だから秋には封筒に
次にヒューくんからの手紙がぼたんちゃんのもとへやってきたのは、緑色の葉っぱが赤や黄色になったころのことでした。今回の手紙は春の時と同じ、赤と青の縁どりが入った白い封筒です。しかし封筒はぺったんこではなく、何かが入っているのか少しふくらんでいます。一番ふくらんでいるところをさわると、かたいものが入っているようです。
「何がはいっているんだろう?」
ぼたんちゃんはこてんと首を傾げながら、封筒をお母さんに開けてもらいました。お母さんは封筒の中を見るとにっこりと笑って、ぼたんちゃんに渡しました。
「よかったわね、ぼたんちゃん。」
「え?……あっ!」
封筒の中から出てきたのは、透明なセロファンに包まれた赤、オレンジ、ピンクのガラス玉のような3粒のアメ玉。そして、ヒューくんからの手紙でした。
「お母さん! ヒューくんがアメくれた!」
「うん、よかったね。さ、ヒューくんの手紙も読んでみようか。」
小さな手に3粒のアメを、まるで宝物のようにもってお母さんに見せるぼたんちゃんに、お母さんは優しく笑いかけながら封筒の中にある手紙を指さしました。
ぼたんちゃんはアメと同じように、手紙を封筒から大切そうに出すと、2つに折りたたまれたそれをそっと開いて読みました。
『ぼたんちゃんへ
かいがらありがとう
とってもきれいだね
たいせつにします
HAPPY HALLOWEEN!
あめをどうぞ!
ヒューより』
手紙には、ぼたんちゃんの知らない文字が書かれていました。そこでお母さんにヒューくんの謎の文字を読んでもらいました。
「おかあさん、ここは何て読むの?」
「どれどれ? ああ、『ハッピーハロウィン』ね。」
お母さんはたどたどしい謎の文字の部分を読み、ぼたんちゃんに教えました。
ハロウィンとはいったいなんでしょう。ぼたんちゃんは更にお母さんにたずねました。
「どういうこと?」
「ハッピーは幸せとか、嬉しいとか、おめでとう、ってこと。ハロウィンはヒューくんの国のお祭りね。お菓子をあげたり、もらったりできるのよ。」
お母さんの話をきいて、ぼたんちゃんはヒューくんからのアメが『ハロウィン』のプレゼントなのだと分かり、嬉しくてアメを大事に大事に抱きしめました。
そしてヒューくんにハロウィンのおかえしをしようと、封筒の中にヒューくんが好きだったソーダ味の水色のアメと、メロン味の緑色のアメ、ブドウ味の紫色のアメをシールの手紙と一緒に入れました。
3粒のアメが入った封筒は、ヒューくんからの封筒と同じようにちょっぴりぷくっとふくらんでいました。
おなか一杯のように見える封筒をお母さんと一緒にポストに入れたあと、ぼたんちゃんはヒューくんからのおくりものを1粒ずつゆっくり食べました。