プロローグ
前略
異世界SOWの世界から無事に帰還した神夜を待っていたのは『和の国』で死んだはずの妹の氷空と幼馴染の咲妃との再会だった。
再会を果たした神夜はこれでようやく彼女たちと親友の俊とユキたちと平穏な日常を送れると心待ちにしていたが。
「あ―、朝のHRを始める前に転校生の紹介だ。おーい、入っていいぞー」
と担任が廊下に向かっていうと教室に一人の転校生がはいってきた途端、神夜が心待ちにしていた平穏な日常は再び非日常へと軌道を変えた。
「ハァ―……どうしてこうなった……」
口から重たいため息を漏らしいささか鬱真っ盛りの状態になる俺こと、十六夜神夜は頭を抱えながら悩んだ。
休み時間中はみなそれぞれ友人と話したり寝たりする人がよく見受けられるが、今日の休み時間だけはいつもと違って皆一か所に集まり輪の中心にいる人物と楽しく談笑しており一段とクラス内がにぎやかだ。それに廊下にもその人物を一目見ようと群がる他クラスの生徒が多い。
いくらなんでも噂が広まるの早すぎるだろ。
やっぱりこれは夢じゃないんだな。
それは今朝のHRのことだった。いつもなら、HR開始時刻と同時に入ってくる担任が今日に限って早いということから事の発端が始まった。そして、『あ―、朝のHRを始める前に転校生の紹介だ。おーい、入っていいぞー』の一言を合図にその転校生教室にはいってくるなり俺の顔は引きつった。
そんな反応を示したのはユキと俊、そして俺たちだけだろう。
だって俺らはその人物をあの次世代の超人気オンラインゲーム『SOW』の世界で会っているからな。その人物の名はアリス。日本人離れした顔立ちに艶のある金髪。背丈は白星(妹)とほぼ同じくらいのロリ体型で、あっちの世界では人形使いの女の子。
まさか、こんなに早く会えると思ってもいなかった……。
今になって考えるとあの日、聖王十字軍の団長がアリスにだけ話したことってこのことだったのかもしれんな。
一人頭を抱えながら苦笑いしていると
「十六夜くん、大丈夫?」とふわりとしたセミロングの銀髪がトレードのクラス委員、白星ミチルが心配そうに声をかけてくれた。
「あ―……大丈夫だけどちょっと鬱になりそう」
「そ、そーなんだ―……。そ、それより、アリスさんすごいよねー。一人で今日の話題独占だなんてー。それに廊下にいる男子率も高いし―」
まぁあれが転校生初日の特権ってやつだからなー。
「ねーほんとに十六夜君とアリスさんって、双子さんじゃないの? 実は『生き別れた妹さんでした―』なんてオチじゃないよね?」
「生き別れたも何も俺とあいつは兄妹じゃ―…」
いや、まて。ここで言い切ったらあとで面倒なことになるし……。一応、俺ハーフさんだから別に否定しなくても。あ――でも後のことを考えるとなると―……。
「い、十六夜くん? ホントに大丈夫っ!?」
「だ、大丈夫、大丈夫」
「ホントに? 具合悪くなったらすぐに言ってね」
一瞬だが、白星のバックに後光が差したかのように見えた。やばい……この子ピュアすぎるよ。
「そう言うのはミチルの仕事じゃなくて保健委員さんの仕事でしょ?」と白星(妹)の後ろから突っ込みを入れてきたのは白星の姉の白星とおりんさんだ。頭脳明晰、スポーツ万能で容姿も完璧。まさに欠点なしの我が校切っての完璧超人。それにロングヘアの黒髪に凛とした態度で下級生や同級生の女子からは『お姉様』なんて呼ばれるほどのカリスマ性を持っている。
「で、でも、お姉ちゃん。保健委員さんだってお仕事あるし……ここは少しでも仕事の少ないクラス委員が―……」
「いいの。保健委員には保健委員の。ミチルにはミチルの仕事があるんだからそっちに専念すればいいの。あ、でも、おねーちゃんが具合悪くなったときはミチルに連れて行ってもらいたいな―……」
「お、お姉ちゃん―……」
顔を紅めながら自分の世界に入っちゃうとおりんさんを見た白星がうつむいて紅くなっていた。ほんとに仲のいい姉妹だこと。
二人は知らないと思うが校内じゃ『白と黒の双子の百合』なんて呼ばれているほどだからな。
「あ、ねー十六夜くん。ちょっと耳貸してもらえるかな?」といって白星(妹)には聴こえないほどの小声で耳打ちしてきた。
「ねっ! どう思う? いいと思わない?」
「ん―……まぁいいんじゃないすか?」
「じゃあ決定ねー。アリスさーん、ちょっとこっち来てー」
と手を振りながら爽快感溢れる声でクラスのみんなに囲まれていたアリスが『はーいっ』と返事をし、みんなの輪を抜けてこっちにきた。
「ちょっとミチルの隣に立ってもらえるかしら?」と言われるがままにアリスは白 星の隣に立った途端、何かに胸を打たれたように感じた。
「どう、十六夜くん。この二人が並んで立ってみると髪色は違うけど身長も容姿もほぼそっくりねー。どっちもお人形さんみたいでかわいいよー」
ぎゅっと二人を両腕の中に入れ強く抱きしめるとおりんさんは一人自分だけの世界に行ってしまった。
「お、お姉ちゃんっ! 皆がみてるよー……」
「そんなの気にしなくていいんだよー。私達がラブラブなのはもう皆知っているんだから―」
「そーだけどー恥ずかしいよー!」
あわわ。と顔を真っ赤にしてとおりんさんの腕の中で白星(妹)はばたばたしてアリスはアリスで下を向いたまま口をつむって下を向いていた。




