表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

お別れと約束

いろいろと拙い部分はありますが、よろしくお願いいたします。

 

 今よりもちょっとだけ昔の、小さな恋のお話です。




 「ふえええっ……ひっく、ひっく……」


 小さな公園の中で、幼い女の子が泣いています。年の頃は4つ、5つほどでしょうか。黒い髪を高いところで2つにまとめてみつあみにし、可愛いりんごのゴムで飾っています。白くふっくらした頬を冬の寒さで真っ赤にしながら、大きな黒い瞳からはポロポロ涙が零れていきました。


 「な、泣かないで……」


 そして女の子の前には、女の子の涙を必死に止めようとする男の子がいます。5つ、6つほどの年頃でしょうか。女の子と同じ年か、それより少しお兄さんに見えます。わたがしの様にふわふわとした栗色の髪の、外国人のようにも見える男の子です。砂糖を火にかけて溶かしたような飴色の目は、どうすれば女の子の涙が止まるのかと困りきって、あわあわとしていました。


 女の子の名前はぼたんちゃん、男の子の名前はヒューくんといいます。


 ぼたんちゃんとヒューくんはご近所に住む仲良しさんです。ヒューくんはその見た目通り外国で生まれ、お母さんが生まれたこの町へやってきました。ぼたんちゃんのお母さんとヒューくんのお母さんも仲良しだったため、ぼたんちゃんとヒューくんもお互いの家に遊びにいくうちにいつも一緒に遊ぶようになりました。


 そんな、仲良しなふたりですが。

 ぼたんちゃんがなぜ泣いてるかといいますと……



 「ヒューくっ……がいこ、く、いっちゃやだあ!」

 「ぼくだって、いやだけど……」



 そう、ヒューくんがお母さんと一緒に生まれた国へ帰ることになったのです。

 いつも一緒にいたぼたんちゃんはこれを泣いて嫌がります。だってそうです、いつも一緒にいた大好きなヒューくんが、もう一緒にいられなくなってしまうのです。そう思うと寂しくて悲しくて、目から涙が勝手に溢れてきます。


 「ヒューくっ、が、いないの、さびしいようっ……」

 「ぼたんちゃん……」


 涙が止まらず、ウサギの目になるぼたんちゃんを、ヒューくんはぎゅっと抱きしめました。ヒューくんが泣くとき、ヒューくんのお母さんがいつもこうしてくれるからです。


 「また、会いに、くるから。」

ヒューくんはぼたんちゃんを抱きしめたまま、ゆっくりと、でもはっきりと言いました。ぼたんちゃんはひっくひっくと泣きながら、でもヒューくんの顔を見ました。

「ほっ、んとに?」

「ほんとだよ。おてがみ書くし、ぜったい会いにくるから。」


 だからもう泣かないで、とヒューくんはぼたんちゃんの涙を持っていたハンカチでふきました。

 ぼたんちゃんが泣き止むとふたりは約束ね、と指切りをしました。


 ぜったいね。

 ぜったいだよ。

 そう約束を交わしました。


 そしてヒューくんは家族と一緒に、生まれた国へと帰っていきました。

 




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ