春の手紙とおくりもの
手紙の部分の間違いはわざとです。
ご了承くださいますよう、お願いいたします。
ヒューくんがいなくなってからというもの、ぼたんちゃんはさびしくて仕方ありません。今までずっとヒューくんと遊んでいたのに……
雪が降っても、一緒に雪だるまを作ったり雪合戦をしてくれるヒューくんがいないから雪遊びがつまりません。
大好きな甘いおやつも、ヒューくんがいないだけで美味しくありません。
しょんぼりとしたぼたんちゃんを見て、ぼたんちゃんのお父さんもお母さんも心配しますが、こればかりはどうしようもありません。さびしそうなぼたんちゃんを元気づけようと、ふたりはそっとぼたんちゃんの頭をなでました。
そんな日々が続き、桜のつぼみが開き始めたころ、ぼたんちゃんのもとに一通の手紙が届きました。ヒューくんからの手紙です。
ぼたんちゃんは大喜びでお母さんに手紙を開けてもらい、ヒューくんからの手紙を読んでもらいました。
『ぼたんちやんへ
げんきですか?
ぼくはとつてもげんきです
でも、ぼたんちやんにはやくあいたいな
またてがみかくね
ひゅーより』
ぼたんちゃんはお母さんから綺麗なお菓子の箱をもらい、その中に手紙を大切にしまいました。
ぼたんちゃんはヒューくんにお返事を書きたいと思いましたが、ひとつ困ったことがありました。
ぼたんちゃんは、自分では字が書けなかったのです。
字が書けなければ、手紙を書くことはできません。お母さんに書いてもらうのも嫌です。ぼたんちゃんはすっかり困ってしまいました。
そしてヒューくんの手紙が届いてから数日後。夕方にいつも見ているテレビの中で歌が歌われました。
その歌は字が書けない男の子が、代わりにいろんなものを封筒に入れるのです。春には桜の花を、夏には貝を、秋には落ち葉を、冬には雪を。
ぼたんちゃんはこの歌を聞くと、そうだっ、と思いつきました。そしてお母さんがいる台所へ走り、その足に抱き着きました。
「お母さん! わたし、ヒューくんに手紙だしたい!」
お母さんはびっくりしながらも、笑って抱きついてきたぼたんちゃんの頭をなでました。しょんぼりしていたぼたんちゃんが、元気になって嬉しかったのです。
「いいわよ。でも、ぼたんは字が書けないわよね?」
そう笑いながらも不思議そうに聞くと、ぼたんちゃんは
「桜の花をおくるのっ!」
と言いました。
なるほど、確かにこの町の桜は咲き始めています。しかし、桜の花をそのまま送っても、ヒューくんのもとにつくころには桜の花は萎れてしまうでしょう。
お母さんはしゃがんでぼたんちゃんの目を見ると、一つの提案をしました。
「どうせなら、桜の花をキーホルダーにして、ヒューくんとおそろいにしましょうか。」
お母さんの言葉に、ぼたんちゃんはやるっ! と嬉しそうにはしゃぎました。
そこでぼたんちゃんとお母さんは、公園から咲いている桜の花を5つほどとってきました。そして花を押し花にしました。そしてできた押し花は、途中お母さんが「おまじないよ。」と言っていれた魔法のお薬のおかげか、きれいな薄いピンク色です。これをお母さんが透明な液の中に閉じ込めて、それを固めて一つはかわいい、もう一つはかっこいいキーホルダーを作ってくれました。
そして封筒の中にかっこいいキーホルダーと、ひらがなのシールを使ってかいた手紙をいれて、切手を貼ってポストの中に入れました。
手紙は届くかな、キーホルダー気に入ってくれるかな……
わくわくとほんの少しの不安を抱きながら、手紙をいれた赤いポストをじっと見つめました。
ぼたんちゃんはひらがながやっと読めるようになって、でもまだ書けないという設定。