審議の結果は…
結果?は勿論なにも出ませんでした。
外壁に併設されている詰所内で魔道具と呼ばれているらしい真っ黒な水晶に手を付けさせられ、何かを調べられたようであったが、結果、水晶は悪なる反応をするでもなく神々しく光輝くだけであった。
「…確かに嘘偽りは無いようだ。すまなかったな、疑った挙げ句時間をとらせてしまって…。」
「お話を聞いて、仕方のない事だと思ってますから。お気になさらないで下さい。」
「しかしだなぁ…」
「…では、教えて欲しいことがあるので、それらを教えてもらえたらチャラって事にしましょう!」
多少の押し問答の末、龍弥は落としどころの提案をした。
その事に、まだ引け目を感じている兵士は不承不承の形ではあるが頷いた。
「…はぁ、わかった。お前さんの言い分で納得するよ。…ありがとう。」
「いえいえ。…それでですね、自分あまり世間の事を知らないんですよ。これからの事を考えて、身分証や直ぐ出来る仕事なんかを教えてもらえたらと思いまして。」
「…そんな事で良いのか?」
「そんな事ではないんですよ!…自分が居たところと色々違うようなので、これからの事を考えたら最重要事項なんですよ!」
この世界の常識を新たにリスクを負わずに手に入れられること。これ即ち、少しでも安全にこの世界で生き抜く為に最も必要となる事柄である。
故に龍弥は詳しくを語らずとも、さも田舎者だと思わせるような言い方で自然な形で自身にとって最初にして最大の難題をクリアしようとしたのだった。
「本当にそんな事でいいのか?…答えとしては簡単だ。冒険者ギルドで登録をすればいい。そこで身分証も仕事も手に入る。」
「…どうして冒険者ギルドなんですか?」
「そんな事は決まっている。幼生体とはいえグリフォンが従魔としているんだ、魔物を倒すにしろ、護衛や採取なんかにしろ協力な戦力だからな。」
「成る程。仕事の幅が広いと言うことですね。」
「そうだ。」
教わったことを精査して考え、纏めつつも、その他の情報も不自然がないように引き出せた。
その事に満足した龍弥は、兵士に礼を言い、教わった冒険者ギルドへと向かうのだった。