お別れと約束
いろいろと拙い部分はありますが、よろしくお願いいたします。
今よりもちょっとだけ昔の、小さな恋のお話です。
「ふえええっ……ひっく、ひっく……」
小さな公園の中で、幼い女の子が泣いています。年の頃は4つ、5つほどでしょうか。黒い髪を高いところで2つにまとめてみつあみにし、可愛いりんごのゴムで飾っています。白くふっくらした頬を冬の寒さで真っ赤にしながら、大きな黒い瞳からはポロポロ涙が零れていきました。
「な、泣かないで……」
そして女の子の前には、女の子の涙を必死に止めようとする男の子がいます。5つ、6つほどの年頃でしょうか。女の子と同じ年か、それより少しお兄さんに見えます。わたがしの様にふわふわとした栗色の髪の、外国人のようにも見える男の子です。砂糖を火にかけて溶かしたような飴色の目は、どうすれば女の子の涙が止まるのかと困りきって、あわあわとしていました。
女の子の名前はぼたんちゃん、男の子の名前はヒューくんといいます。
ぼたんちゃんとヒューくんはご近所に住む仲良しさんです。ヒューくんはその見た目通り外国で生まれ、お母さんが生まれたこの町へやってきました。ぼたんちゃんのお母さんとヒューくんのお母さんも仲良しだったため、ぼたんちゃんとヒューくんもお互いの家に遊びにいくうちにいつも一緒に遊ぶようになりました。
そんな、仲良しなふたりですが。
ぼたんちゃんがなぜ泣いてるかといいますと……
「ヒューくっ……がいこ、く、いっちゃやだあ!」
「ぼくだって、いやだけど……」
そう、ヒューくんがお母さんと一緒に生まれた国へ帰ることになったのです。
いつも一緒にいたぼたんちゃんはこれを泣いて嫌がります。だってそうです、いつも一緒にいた大好きなヒューくんが、もう一緒にいられなくなってしまうのです。そう思うと寂しくて悲しくて、目から涙が勝手に溢れてきます。
「ヒューくっ、が、いないの、さびしいようっ……」
「ぼたんちゃん……」
涙が止まらず、ウサギの目になるぼたんちゃんを、ヒューくんはぎゅっと抱きしめました。ヒューくんが泣くとき、ヒューくんのお母さんがいつもこうしてくれるからです。
「また、会いに、くるから。」
ヒューくんはぼたんちゃんを抱きしめたまま、ゆっくりと、でもはっきりと言いました。ぼたんちゃんはひっくひっくと泣きながら、でもヒューくんの顔を見ました。
「ほっ、んとに?」
「ほんとだよ。おてがみ書くし、ぜったい会いにくるから。」
だからもう泣かないで、とヒューくんはぼたんちゃんの涙を持っていたハンカチでふきました。
ぼたんちゃんが泣き止むとふたりは約束ね、と指切りをしました。
ぜったいね。
ぜったいだよ。
そう約束を交わしました。
そしてヒューくんは家族と一緒に、生まれた国へと帰っていきました。