おかえしには夏の思い出を
ヒューくんからのお返事が届いたのは、桜がピンクの花からすっかり緑色の葉っぱに着替えたころのことでした。送られてきたのは、前のような赤と青の縁が付いた白い封筒ではなく、小さな小さな茶色の箱です。
「お母さん、これなにかな?」
「開けてみましょうか。」
お母さんはカッターナイフで箱の上に綺麗に切れ目を入れ、びっくり箱のように茶色の箱を開けました。その中には『ぼたんちやんへ』と書かれた白い封筒と、その下に白いプチプチにくるまれた何かが入っていました。
白いプチプチを取って出てきたのは、赤い花びらが入ったガラスの瓶です。とっても綺麗なおくりものに、ぼたんちゃんはすっかりはしゃいでしまいます。
「お母さん! とってもきれいだね! ねえ、おてがみは!?」
「ちょっとまってね、ぼたんちゃん。」
嬉しそうなぼたんちゃんににっこり笑いかけながら、お母さんは前と同じ白い封筒を丁寧にそっと開けて、ぼたんちゃんにわたしました。
『ぼたんちやんへ
きーほるだーありがとう
かばんにつけたよ
おれいにおかあさんとぽぷりをつくつたよ
よろこんでくれるとうれしいな
じゃあまたね
ひゅーより』
封筒の中にはヒューくんからの手紙、そして赤い花が咲いている庭に立ってかばんをもったヒューくんの写真が一枚入っていました。そのかばんにきらりと光っているのは、ぼたんちゃんが贈ったキーホルダーでしょうか。
ぼたんちゃんはヒューくんからの手紙と、ヒューくんが写った写真にすっかり嬉しくなりました。でも、手紙の中の『ぽぷり』とはなんでしょうか。
「おかあさん、ぽぷりってなあに?」
「ポプリはお花の匂いをいつでもかげるようにしたものよ。この花びらは、バラかな? ヒューくんががんばって作ってくれたのね。」
お母さんの言葉はぼたんちゃんにはちょっと難しかったのですが、ヒューくんがこの赤い花が入った入れ物を作ってくれたという事は分かりました。
「じゃあ、ぽぷり、おへやにかざる!」
ぼたんちゃんはお母さんに、ヒューくんからの贈り物がいつでも見えるようにリビングにある棚の上に置いてもらいました。
そして前と同じように、またその手紙と写真をお菓子の缶の中に入れました。
そして、今度はぼたんちゃんがヒューくんに手紙を送る番です。ぼたんちゃんはこの前行った潮干狩りで拾った貝がらをおくろうと思いました。
ぼたんちゃんはさっそく貝殻を入れていた箱をもってきて、じゅうたんの上でさかさまにしました。周りは色とりどりの貝がらでいっぱいです。ヒューくんにおくるための一番きれいな貝がらを、ぼたんちゃんは真剣に選びました。
そして選んだのは白に茶色のしましまの巻貝と、少し青色のような白色をした2枚の貝がらのうちの1枚、そして薄いピンク色の小さな小さな貝でした。その貝をお母さんが茶色の砂が入った瓶の中に入れて栓をし、ヒューくんからのおくりものと同じように白いプチプチにくるんで、箱の中に入れてくれました。最後にぼたんちゃんがシールで書いた手紙を入れて箱の封をし、お母さんと一緒に大きなポストが飾られた郵便局に出しました。
郵便局のおじさんに「おねがいします!」と大きな声で頼むと、おじさんは「しっかり届けるよ。」と優しく笑ってくれました。