で生活出来る魔法の様な空間の能力。その名前が生活魔法みたいだ」

「それって、どういう事ですか?教えて頂いてもよろしいです?」


「ああ。ここは成長する亜空間で、いくつかの要素が揃えば。この中だけで生活可能になる、俺の特殊能力だ。具体例を出すと、材料の木と生産人形っていうのを用意すると。木製のテーブルやイス等が作れる。俺自身、生産人形ってのがまだよく分かってないから、何とも言えないが。この中で生きていける様になるらしい」


「なんとも不思議な、聞いた事がない能力ですね………それより、元の場所には戻れるのですか?」


「ん?ああ。生活魔法に入った場所に戻れるらしい。それに外の状況も何故だか把握出来ているから、安全になってから戻ろう。今戻っても戦闘能力のない俺達じゃ、彼等の足を引っ張る事になりかねない」


「そう…ですね。わかりました。私はしっかり休んで魔力を回復させておきます。外に出たら負傷者の治療をしなくちゃいけませんし」

「ああ。状況判断は俺しか出来ないからな。陣地内のゴブリンが狩られた頃、君に知らせよう」

「お願いします」


 そう言うとミラは横になり、余程疲れていたのだろう。瞬く間に眠ってしまった。

 ゼノはスーツの上を脱いでミラの肩にかけると、生活魔法の外に意識を傾け。周囲が落ち着くまでは寝まいと、立ったままでいた。


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